第35話 エルフの里
長の話では、あろうことかこの里の女子のしっぽをモフモフして
回ってたらしい。中には耳をいじられた者も居たそうだ。
その数16人!・・・痴漢じゃねえか!
「やっぱしちゃうよな?異世界だもん。しちゃうって。うん。」
ミツルは腕を組みながら自分でウンウンと頷いている。
わからなくはないが・・・。別な意味で異世界無双をしているんだな、コイツ。
長が言うには酒場で酔っぱらって、さらに手あたり次第モフモフしていたら
寝てしまったので、牢屋に入れたとの事。
リャナさんは人族の扱いに慣れていそうなのでこいつを引き取って欲しい。
と長は言った。どうやら立場的にはやはり俺は使用人らしい・・・。
リャナさんが俺をチラ見したので頷いた。
引き取る旨をリャナさんが長に言う。
「是非とも!教育をお願いします!」と深々と頭を下げていた。
これはあれだ。リャナさんの強さ、レベルは神がかってると思われて
いるのだろうな。
「お?キョークたちと同行か?俺も暇してたんでいくいく。」
頼むから自重してくれよ?俺も変な目で見られちまう。
ミツルはそう言うと背中にしょっている両手剣を抜き。構える。
ただの横なぎで鉄格子がばらばらとなった。
「よし、じゃあ行こうか。」
おい。
俺達は宿屋へと帰り食事をする。
ミツルに、これからエルフの里に行き、米を買うと言うと。
「まじか!コメあるのか!食いてえ!」とめっちゃ興奮していた。
因みにリホさんは料理が上手く、お店を皇国で開く話もして。
・・・言わなければよかったと思うほどにミツルは興奮していた。
目の前の家を買って住むとまで言い出した。
「お?装備変わった?武士とか装備してるし」
ミツルは俺の装備を見て言った。これからヨシツネの籠手と
ヨシツネの袴を取りに行くと話すと。
「もってるぞ?やろうか?使わないし。」
ミツル様!あんたは神だよ!俺はありがたく貰った!
リホさんに言っときます!ミツル様にもタダで飯を食わすようにと!
「お前、乞食人生まっしぐらだな。」
・・・確かに。
いや!いいのだ!どんな手を使ってでも!少しでも強くならなければ!
あれ?ミツルって俺のメインのこと知ってるんだっけ。
俺はミツルに話した。俺の現状を。すると驚くと共に急に真面目な顔になり
思案していた。
「それならば、俺のサブキャラもどこか営るって事だよな?
まぁサブで落ちた所は知っているので行こうと思えばすぐに行けるが。」
あぁ、そうだよな。その言い分は正しいと思った。
「しかしだぞ?ミツル、お前のIDでのキャラは俺はお前しか
検索できないぞ?」
ミツルの妖精はそういうと、やはり試案をしている。
ふと思った事を聞いてみた。ミツルの妖精の加護って何?と。
「あぁ、コイツの加護は『不死』だ。」
ミツルは食事をバクバクと食いながらサラッと言った。
マジか!なんだよ!そのチート能力は!俺よりすごいじゃねえか!
もしかしたらユキさんよりもすげえぞ!
・・・まぁユキさんの妖精の加護は知らないけども。
俺達はゲームでの事を色々と語り合った。
多分ミツルは包み隠さずにしゃべっている。だから俺も
包み隠さずにしゃべった。俺のメインはレベル193という事も
話した。そしたら装備を何かくれと言ってきた。笑いながら。
俺は勿論渡すと言った。だって今俺はミツルに恩を受けているからだ。
ならば恩で返すのが普通だろう。
ミツルも俺達の隣の部屋を借りてこの宿で一泊した。
そして翌朝、俺達はエルフの里へ向かう。
リャナさんと里の長が何やら話していたが、他愛のない話であろう。
長はぺこぺこして、そして何度も頷いていた。
何かの依頼をしたのかもしれない。記憶をなくした事を話しているのか。
もしかしたらリャナさんはこの里の英雄っぽいナニカだったのかもしれない。
記憶がもどるといいな・・・と思う。
ミツルはスモールワイバーンを眷属としていた。
うーん、リャナさんはヤミガラス。どちらとも飛行系だ。
いや!いい!俺には雪丸が居る!なあ!雪丸!そう言いながら
俺はワシャワシャしてやると、俺を見て目を輝かしていた!
