第32話 リホの考え
俺達は村へと向かっている。王都に寄ろうと思ったが
どうだっていい。願わくばいい国になって欲しいとは思った。
俺達は一旦村へ帰ろうという事になった。
道中、様々な植物などをミネルヴァに鑑定させている。
料理に使えそうな香辛料になるモノがあったらめっけもんだ。
野営中にリホさんが錬金をしている。どうやら草や種の様なモノを
錬金していた。
「今日の料理は凄いわよ!」
おお!これは期待できる!その間に俺とリャナさんは
辺りの警戒と野獣を狩りに出かけた。俺達がとってきた
ニワトリっぽい鶏をリホさんに渡した。リホさんはニヤニヤしながら
ぶつ切りにして鍋へと投入した。・・・一時して出来上がった料理は。
スープカレーだった!
辛さもほどよく食がすすむ。ああああ!コメが欲しい!
俺は声にしていってしまう。目を輝かせて俺の手を握るリホさん。
わかりました!探します!ええ!探しますとも!
今日はとりあえずパンだが、これはこれでうまい!
そして俺達は村へと到着。
女将に依頼は達成したと報告する。ついでに国王とその妃、
子供が死んだとも伝えた。勿論、それは俺ではないとも付け加え。
「この国はどうなるんだろうねぇ・・・」
女将はポツリと言う。確かに、俺の様なモノたちはどうでもいいが、
この国に住まう人たちは心配なんだろう。
「お?キョークじゃないか。帰ってきてたのか。じゃあ今日は
宴会だな!この間の肉も残ってるし。」
解体屋はそう言うと右手の親指を突き立てる。俺もそうする。
女将を中心にリホさん、リャナさんも宴会の為の準備をする。
リホさんはどうやらスープカレーを作るらしい。
女将も負けじと得意料理を作るようだ。いいじゃないか!
「なぁ、キョーク。この村にずっといる事は出来ないのか?」
解体屋は肉をぶつ切りにしながらそう言った。
俺は答えを出さなかった。俺にはどうしてもやりたいことがあった。
それは勿論、メインの体を手に入れる事だ。
ん?もし俺がメインの体を手に入れたら、この体はどうなるんだ?
抜け殻になるのか?それとも他の誰かの魂が・・・。いや、
それはないだろう。この体もメインも俺の魂の体だ。
・・・無いと思いたい。
料理も出来上がり、全員で乾杯をして盛り上がる。
「しかし、あの糞の様な王が死んでせいせいしたぜ」
誰かがそう言った。村の人達は大笑いしながら、そうだそうだと言っている。
いいのかよ!そんなこと言って!
今からこの村は大変だろう。今からでなく既にだが。それでも皆が
明るく飲み食いしている。本当にいい村だ。
「よし!いつでも帰ってこれるように家を建ててやる!」
そう言ったのは日用雑貨屋だった。それに他の人も賛同していた。
俺は恥ずかしいからやめてくれと言ったら、この村が嫌なのか?と
女将が絡んできた。既に酒に酔ってらっしゃった・・・。
大盛り上がりの後にお開きになり、俺達は仮設の小屋に入った。
「ここって本当にいい村ね。ねえ、キョーク。別荘として
ここに家を建てたら?皇国の方の家と行き来してさ。
私はあまり危険なことはしたくないな。今日みたいに料理作ったり、
そんなのがいいな」
リホさんのその言葉に、うん。そうだな。・・・としか言えなかった。
翌朝、俺達は「また来るよ」といい、朝早くに皇国へと帰る。
3日かけて寄り道などをする。ミネルヴァに植物なの度鑑定をさせる為だ。
依頼にありがちな花なども採取を行う。
そしてやっと皇国のリホハウスへと到着。
俺のレベルも2上がった。
レベル54 HP545 SP140 MP124
攻撃力75
防御33
素早さ50
賢さ40
耐性21
運35
これにジヴァニアの加護ステータス2倍がある。十分だ。
武器の効果でも攻撃力2倍。いいじゃないか!
