第19話 王センティア4世
★★★★魔王領 リリスの塔★★★★
~マカーブル視点~
通路を歩いているとリリスが食事を持ってこちらに来る。
朝昼晩、毎回食事を持って魔王様の寝室へと運んでいる。
我は、目覚めてからでいいのでは?と毎回言っているが、
リリスは首を横に振る。
「お目覚めになられた時に、すぐに召し上がっていただきたい。
もしも、一時的にでも目覚められて食事が食べられていたらと
思うのですよ?」
献身的なものだ。そうこうしていると、バルバトスが歩いてくる。
なにか・・・凄くウキウキでスキップすらしている。
強面でスキップは凄く不気味だ。何かのスキルを発動するのじゃないか
と言うほどに!
「聞いてくれ!マカーブル!うまく行ったぞ!迫真の演技だった!」
リャナンシーも褒章が貰えるほどの演技だったらしい。話を聞くと
うまく、キョーク様のパーティと同行することになったようだ。一安心。
武器は何を置いてきたのか聞くと、『キマイラの短剣』と言ってきた。
攻撃に炎と水の魔法が付与されている。・・・あれ?それって
レベル制限があったんじゃないか?確か80の・・・。
「ばかだな、マカーブルは。既にキョーク様はよい武器をお持ちだ。
ならば、もう一人の武器も強化することによってだな、
パーティの火力も上がる。ということはだ!あの、変な装備を着た
短剣使いがキョーク様の盾となるんだよ!であれば!
キョーク様の安全度がグイっと上がるってとこだ!」
おおおおう。こいつ、只の筋肉バカではなかったようだ。盲点。
しかし、あの女性が持っていたのはそれよりレア度が高かったような・・・。
「そういえば、キョーク様の元に居るリャナンシーなんだが。
情報が逐一欲しいという事でストラスを2体置いてきた。
1匹という事にしとけば、こっちに伝達しに来てもわからんだろう。
眷属とでも言っとけとは教えた。」
我は、今後ストラスからの情報が届くたびに会議を行う事とした。
安全に!順風満帆に!ここまで来てほしいからだ!
キョーク様!ご安心ください!ここまでの道は完璧に整備して見せましょう!
★★★★西の洞窟 3層★★★★
いとも簡単に、キラービッグウッドマンを倒した。
因みにドロップは!『キマイラの短剣』だった。これはリホさんに
譲ろう。リホさんも喜んでくれた。
俺達は一旦王都のギルドへ向かった。リャナさんも一緒にだ。
ギルドマスターに報告をする。王城へ向かい、王様に報告をするそうだ。
俺達は金貨2枚を受け取る。今日は居酒屋で豪華に食いまくってやる!
宿屋に帰り、俺達は居酒屋に繰り出した。
俺もリホさんもあまり酒に強くないので乾杯の時の1杯だけにしたが
リャナさんはがぶ飲みだ。俺達はいままでの出来事をリャナさんに話すと
涙を流しながら、「苦労をしたのですね」と言ってくれた。
そして話は今後の行動に移った。
俺はリホさんとリャナさんに頭を下げる。そして意を決して言う。
「次の街を超えて魔王領と隣接する街まで一気に行きたい」と。
今俺は経験値2倍の効果がある。リホさんとパーティを組んでいるからだ。
ならば高レベルの魔獣を倒す方が効率がいいとも言った。
リャナさんは後方支援をしてくれるので問題ないだろう。
「そうですね、武器もいいしそれの方がいいでしょう。」
リホさんは、ドロップした短剣を触りながらそう言うと
武器を見てニヤニヤしている。『キマイラの短剣』は見た目もかっこいいのだ。
それはそうとリャナさんは眷属が居ないのかを聞いたら
「1匹はいます。スト・・・、いえ、ヤミガラスという眷属です」
ヤミガラス?聞いたことないな。まぁ俺の眷属収集率は80%ほどだったので
そう言うのも居たんだろう。是非、能力を見てみたい!
なんか名前っぽいのを言おうとしたが、種族ではなく名前を言おうと
したんだろう。リャナさんがお手洗いに行った時に・・・。
「やっぱ、あのリャナって人、なーんかあやしいのよね!」
居酒屋で、勢いで酒を飲んでしまったジヴァニアが言う。
うーん。ジヴァニアは昔はシステムだった。その妖精が言うのだ。
イレギュラーな存在なのかもしれない。
あれ?そういえば、妖精が居なかった。プレイヤーだったら
妖精が居ると思うのだが。
リャナさんが帰ってきたので俺は聞いてみた。妖精はいないのかと。
何か考え込む顔をしてリャナさんはジヴァニアを見る。そして
ミネルヴァを見る。・・・何かを考え込んでいる。
「あの敵が私を蹴っ飛ばして私は目が覚めたの。その前の事は
本当に分からないの。もしかしたら、いたかもしれない。
あの敵に捕まってしまったのかも・・・。」
ふむ。一理ある。見慣れない妖精を魔族が捕まえたとすると
非常に厄介だ。
翌日。
俺達は王都を後にしようと宿屋を出た所でギルドの使いと言う人が
あらわれギルドマスターが呼んでいると言ってくる。すごい慌てようだ。
ギルドに顔を出すとすぐにギルマスの部屋へと通された。
「すまねえな、実は王が直々に魔族についての話を聞きたいと
言って来てな・・・。本当にすまん」
今すぐにとの事だったのでギルマスの後をついて王城へ向かった。
だーめだ。嫌な予感しかしねえな。
城へ入るとすぐに謁見の間に通された。ギルマスは同席しないと言って
さっさと謁見の間を出て行った。俺は周りを見る。
近衛兵らしき鎧を着た者たちが16人。
うち一人・・・いや二人が他と違う鎧を着ていた。
うーん。見た事のない鎧だ。まぁでもレア度は低そうだ。
「王センティア4世ご入場です」
声と共に奥の扉が開き、なんだか達磨みたいなご立派な服を着た
やつが入ってきた。一目見てわかる。こいつはダメな王だと・・・。
取りあえず俺達は膝まづく。
「面を上げよ、我こそがセンティア4世であーる。」
言われたとおりに顔を上げると・・・。何アノ上目遣い。
王は「ききたいことがある」との事だったので俺は洞窟で
であった魔族の事を話すが・・・・。
「その話はいいのじゃ!要件はお前が持っているその妖精の事だ。
その妖精を我に渡すのじゃ!王である我が直々に申して居る!
さあ!渡すのじゃ!」
・・・なんだこいつ。俺は何故妖精を欲しがるのか聞いた。
まぁ珍しいからなぁ。
どうやら最近、雇い入れた傭兵が妖精を傍らに置いていたらしい。
その妖精は男型らしく、それほどまでに欲しいとは思わなかったが
「冒険者ギルドで女形をみた」との噂を聞き、調べた所2匹いた・・・と。
・・・妖精がいる傭兵?プレイヤー確定だな。まぁいまはいいや。
そのうち1匹が白いドレスを着ており、見てみたいと思い俺を
呼んだらしい。
「1匹でいいのだ!その白い方じゃ!さあ!早く渡せ!
特別に金貨5枚やろう!」
俺は王様に説明をした。これはプライベート・パペットと言って
俺個人とつながりがあるので渡すことはできない、と。
「口答えするな!」
そう言うと、傍らにいた近衛兵の一人が槍の後ろの方で俺の
肩口を殴打した。俺は痛さよりも、
後ろから感じた
恐ろしく、凍てつくほどの殺気の方が怖かった。




