第107話 ステラの転機②
最高の援軍が堂々と扉から入ってきた。
扉の向こうがどうなっているかは想像したくねぇな!
しかしこれで逃げられる!
俺はステラに潮時で逃げる旨を伝える!俺は扉を確保し
リホもそこまでの導線を確保する!そしてイチキが来る!
そして!ステラが!
何故か詠唱を始めた・・・。そして扉の横の壁に向け放つ!
その放たれたモノが壁に穴をあける!ドアがあるのに!結構
大きめの!なんでそうやって大げさにするんだよ!ステラ!
部屋から出るがツクヨミたちは追ってこない・・・。
これは、アレだ。俺達は舐められている・・・。
大きな盾を持ったものが殿を務め、ユキが先陣を切る。
部屋の中では時に何もしてこなかった弓使いが中衛でいい働きをしている。
なるほど、あの部屋では弓の特性を生かしきれないと思い
無理に戦闘をしなかったのか。戦いに慣れてるって事だ。
俺達全体に防御的な何かも展開されている。多分、あの
有翼族のおかげだろう。
そして俺達は一気に城門へと到達する。その間数えきれない兵士を
殺さずに無力化していく。ユキを見ると剣を鞘に入れたまま
振り回していた。まぁ抜いてたら全員死んでるんだろうな。
リホもシャープエッジでの戦闘をしている。そりゃあ
キマイラの短剣じゃあ殺しちまうしな!
俺も予備での片手剣でただ払うようにユキより一歩引いた所で
戦闘を行う。
「馬を準備している!各々乗り込め!」
大盾を持った女性が指揮をする。こりゃあ慣れてるな、何モノだ。
そして俺達は難なく皇国から出ることが出来た。まぁ
逃がしてくれたんだろうな。
★★★★皇国 皇王の部屋★★★★
「あんな簡単に逃がしてもよかったのですか?母上。
止められていたから何もしませんでしたが。ここで
姉上を幽閉するべきだったと今でも思います。あ、これスッパイ」
ツクヨミはブドウを食べながらイザナミに愚痴をこぼす。
「いいのよ、別に。もしもあの白い仮面の・・・ユキでしたか。
彼女たちが兵士を殺しながら入ってきたのならば対応は
違っておりましたが。それにあの大きい剣を持った者も
良い判断をしておりましたし。本当に酸っぱいわね。」
イザナミもブドウを食べながら返答をする。
「まぁでもこれで最後だ。あのバカ娘が簡単に考えを
変えるわけではあるまいて。俺は好きだぞ?これ位」
イザナギもブドウを食べる。
するとそこにスサノオが入ってくる。
「俺もこの場所に居たかったもんだぜ。はっはっは。」
「帰って早々悪いな。編成はどうなった。」
イザナギはブドウをパクパク口の中に放り込む。
「5000に魔道具を持たせた。後は剣士と魔法士の
混合編成で3万だ。」
スサノオもブドウを食べる。スッパイもおいしいも言わなかった。
「回復い要員が居ないんだな」
そのイザナギの一言にツクヨミが
「必要ないでしょう。私もおりますし、母上も居ますからね。」
「おいおい!お前はまだしも、イザナミも行くのか!?」
「行くに決まってるでしょう。何か問題でも?」
「じゃあ王位譲渡の件は帰ってきてからやるの?」
「ねぇ私がやらないといけないの?貴方のままでいいじゃない」
「そりゃあダメだよ、君じゃないと人々の心はまとまらない。
みんな父親ではなく母親を求めてるんだよ。」
「じゃあ皇女って奴?」
スサノオが笑いながらツクヨミの肩に手を掛ける。
「いいや、親王だ。俺達をも導いてくれる存在だ。」
「あらら、大それた呼ばれ方ね。私は『母ちゃん』って呼ばれ方でも
いいのよ?ふふふ」
「じゃあ『母ちゃん王』か?」とスサノオ。
「いや『王母ちゃん』だろう」とツクヨミ。
「なんかどっちもパッとしないわね」とイザナミ。
その2日後、皇王リスボアより皇国全土に伝えられる。
皇王リスボアは王位を退き、その後は我妻『ルエダ』を王とする。
今後は『親王ルエダ』の元にこの国を纏める事とする。と。
★★★★道中のキャンプ地★★★★
ミツル視点
「ところでさ、この森って何て名前なの?」
ステラは相も変わらずかつ丼をかき込みながら俺に聞く。
「確か『シンの森』だったはず」
リホはかつ丼、牛丼、チキン南蛮をせっせと作りながら
答えてくれた。し、知ってたさ。
「しかしこれが、本当の味か!衝撃的なほどのうまさだ」
大盾の女性が牛丼をかき込みながら絶賛する。
「お行儀が悪くてよ?アテナ。」チキン南蛮を摘まみながら
そう言うのはデメテルと名乗った。
そして有翼族のニーケー。おいおい、これマジなのか?
