第15話 俺の知らない所で
魔族 マカーブル
確かゲームで見た時はレベル120だったはずだ。
そんな魔族が何故ここに居るんだ!・・・だーめだ!
勝てる気が全くしない!
リホさんを見るとマカーブルの覇気を食らったのか
動く事も出来ない様子だった。
雪丸もレオも全く動けていない。ジヴァニアなんて雪丸の
毛の中に隠れている始末だ・・・。
そんな時、俺は全く関係が無い事を考え付いた。現実逃避なのか。
リホさんの眷属のライオン、名前はレオ。
これって「頭痛が痛い」とかの言い回しと同じなんじゃねえか?
俺はくすっと笑った。
「あなた達はよくその扉を開けることが出来ましたねぇ。
幾人かこの洞窟に来ましたが開けもせずに帰っていったというのに。
それに、私を前に良く笑えていますね.・・・ん?」
マカーブルは何か疑問があるような、そして何か不思議そうに
俺を見た。あごに手をやり、思案もしている。
近づいてくる!や、やられるのか!?と思ったら
俺の周りをぐるぐる回っている。時折匂いをかがれている。
・・・何だコイツ?
「貴方もしかして転移者だったりしますか?」
俺はその質問に頷き、リホもそうだと言った。すると
「ほお!」と何故か嬉しそうに反応した。名前も聞いてきたので
「キョーク」と答えた。その時、ジヴァニアが・・・
「本当は!キョ、キョークは強いんだからね!あんたなんて
簡単にやっつけることが出来るんだからね!・・・本当は!
メインの体さえあればだけどねっ!レベル193なんだからねっ!
・・・本当は!」
そこまで言うと雪丸の毛にまた隠れた。
をい!言うんじゃねえ!殺されちまうじゃねえか!危険分子で
殺されちまう!
「そ、その話は本当なのですか?因みにそのメインとやらは、
体は何処にあるのですか?」
俺は「魔王領リリスの塔50階だ」と答えた。あそこは
ヒールスポットだ。魔族は入れないはずだ。・・・入れない。
多分。入れないで欲しい!切に願う!言った事を後悔した!
しかし、その言葉を聞き、マカーブルはさらに驚いていた。
「少し所用が出来ました。次の2層でお会いしましょう。
あぁ、そうだ。因みにそのメインの体を手に入れるために
レベル上げをして、装備を求めている。・・・という事で
間違いないのですね?」
その質問に俺は頷く。マカーブルは少し思案し、何か納得した様に
左手を右手でポンと叩く。そして
「確か、ここに本来いるはずの魔獣は装備をドロップさせていましたね。
解りました。魔獣を置いて行きます。では!また後で!
・・・絶対来るのですよ!?来ないと王都に攻めますからね!」
そう言い、消えると同時に魔獣が現れた!・・・スライムがっ!
普通のスライムが!目の前に!・・・何故かいた。
俺はとりあえず「怒涛」のスキルを使う。あいつが置いて行った
魔獣だ!只のスライムじゃないはずだ!・・・との思い。
スライムは3発目のクリティカルで煙となった・・・。
をい。初期の小屋の所にいたスライムとなんら変わらなかった。
ドロップをしたものを取りに行く。スライムじゃ皮の服かよ・・・。
と思っていたら!何故かそこには、レベル100ほどで手に入る
『カーマのローブ』が落ちていた。!?意味が解らん。
打撃と斬撃のダメージ半減の効果と毒無効化の激レアさんだ。
メインの時に結構お世話になった。
リホさんに要るか聞いたら、ネコミミフードの方が可愛いとの事で・・・。
俺が貰う事にした。
しかし、着れないじゃないか!レベル制限で!
「何が起きたのか、さっぱりわからないわ・・・」
リホさん、それは俺もだ。まぁでもマジでいいモノを手に入れた。
俺達は2層に入るがやはり魔獣は現れない。
そして2層のボスの扉のとこに来ると!何と!扉に
『あと5分』とプレートが付いていた。・・・。
★★★★魔王領 リリスの塔★★★★
「リリス!リリスは何処だ!いたぞ!1発目で引き当てちまった!
