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サブキャラでReスタートの俺  作者: 加納 美香
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第22話 取引

「さぁ、やろうか」


落ち着いた声で、そして笑みを浮かべて俺に言う。

PvPは不得意ではない。しかし、好きというわけでもない。

ゲームではPvPイベントに出るくらいだった。

まぁ、毎回3回戦とか準々決勝で負けているが。ん?出る理由?

そりゃあ、優勝者に与えられる激レアレジェンダリー武器目当てに

決まってるでしょうに。言い訳をすると、俺は毎回同じ人に負けていた。

その人は俺がイベントに出だして、毎回優勝している人だ。

前回戦った時は、その人のレベルは195。俺より高い。

レベル190を超えたあたりからはレベル差なんて誤差だ。

しかし、その誤差が勝敗を分ける時もある。

そいつが持っている武器、あれ欲しいなぁ、と今でも思う。

あ、・・・話がそれた。


ミツル渾身の上段からの打ち降ろしが俺を襲う。

俺は危なく剣で受ける所だった。俺は受けずに右に転がるように避けた。

あっぶねえ!受けたらやられるところだった!

昔の事を考えていたら、メインで戦っている気になっていた。


「おいおい、カッコもへったくれもない避け方だな」


ミツルはそう言うと笑いやがった。そりゃそうだろうに!

今の俺は雑魚なんだよ!・・・さてどうしたものか。

と、考えているとリホさんが割り込んでくる。


「あのさぁ、PvPじゃないんだから何二人で戦ってるのよ」


その一言で俺は少し冷静になった。そうだ、これは1体1の

戦いではなかった。俺達は追われている立場で

どんなことをしても、逃げなければならなかった。PvPなんて

関係なかった。


俺とリホさんの体が一瞬緑色に包まれる。

リャナさんのリジュネ、断続的にヒールが発動する魔法だ。


リホさんはミツルの攻撃を上手く短剣で流すように捌いている。

速さと防御があってこその戦い方だ。しかし、じりじりと押されている。

でも、ミネルヴァの防御力3倍のおかげでほぼ無傷なのもすごい。


その時、空から何かが凄い勢いで落ちてきた。


「おやおや、偵察の為に西の皇国に行った帰りに空を飛んでいると、

 なにやら楽しそうな気配。それを感じで降りてきてみれば・・・」


魔族!


見覚えがある。魔王イベントで出てきた・・・グルルだ。

レベルは確か180。

マカーブルといい、このグルルといい、そしてバルバトス。

大丈夫か?人間達は。


「うーん。力量的に見るとあなたが一番強いのでしょうか?」


そういうとグルルはミツルを見る。うーん。やはり俺の勘違いなのだろうか。

魔族が力量を見間違うはずもないだろう。リャナさんの方が強いのでは?

と言う俺の見当ははずれた・・・のか。


「私達魔族はね、正義感旺盛でね。人族のように弱い者いじめとか

 そういったのは大嫌いなんですよ」そう言うと俺をチラチラと見ている。


どうせ俺は弱いさっ!今に見ていろ!魔族め!メインの体を手に入れた曙には

てめえらをぶった切ってやる!しかし、今は助かったのか?この状況。

グルルと俺達と、ミツルはちょうど三角形の様な位置で見合っている。


「おいおい、魔族かよ。魔族にいい思いではないんだがな。どうみても

 今の俺には勝てないな」

ミツルはそう言うと少しずつ距離を取る。


確定だ。ミツルは魔王イベントをクリアしていない。


この状況はどうすればいいんだ・・・。ん?って事はグルルは俺達を助けるのか?

なぜに?正義感で?いやいやいやいや。目的はなんだ?

まさか、リャナさんが絡んでいるのか?リャナさんの妖精が捕まっていると

仮定して、その解析の為にリャナさんを狙っている?・・・うーん。


「ところであなたは何故、この人達を襲っているんですか?」

グルルは顎に手をやり、何かを思案するような感じでミツルに聞いた。


ミツルは依頼主から俺の妖精を捕まえる様に依頼受けていると話す。

「ほーう。」グルルは意味深に返事をする。

そして俺をチラチラと見る。いや、そこは普通ジヴァニアを見る所だろうに。

少し、間を開けグルルは


「お金の為にしているのですか?」とミツルに聞くと

「いや?暇なんだよ。」とミツルは返す。


「なるほど。じゃあここから東に行くと亜人の国がありますが、

 そこに行かれては?暇なんてしませんよ?あれだ、人族が大好きな

 猫人族とか鬼人とかいますしね」


「いく!そこいく!」興奮気味に言ったのはリホさんだった・・・。


「どうせ、この国のバカな王のセンティア何某という肉団子に

 雇われているんでしょ?

 やめた方がいいですよ?もうすぐこの国は崩壊に見舞われますから。

 西の皇国にいる化け物がこの国に向かっているとの情報があります」


西の皇国。

ゲームの中に出てくる伝承では確か勇者が旅立ちをした国だ。

道中、この国を魔族から助け、そして魔王領へと単身で攻め込む。

その圧倒的な力で魔王を倒し、人族を平和な世の中に導いた・・・はず。


魔族が言う「化け物」とは勇者で間違いないだろう。


「あらま、やっぱり俺は勇者じゃなかったのか、残念」

なるほど、ミツルも「化け物」が勇者と思ったのだろう。

ミツルは笑いながら両手剣を仕舞った。

「なぁ、そこの魔族。俺がこいつらを見逃したら、俺も見逃されるのか?

 どう見てもお前には勝てないしな。」とも。


そうですねぇ。私も暇ではないし。急いで魔王様の元に帰らないと

イケませんしね。そう言うと俺をチラチラと見る。

気色わるい目だ。俺を餌とか、ゴミとか、そんな感じで見ているのか?

くそがっ!どうせ俺は弱いさっ!


「アナタにはコレを差し上げましょう。気にしないでください。

 道中で手に入れたお金が入っている袋です。それを持って亜人の国へ

 行ったらどうですか?」

グルルはそう言うとミツルに袋を投げる。


「おお、なんか冒険っぽくなってきたな。まぁこの国の王には

 恩義も何もないしな。それに今、俺の心の中は亜人の国という

 心地よい響きで充満しているからな。・・・よし。手を打った!」


ミツルはそう言うと袋を開けてニヤニヤしている。

おい!いいのかそれで。


「あぁ、そうだ。そこのお前。俺のお古でいいならこれをやる」


ミツルはそう言うと、体上の装備を俺に渡した。

『ヨシツネの衣』だった。レベル制限なしのエピック装備だ。

レベル80前後のプレイヤーがとってもお世話になる防具だ。

素早さと賢さ、防御力が1,1倍。そして炎耐性がある防具だ。

斬撃を一定確率無効にできる代物だ。

まぁ無効と言っても10%くらいの確率だが。


俺はありがたく頂戴して、袖を通す。

ミツルは「じゃあな!また会おうぜ!」と言いながら亜人の国へ向かった。

・・・多分、猫人族目当てだろう。


「さて、あなた。タダで助けたとは思わないでくださいね」

グルルはそう言うと俺を見る。

そりゃそうだ。俺も何かしらの要求はしてくるとは思っていた。


「ここから少し行った所に滝があります。そこに傷ついた

 九尾の狐の子供が居るのですよ。私が助けてあげたいのですが

 どうやら私の事を嫌っているようで。近づこうとしたら

 威嚇するのですよ。困ったもんだ。あなたにその九尾の狐を

 助けてほしいのですよ。そこの女性は回復系ですよね?

 問題ないと思いますが」



何コイツ。マジでいい奴なの?

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