第37話 がんばれマキナ
★★★★エルフの里 稲作農場★★★★
農場管理人ファブ視点
これはこれは、お話はこのマキナから聞いていますよ。と俺は
取りあえず平静を装う。
てめえ、ユンカーめ、涼しい顔しやがって。
「俺達は米を買いたくてこの里に来たんです。」
なんだこの弱そうな冒険者は。あぁこいつかリャンシー様の
奴隷になる奴って。
「私は急用がありまして、これで失礼します。後はマキナとファブが
対応すると思いますので」
あ、ユンカーの野郎、逃げやがった!
ん?はう!リャナンシー様の影が浮いてる!足元から離れている!
リャナンシー様は宙に浮いてらっしゃるからな、バレる!
俺はとりあえず、あちらで座って話でもと誘導した。
・・・・。なんか喋れや!そこの冒険者!
「えっと、長が言うのは直接買い付けていいとの事だったんですが。」
俺は因みにどれくらいの量をお求めなのか聞いてみたら。
毎月100キロほどと言いやがった!そんなにできるかよ!
人手が足らねえんだよ!ここには3人ほどしか米作ってないんだよ!
まぁ田んぼはあるので人手さえあればなんとかできると言ってみた。
「人手かぁ、どこの世界の農業従事者は減ってるんだな」
何言ってるんだこのガキは。
「そういえば、キョーク、米を貰って炊こうぜ?」
俺は少し強そうな冒険者の言われる通りの量の米、そして
鍋と丸太を輪切りにしたものを準備した。
「え!?お前、米を炊けるの!?」
弱そうな方の冒険者がいっているが、こいつらは強さでの上下関係はないのか?
弱そうなのが一番偉そうなんだが。
そもそも炊くとはなんなんだ。魔法で竈の様なモノを作り
鍋に米と水を入れて丸太の輪切りで蓋をした。
ほうほう、この強そうな冒険者は手際がいいな。うちに欲しいくらいだ。
微妙に火加減を調整している。途中混ぜないでいいのか?
・・・。無言で進んでいく。緊張で胃が痛くなりそうだ。
そうこうしているうちに調理が終わったようだ。
ほう、これは旨そうだな。汁っぽくはないな。いつもの調理なら
少し水分が残っているんだが。
俺は炊いた米を食ってみる。・・・なんだこのうまさは!
いつもの調理方法で作ったものとは別物だ!うまい!とにかくうまい!
俺は調理方法を、このミツルと言う男に聞きメモを取る。
鍋はもっと厚い方がいいとの事。なるほど、圧力を掛けながら
調理するんだな。だから丸太を太めに輪切りにしたのか。
リャナンシー様もおいしいと言って食されている。いいぞ、いいぞ。
俺はとりあえず20キロの袋を5つほど渡した。
そしたら、銀貨3枚渡された。・・・まじか!
★★★★エルフの里 稲作農場★★★★
キョーク視点
俺はありがたく頂戴して代金を払う。10キロで3千円として
100キロで3万円って所か。俺は銀貨3枚を渡した。
それだけの価値があると思ったからだ。
しかし、人手不足は心配だ。何か協力が出来ることがあればと
聞いてみると
「とりあえず、人を増やす方向を模索します。今の調理方法が
知れ渡ったら多分、生産が追い付かないでしょうし。今の若いモノは
こういった仕事を嫌っていまして」
ファブさんは少し寂しそうに言った。すると突然リャナさんが
言い考えがあるといいだす。開いている田んぼを私達が借りて
作るのはどうかと。なるほどその手もあるが、管理がとても大変だ。
冒険をしながらでは無理かもしれない。でも少し高い賃金で
雇うって手もあるな。
田んぼは貸してくれるそうだ。余ってるからと。
それも無償で!それでは駄目だと俺が言い、獲れた2割を渡すと言ったら
驚きながらも喜んでくれた。
因みに俺達は2か月で800キロ獲れる田んぼを5つほど借りた。
人材の事なら長に聞けばいいと言われたので俺達は
タンポポ商会へと戻った。
「ふむ、人材ですか。因みにお幾らくらいの賃金をお考えでしょうか」