魔王様の分身を発見した!」
美しき魔族がその声に振り向き驚きの表情を見せた。
ほ、本当なの?マカーブル!
「あぁ、本当だ!意識はないにせよ魔王様から発する覇気と同じだ。
匂いも嗅いだ!間違いない!それにここに向かってらっしゃる!
が!しかしだ!ステータスがめっちゃ弱かった!どうしようもないほどに!
ありゃあ今すぐは無理だ。」
どうにかしなさいよ!どんな手を使ってもいいわ!なんなら
迎えに行ってもいいわ!
「い、いや、それは止せ。混乱されるかもしれない。それに
戦闘にならないとも限らない。もし攻撃でもしてきてみろ。
お前のダメージリフレクトでキョーク様は消し飛ぶぞ!
取りあえずカーマのローブを置いてきた!手持ちはそれしか
なかったからなっ!他にも装備と武器を所望だった!」
キョーク様と言うのね!お名前は!あああぁ、いい響き!
宝物庫から持っていきなさい!一番いいのを!というか!
どの武器を所望されたの?
「やべえ!それ聞いていない!」
あんたバカじゃないの!今すぐ行って聞いてきなさいよ!
なんならあなた眷属になりなさい!なってきなさい!というか
貴方の転送陣でここに送りなさい!
「いや!だめだ。キョーク様は今は人間達の冒険者を
されている。それに実は魔王なんですよ?貴方。とか言ってみろ!
人間は精神がぜい弱だ!死んじまうかもしれん!そして
魔族の転送陣なんて使ってみろ!人間の体は持たないぞ!」
じゃ、じゃあどうするのよ!
「安全に。順風満帆にここに来てもらうしかない。
今俺達の存在は人間達に知られている。もしも俺達が、いや、
キョーク様が、魔王と人間にばれてみろ!キョーク様は
人間達にぶっ殺されるぞ!」
と、兎に角、この装備をもって早く戻りなさい!
聞いてくるのよ!武器の事!
「わかった!いってくりゅ!」
★★★★ 東の洞窟 2層★★★★
あ、プレート消えた。俺は扉を開ける。
そしてそこには、息を切らしたマカーブルが居た。
「逃げずによくぞ来ましたね。褒めて差し上げます。」
俺はその言葉を聞くと同時にある質問をした。
魔王は本当に誕生したのか?と。
「そっ!その質問には答えられませんね」
マカーブルは動揺した。どうやら本当に誕生したらしい。
しかし、何故にマカーブルが戦わないのだ?俺は疑問に思う。
俺のような弱い冒険者であれば瞬殺だろうに。
・・・俺なんて取るに足らないのだろうな。糞がっ!
「では、私からも質問です。この次の3層では
武器が手に入るはずですが、貴方はどのような武器を
求めているのでしょうか?」
答える義務はねえ!と言ってやった。
「え!?ほ、ほほう(ど、どうしよう!)。・・・。
本当に質問に答えなくてもいいのですか?答えた方が
身の為ですよ?さぁ本当のことを言うのです!
さもなければ!」
そういうとマカーブルは手に持っていた大鎌をリホさんの
首に当てていた。
どういうことだ?まさか!
まさか!出さないつもりなのか!ここで俺が
片手剣と言ったらそれ以外の補助魔法の杖とかを出すのでは?
俺は悩んだ。本当のことを言うか言うまいかを。
少し思案して俺は答えた。
両手剣 と。
マカーブルはリホさんから大鎌をはずし笑う。
「なるほど。両手剣を所望だったとわ。わかりました。
それはそうと、先ほど手に入れられた装備は身につけないのですか?」
馬鹿にしやがって!俺はレベル制限で着れないと言うことを憤慨しながら言った。
思いっきり言ってやった!
「すみません、あれ着るにはレベルが足りなくって。」と!
「!?つ、次の3層でお会いしましょう。」
そう言うと同時に魔獣が現れた!
・・・デブコウモリがっ!何故!




