第108話 共感する2匹
★★★★リリスの塔★★★★
「で、リルさんや。これは何でしょう。」
俺は問う。リリスに。
塔に取り付けられた長さ50メートルほどの丸い筒。
少し遠くから見たら砲身だ。というか、砲身だ。
しかし直径が3メートいるほどしかない。こんなものなのか?
!そうか!ここから魔法のビームっぽい何かが出るのか!
と思っていたら・・・。
「魔王射出装置です。」
なるほど。コレで俺を打ち出すのですね。
っておい!
「クドラクととても濃密に二人だけでお話しされたとか。
それはもう自慢げにクドラクが話すのです。」
リルさんが眉間にしわを寄せて話す。って、なんで知ってるの!
どうやらクドラクは俺との話を魔法装置を使って伝えたらしい。
そして、あんな感じこんな感じで塔にコレをつける様に
リリスに言ったらしい。
「カタパルトと言うそうですね。えぇ、作りましたとも。」
リリスがなんか『褒めて』と言う様な表情に変わった。
クドラクのヤツ確かにリアルロボットの出撃シーンをメモ取りながら聞いてた
もんな。
「砲身の後ろに5重の魔方陣を設置しております。これにより
圧倒的な加速を実現できるのです。因みにエルフの里まで5秒です。」
5秒って・・・。それ凄い風圧が襲い掛かるんじゃないの!?
と思いきや
「大丈夫です。前面にも防御魔法を3重展開しております。
まぁ魔方陣で魔王様を包んでるって感じですかね」
話ながら褒めてアピールが凄い。
「魔王様が着点を念じてくだされば、そこで加速が終了いたします。
出来ましたら飛行型の眷属と共にイッて下されば。
まぁ、出ました、着きました、堕ちました。じゃ問題だしね。
というか、何俺納得してるんだよ!使わねえよこんなもの!
なんでこんなもの作ったんだろうと思っていたら。
「それは魔王様が時間に縛られていますから。少しでも移動に掛かる
時間を短縮したいと言うクドラクの考えに私も同調いたしました。」
なんか今度は少し目を潤ませながら話したので俺はとりあえず
『ありがとう、何かあったら使わせてもらう』と、褒めた?が
こんな物使うのか?いや、これなら皇国へ行くのもすぐだろう。
というか、キョークで使ってもいいのでは?と思ったが俺には
飛行型の眷属が居なかった事を思い出した。くっそ!
というかこれを2時間ほどで作ったのか?すげえな。
どうやらクドラクも既に脱出ポット型の魔力吸引装置を
既に完成させたそうだ。そんなに簡単に作れるものなのか!
「キョーク様はこちらに」
俺はリルさんに連れられついた先の宝物庫の前で少し待たされた。
なんかくれるのかな?と思っていたら。
リルさんが恭しく片膝をつき両手で槍の様な、いや、槍だ。
俺に差し出す。
「マカーブルより聞いております。魔王様はアノ伝承にある魔法を
お使いになれると。ならばこの槍をお持ちになる資格があるという事。
先代も先々代も真の力を発揮できなかったとおっしゃっておりました。」
俺はその槍の名前を聞いた。リリスは一言、
ケラウノスの槍でございます。
!
魔法の名前に使われている『ケラウノス』とは槍の名前だったのか。
ゲームではそんな槍使わなかったぞ。
「本当に、いえ、失礼ながら本当に魔王様はあの魔法を使えるのでしょうか。」
リルさんが少し申し訳なさそうに効いてきた。・・・確かに。
もしかしたら違う魔法かもしれない。俺の、ヴェヌスが使える魔法は
槍は使わない。俺はリリスに間違いかもしれないので魔法の名前を伝えた。
フォリナクション・フォ・ケラウノス と。
その名前を聞いたリルさんは凄く目を輝かせていた。
リルさん曰く、その魔法は大地すら無に帰す魔法。天空より放たれた
一閃が大地に突き刺さりその衝撃から光が広がり、空間がゆがみ、
その空間に居るモノ全て、あるモノ全てが無に帰す魔法。
いやいや、さすがにそこまではないだろう!伝承はいつも盛りすぎなんだよ!
しかし、リリスから聞いた魔法の名前は俺が、
ヴェヌスが使える魔法と同じ名前だ。しかし、槍は使わなかった。その事を
伝えると。
「では使ってみましょう!」
俺はその槍を受け取りヴェヌスが眠る部屋に歩いて行きながら
どうやって使うのか考える。天空より放たれるから投げるのか?槍を。
魔力を込めて?今度誰も居なく影響のない所で使ってみるか。
部屋の扉を開けケラウノスの槍をヴェヌスの枕元へと置いた。
俺が、キョークが持っていてもしょうがないしな。俺、槍使えないし。
ヴェヌスは問題ないだろう。一時期槍にハマって相当使い込んだからな。
まぁでも片手剣に戻ったけども。
「ニュクス達の様子を見ている斥候のモノよりの報告があります。
戦の準備をしているとの事」
リルさんが突然に言ってくる。止めないと!
俺は今からニュクスの元に行くことをリルさんに伝えると
思いっきり反対された。
「捕まりに行くようなものです。」
めっちゃ怒ってる。
前回は上手く逃げてこれたことを伝えるとニュクス達が本気では
無かったと言われた。私達にはかなわないまでも数名のレベルの高い
モノ達の存在。それと有翼族達の戦闘能力のすごさ。
全体的には2万ほどですが魔王領の兵士達10万に匹敵するだろう、との事。
あっちもすごいがこっちも10万とか兵士居るの!?