そう聞かれたので平均賃金を聞いてみた。月に銀貨4枚程度と言われた。
安すぎる!俺は月に銀貨7枚で募集すると伝えたら凄く驚いていた。
農業は重労働だ。それくらい貰っても問題ないだろう。本当は金貨1枚と
思ったが平均がそれくらいならば妥当だ。
細かい計算はしていないがどうにかなるだろう。
俺は5人ほど雇いたい旨を伝えた。
すると隣の部屋から「何これ旨い!これお米よね!」と大きい声がした。
マキナの声だった。
いきなりドアが開きマキナが
「私これ作る仕事をする!決めた!」
そこの言葉に長は勿論反対したがマキナの決意は揺るがない。
だったらと準備資金で俺は金貨5枚を手渡した。
勿論、リャナさんに借りた・・・。というか出してくれた。
マキナはその金額の多さに驚いていた。そして
リャナさんから受け取る時に手が震えていた。
そうだろう、こんな大金を手にするのは初めてなのかもしれない。
とりあえずファブさんの所で少し研修を行い始めていくとなった。
その準備資金で人を集めてもいいし、そして色々な道具もいるだろう。
「困ったことがあったら何でも言ってね?期待しているわ。
本当に言うのよ?絶対に力になるからね。これからあなたは
私達の仲間なんですから。貴方に危害を加える者たちは
絶対に許さないから安心して働きなさい。」
リャナさんは微笑みながら言う。すこし怖かった。
しかし、俺達が付いているんだ。絶対に何かあっても守ってやる。
取りあえず俺達は100キロの米を持って一度リホさんの所へ
帰ろうとしたら
「俺が持ってってやるよ。その店の料理食いたいしな。
心配すんなって。持ち逃げなんてしねえよ。お前はここの国で
レベル上げでもしておけ。」
ミツルがそう言ってくれた。その代わり・・・。と付け加え
「秘剣 オロチを取りに行くときに手伝ってほしい」
と言われた。そりゃあ勿論だと俺達は握手をする。
ジヴァニアの効果を考えて、あの洞窟に挑戦するには・・・。
確かレベル175以上の数人パーティで挑むんだったっけ。
ならば・・・。やはりレベル100は欲しいな。
米農場のこともあるしな、俺達は3か月後か俺のレベルが
100になった時に挑戦すると決まった。
ミツルは少し皇国に滞在すると言って1っか月後にここに戻って
くるといい、パーティはそのままにしていてくれれば
場所もわかるしな。とも提案してくれた。
ありがたい!リホさんとミツルのおかげで経験値も爆上がりだ!
俺達はここ、エルフの里に滞在することを決め長に言って
空き家を借りることにした。
「え?滞在・・・するんですか?」と言われたが。
まぁ人間が滞在と言うのは少しあれなんだろう。しかし、
ここからならばおいしい狩場も近い。
里では色目で見られるかもしれんが問題ない。
そして俺はミツルと別れ、紹介された空き家へと向かった。
とても手入れされている。コレで月銀貨1枚は安い。安すぎる。
「ふ、二人で暮らすんですね」
いきなりリャナさんがそう言ってきた。
あああ、そうか。男女が一つ屋根の下で暮らすのは・・・。
大丈夫!俺はこう見えても案全牌だ!
部屋が多いのでマキナとか一緒に住むか誘ってみる?と
提案したら少し「え?」と言う顔をされた。
マキナは今から俺達の仲間だし、米の方も気になるので
一緒に住んだ方がいいのでは?とも言った。
「そそそ、そうですね。それのほうがいいかもしれませんね」
うん!リャナさんも賛成してくれたので俺は長にその旨を
伝えに戻った。
「長はマキナに絶対に粗相のないようにな!」と強く言っていた。
いやいや、俺は従業員だからといって野暮な扱いはしませんよ?
安心してくださいませ。
マキナを見ると緊張していた。
これから始まる自分との戦いに武者震いさえ覚えているのだろう。
がんばれ!マキナ!