かつ丼をスプーンでうまく食べているのがアルテミス。
どうしよう!サイン貰いたい!キョークが知ったら同じ思いだろう!
というか俺は自慢できる!今まであった中で一番の奴らだ!
「これは多分こうやって食うのが正解だ。多分シェフ・リホの世界では
これこそがマナーだ」
そのアテナの一言にステラがうんうん頷きながら、そしてリホは
苦笑いしながらうんうんと頷く。
「もうステラの名前は捨てるわ」
御馳走さまをいいながら手を合わせるステラ。
「あの調子じゃツクヨミは仲間にはならない。まぁアイツの考えでは
そうじゃないかなとは思っていたけど。」
「敵対するの?」リホも自分のご飯を食べながら聞く。
「敵対じゃないわ。私は別の道を行くの。」
ステラはリホの食事を興味津々に覗き込みながら答える。
「ところでユキ?この4人の方は?紹介してくれるとありがたいんだけども。
貴方と一緒にいるって事は仲間と思っていいのよね?」
ステラはそう言いながら4人に対して微笑みかける。
「こっちからアテナ、アルテミス、デメテル、そしてニーケー。
金で雇ったわ。・・・強いわよ。もう伝説の強さよ。」
ユキも御馳走さまを言いながら答える。
そりゃそうだ。どんな感じで伝説に?と聞かれたので
「そりゃあアテナは赤いし空飛ぶし。太陽から降って来るし。
アルテミスは三日月を弓に変えちゃうし。デメテルは
そりゃあ優しい母ちゃんだし、ニーケーなんてもう存在が
人超えて全ての総称になっちゃってる。ニーケーのマーク知らない奴
なんて向こうの世界で存在しねえよ。」と答えて上げた。
「なにがあった!未来!」4人が驚愕の表情をする。
「ユキが雇うほどの人物。信用に値するわ。」
その一言に
「雇い主の主ならば、勿論従うまで。今後とも良しなに」
そう言いながら4人はステラに敬礼をする。
「主じゃないわよ、友達よ友達。」そう言いながらステラは笑う。
「所で名前を捨てるって事はこれから何て呼べばいいの?」
リホは皿を片付けながらそう問いかけるとデメテルも一緒に
皿を持って片付ける。
なんかまじでデメテルさん、お母さんって感じだ。
「アマテラスの名前で行くわ。この体はステラのモノ。文献で
色々と知ったわ。ステラは多分毒殺された。それに私の魂が移った。
彼女の名前でこの世界を生きようと思ったけども。
彼女の日記を見て、やりたいことは全てやってあげたわ。冒険もそう。
だから後はこの私に体を譲って欲しい。そう毎日祈りを捧げていた。
夢で見たけど語り掛けてくれた。それも楽しそうって。」
「ところでいつまでユキに雇われているの?」
そうアテナ達に聞くと
「あと7964回分の食事までかな」
その単位はなんなんだよ・・・。
「これからどうするんだ?みんなが手を取り合う世界って言っても
何をどうするんだよ」
俺はアマテラスにそう聞くと。
「そうね、一度亜人の、いえ、エルフやドワーフの里に行きその後
・・・。そう、キョークの所に行く」
俺はアマテラスの計画に納得する。なんだかんだ言いながら
考えが一番近いのはアイツだ。それにキョークは立場が既に確立されている。
そしてその案に賛成をする。
「その、キョークなるモノは一体どういったモノなのでしょうか」
アテナ達が聞いてきたので俺が答えようとしたらアマテラスが先に
口を開いた。
この世界の魔王よ。と。
4人は唖然とした顔をする。
「魔のモノの王。人類の敵ではないか!ハデスがこの世界にいるのか!?」