「やっぱり我が家はいいわね。」
リホさんはそう言うと、この台詞を言いたくてしょうがなかったみたいだ。
そして夕食。リホさんの手料理に舌鼓を打ちながら食べていると。
リホさんから話があるとの事。少し暗い。内容は・・・。
スローライフではないがこの街で食堂を開きながら暮らしたいとの事。
勿論、戦闘とか自分がここまで強いとは思っていなかったらしく
ワクワクドキドキしながら依頼などをしていたが、やはり抵抗があるらしい。
ここなら私があの世界で出来なかったことが出来るんじゃないかと。
俺はとってもいい事だと思う!と返事をした。
やる事を見つけたのだ。この世界で。本当の意味で第二の人生だ。
リャナさんが「お店を開くの?」と聞いたらリホさんは頷いた。
「じゃあこれ使って」と机の上に金貨10枚を置いた。百万円!
勿論、リホさんは受け取れないと言ったが
「私とキョークさんが食べに来たらタダね」と笑いながら言ったので
リホさんもそれならばと受け取った。
すでにこの家を借りる時に隣の隣の家を食事処で借りれないかも
相談していたらしい。改装費用さえ出してくれれば自由にしていいとの
許可持ってったたらしい。それじゃあ足らないと俺も金貨を5枚出した。
すまぬ!これだけしか持っていない!
大丈夫。お金の使い道は今のところないし!と強がった・・・。
俺達は今後の事を話し合った。
俺はジヴァニアの加護でステータスが2倍となっている。ならば、もう
亜人の国へ行けるのではと思っている事を話した。
リャナさんも問題ないと言ってくれた。
リホさんからはパーティを組んだままで行けるのかな?と言われたので
大丈夫と言ったら「経験値2倍があるのでパーティ組んだままで」と
ありがたい申し出だった。感謝!
取りあえず俺達はリホさんのお店の準備、というか、内装工事を手伝い、
備品などの購入を手伝い、ある程度開店に向けた準備をやってから
亜人の国へと向かう事にした。
「人を雇った方がやっぱりいいのかな」
その提案に、なんとリャナさんが賛成した。
問題は何処で見つけるかだ。知り合いで探すと話が出たが、そもそも
知り合いなんてこの世界にはいない!と皆で笑い合った。
俺達は街で買い物とかした時に「この子いい子だ」と思ったら
声をかける様にしようと話し合った。
因みにどんな店にするか聞いたら
「やっぱ、向こうの世界の食事でしょう!かつ丼やカレー!ラーメン!
大衆食堂みたいな感じにしたいと言ってきた」
わかりましたとも!コメですね!コメを探せばいいんですね!
・・・どこを探すのか。そう言えばギルマスに依頼の報告を
していない事に気づき、ついでに聞いてくると答えた。
そして俺は翌朝、冒険者ギルドへ向かう。リャナさんは
街をふらついていい子がいないか探してくると言った。
「コメ?コメって、穀物の米だよな?凄く珍しいモノを探すんだな。
俺が亜人の国へ行った時に食べたことあるぜ?確かエルフの里だ。
白い粒粒だろ?」
おおお!流石冒険者ギルドのギルドマスター。だてに冒険はしていなかった!
俺はリホさんにその事を言うと「とってきて!買ってきて!」と言われた。うん。
その後1週間かけて皿とか、調理道具などを揃えた。
日用雑貨屋の店主も協力的だった。なぜならば!リホさんがカレースープの
差し入れをしたからだ。店主は俺達よりも手伝ってくれた・・・。
「ア、アルラ・・・です。カフェで働いていたのですが、ちょうど契約が切れる
時で仕事を探していて。その時にリャナさ・・・んに声を掛けていただいて。
頑張って働きますので雇ってください」
リャナさんが、これは!と思い声を掛けた少女は俺から見ても
いい子とわかるほどの逸材だった。カフェで働いていたという事は
経験者でもある。とりあえず、やってみようとなる。
「がんばらなくてもいいのよ?普通でいいの」
リホさんは優しくその子に言った。アルラもすごい笑顔で頷いた。
リホさんはアウラは素直そうでいい子だと思うと言ってくれた。
しかし、リャナさんはよくぞこういう子を見つけたもんだ。
向うの世界で人材募集の仕事でもしていたのか?・・・なんちゃって。