「そりゃあいますよ。そうですねぇ、全てかき集めれば25万ほどでしょうか。」
とっても簡単に言ってくれた。
って事はニュクス達は魔王領戦力の3分の1に匹敵するのか!
「ニュクスが何を考えているのからない今、こちらが動くのは
得策ではないと。こちらとしては皇国へ進軍すると見ておりますが
魔王様へ一直線に来る可能性も捨てきれません。というよりも
私なら魔王領へ一直線ルートを取ります。マカーブルは女心を
解っていませんし?」
フン。と鼻息荒くリルさんが言う。皇国への進軍はマカーブルの
導き出した答えだ。なるほど、色々とあるんだなぁ。え?女心?
か、関係あるのか?そんなモノ。
あぁだからか。この塔の周辺や塔内部に強そうな兵士たちが
うじゃうじゃいるのは。
それはそうとあと4時間で3時だ。俺はリリスに言って転移装置に
乗る。ヴェヌスの確認のためだ。数回は体に移ったが如何せん
キョークの体の時が長く色々と思い出せなくなっている。
ヴェヌスは10年も使ったのに。たった1年ほどでこんなものか。
それほどキョークの体が馴染んだんだろうな。
と思っていたら、気絶した。
「ふう」
俺は一息つき立ち上がる。
軽い柔軟体操を行う。うーん、やっぱ少し感覚が違う。
体の重心と言うか・・・。少し前のめりになる。理由は言わない。
俺が両手で胸を掴んでいるとリリスが入ってきた・・・。いやこれはね。
そんな目で見ないでリルさん。というか頬赤く染めないで。
俺はステータスを開く。リルさんが準備してくれたお茶を飲みながら
確認をする。キョークの体は相変わらず、いつものようにソファーに
ぐったりしている。あんまり見ないようにする・・・。
うーん、やっぱりケラウノスの槍は持っていない。結構集めた
とおもったんだけどなぁ。そもそもケラウノスって魔法の名前と
思っていたからなぁ。俺は槍を持つ。うん、いい槍だ。どれどれ?
鑑定鑑定。
レベル190レジェンダリー
特性 魔力吸収。
え?これ強いの?ま、まぁ強いんだろうなレベル190だし。
俺は槍のステータスを閉じ魔法の項目を見ると・・・。
名前が変わっていた・・・あの魔法の。
フォリナクション・フォ・ケラウノス・パルフェ
おい、パルフェってなんだよ。
ま、まぁいい。あんまり使わない事にしよう。しかし、なんでこれほどまでに
魔族の方々はこの魔法にこだわるのだろうか。
「そりゃあ誰も使えない魔法を見たいに決まってるからでしょうに」
バルバトスがヤレヤレな感じで言ってきた。
何で居るの?と聞いたら少し目を潤ませ俺の姿を見たいからだと
言ってきた。泣きそうだ・・・。
あ、そうだ。体を少し鳴らしておこう。この間ユキさんとは戦った
けど少し消化不良。魔法中心だったし。
俺はクドラクに「ちょっと手合わせしよう」と伝えると・・・。
そりゃあ大喜びだった。
闘技場へ向かい剣を取る。バルバトスの武器は・・ほうほう弓か。
「おいおい、気合入ってるがこれはあくまでも俺の感覚を取り戻す
模擬戦だからな、手を抜けよ」と俺は伝える・・・。
そして戦いが始まる。高速の弓が無数に飛んでくる。俺はそれを
剣で弾く。うんうん、いい感じだ。おお、さらに早いぞ!バルバトス!
俺は楽しくなってきた!おお、距離を詰めさせない戦い!いいぞいいぞ!
しかし!動きながら発動している魔法をバルバトスが踏む。
移動スピードが落ち一気に距離を詰め剣をかすめさせる。切ったりはしない。
死んじゃうかもしれないから!でもこれで十分。
「こ、こりゃああ」
バルバトスは慌てながらも弓を撃つ。それも矢が拡散され8方向から
俺に向かってくる。うんうん、そのスキルはいいモノだ!しかし!
俺は全てを弾く。
「ま、参りました!ま、まさかここまでとわ!恐れ入りました。」
バルバトスが頭を下げる。見ていた兵士たちが台歓声を上げる。
「流石ですわ、バルバトスの攻撃を全て防ぐなんて。」リリスがなんか自慢げ。
普通にバルバトスは強い。しかし単騎だと俺に分があるだけだ。
なんか消化不良なので見ていた兵士たちに言っちゃう。
「よし!お前ら!全員掛かってこい!」
人は高揚すると見境なくこんなこと言っちゃうんだな・・・。
俺対80の模擬戦が開始された・・・。
「ふう、いい運動になった。うんうん、いい感じだったよ」
俺はリルさんにそう言いながら部屋へと戻る。
「兵士たちも喜んでおりましたわ。魔王様と模擬戦なんて最大の
名誉ですしね」くすくすと笑いながら俺についてくる。
よし、なんとなく感覚が戻ってきている。これならある程度は
戦えるだろう。
ああ、そうだ。飛行型の眷属を登録しておくか。
うーん、どれにしようか。ワイバーン型もいいがミツルと被るなぁ。
お、こいつ。うん、コイツでいいや。そして俺は登録する。
スパルナを。
そして俺は3時になったのでベッドへ入る。
キョークとして目を覚めると何故かスパルナはいたままだった。
「あれ?なにその体。どうなってるの?」
スパルナが首をかしげている・・・・。
何故か雪丸が近づいて行く。スパルナと雪丸が見つめ合い沈黙が
流れる。もしかしてやり合うのか!と思っていたら。
2匹が大きなため息をついた。なにか通じるモノがあったのだろう。