アテナが興奮したような声で問いかける。
「ただの魔族の王よ。魔法を使うモノ達。ただ単純にそれだけよ。
今から行く様々な種族の里を『いろいろな』敵から保護しているわ。」
アマテラスは平然と言ってのける。なるほど。そう思えばいいのか。
まぁ色々とは人族の事なんだけどな。
「私は霊力を使うから霊族って言われるのと一緒よ。何か納得してない
顔をしているから言っちゃうけど。ニュクスは自分たちを神族とか言ったけど
実際は魔族の一種よ。だって魔法使っちゃうじゃない。あなた達も
逃げる時に使ったじゃない。魔法を。って事はあなた達も魔族よ?」
アマテラスは平然と言ってのける。
ちょっとフォローしようかな、した方がいいな。
俺はアマテラスを制止し口を開く。
「実は俺と、あ、俺はミツルな。これとリホ、そしてユキさん。
そして今出た名前のキョーク。実はこの世界の人間じゃないんだよ。」
「え?人間?先ほどは魔王と・・・」
アルテミスが混乱した顔で聞いてくる。
「まぁ分類上、人間じゃないかもしれない。こうやって妖精も
連れているし。」そうやって隠していた妖精を3人が紹介する。
「か、かわいい!」アテナのほほが赤くなっている!デレてる!
「だから俺達は妖精使いとも呼ばれている。俺達自体が、俺達を
なんて分類すればいいかわかってない。人族って思ってるけどな。
でもまぁよく人族に嫌われるんだよなぁあああ」
俺のその一言にリホもユキも頷く。
「そうね、私達の存在はどちらかというと魔族寄りなんでしょうね。
神族とかは聞いた事はないわね。多分、私達よりも未来のモノ達が
勝手に言ってるだけだと思うし。私も魔法使うから魔族ね。うふふ。
アテナは脳肉だから脳筋族ね。」
デメテルがそう言うと
「まぁ確かに私達はこの世界の人族とは違うし、そもそも私は
ツバサを生やしているしね。大昔の天使の末裔だろうけど。
私は自分の事を人間とは思っていなかったわ。というか色々な
種族がいるって単純に思っているわ」
ニーケーはアテナを見ながら真面目な顔で答える。
「私は、勿論ほかのモノ達もだが、ここで国を興そうとか
考えたことはない。私達は私達の立場をわきまえている。
ユキの同族であるキョーク、いや魔王か。会ってみたい気もする。
アマテラスが頼りにする存在だしな。」
「じゃあエルフの里へ行きましょう。」リホは旅支度を終えたのか
出発の準備をする。
「あ、あの。その前にドワーフの里じゃあだめかな」
なんかユキがもじもじした感じで言ってくる。
全員が何故にドワーフの里へ?という顔で聞くと。
「もしかしたらこのメンバーの中で出来るかもしれない。
というか全員の力を貸してほしい事案があるの。」
急に神妙な声で言ってくるので俺はどういった事だ?と聞くと。
「あそこには私のサブのキャラが居るの。もしもキョークと同じ
事が出来ればみんなの力になれると思う。」
神妙な声から少し寂しそうな声に代わる。
「私のサブは『あの』ゲームの中で称号を持っている武器職人よ。
レジェンダリーマスタの称号があるわ。」
聞いたことがある。俺の様なエンジョイ勢が買えることのできないほどの
上等な代物を作る武器職人。レジェンダリーマスター。
「じゃあドワーフの里へ行きましょう」
アマテラスが目をランランに輝かせながら答える。
コイツの脳みその中ではユキのサブが作った武器を掲げる
自分の姿があるんだろうな・・・。
そして俺達はドワーフの里を目指す。