その目には「俺の方が速いぜ!」と言う想いが伝わってきた!
一時間後、大きく俺は置いて行かれている、雪丸は少し息が荒い。
お前は頑張っている!そう!頑張っているぞ!俺は知っているぞ!
・・・雪丸が少しへばってしまった。
俺達は小休憩をする事にして軽く食事をする。
「リャナさんって料理上手なんだな。すげえよ。いい奥さんになるぜ」
ミツルはそう言うと、料理をがつがつと食べている。
リャナさんは少し赤くなっていた。ミツルめ、こいつ女子の扱いに慣れている。
道中魔獣を討伐しつつ進んでいく。
「そういえば、俺をパーティに入れろ。経験値が増えるぞ?」
俺は喜んでパーティに誘った。ミツルのレベルを確認すると
レベル178だった。俺は体上の装備の理由を聞いた。
ミツルの装備は『ムカデのローブ』だからだ。
「どうしても欲しい装備があってな。知ってるだろ?お前なら。
魔王領にある最初の洞窟のボスが持っている装備だ。
そのボス戦用だよ。結局、行かずじまいでこの世界に来ちまったがな」
そう言うと何か懐かしそうに笑った。
あぁ、多分ボスの名前は「ヤマタノオロチ」。そしてドロップアイテムは
秘剣 オロチ 一度の攻撃が連撃となる効果がある。連撃の数は
ブレイヤーの素早さと攻撃力に依存する。最大で8回。
レベル180から装備できる両手剣だ。なるほど、レベルを180にした時に
すぐに使いたいんだろう。わかる、その気持ち。
あれ?俺のメイン、それ持ってた気がする。そうだ、俺がメインに戻ったら
ミツルにその両手剣を渡そう。サプライズプレゼントだ。
あぁ、でもミツルみたいなプレイヤーは自分で手に入れたいのかな。
まぁどういった形でもお礼がしたい。
そして俺達はエルフの里までもう少しの所まで来た。
そういえば俺はミツルに聞きたいごとがあった。
この世界に来て目的や目標があるのか?と。出来たのか?と。
「ねえよ、そんなもん。お?なんか杉林?田舎の婆ちゃん家を
思い出すぜ!まぁしいて言うなら折角の異世界転生なんだ。この世界を
楽しむって事かな?」
自由!まさに自由!ミツルは向うの、束縛された環境から解放され
楽しんでいる。あぁ、そうか俺もゲームをする時はそう言った気持ちが
会ったのは間違いない。
「おいおい見つければいいんじゃないか?そんなもの」
そうだ。ミツルの言う通りだ。メインの体を手に入れたから考えても
問題ないのか。順を追って目標、目的を見つけてもいいんだ。
突然雪丸が喉を鳴らす。目の前で魔獣が何かを襲っていた。
よく見ると人間?いやエルフかも?が、弓を放ちながら戦っていた。
しかし、魔獣には効かない。矢が弾かれている。
ミツルが加勢するぜ!と言い突っ込んでいった。
魔獣の名はキラー・ヌリカベ
防御力が高く、特に弓では相性が悪い。一番いいのは魔法で対抗する事だ。
やはり炎系魔法で攻撃してからとどめを・・・と思っていたら。
ミツルが一刀両断して回っている。
行けるのか!?斬撃系で!ならばと俺も突っ込んでいく。
両手剣では攻撃が軽いのか連撃ではとどめを刺すまでにはいかなかった。
それでも二刀流のメリットである手数の多さで倒していく。
・・・まぁ単純にレベルが低いからかもしれないなっ!
「あ、あの。助けていただいてありがとうございました。
私はマキナといいます。・・・あ、人族!ごめんなさい。私、
何も持ってないです。お礼が出来ません!申し訳ございません!」
いやいや、お礼なんていいよ。と言うと驚いていた。
何度も頭を下げて、そして走って・・・まるで逃げる様に行ってしまった。
俺達は苦笑いながら移動をする。そしてエルフの里に到着した。