第102話 ユキVSヴェヌス②
「これだから貴方とやるのはワクワクするのよね」
おいおいユキさんや。俺は全然ワクワクしないぞ!?
しかし、ユキさんとの戦いで初めてカウンターが出た。
・・・法衣の運のおかげか?・・・微増だからそれは無いか。
「流石ね、全力特攻だったのにかすっただけだもの。
おかげで次の手を考えないといけないわ。一撃で終わらせる
つもりだったのに」
おいおい、ユキさんや。これはあくまでも俺がこの装備で
どうなるかって試合なんだけども?指導試合って感じだと思って
いたんですが!?
「そういいながら私の攻撃を防いだじゃない。貴方もガチって
解ってないとアレを防げないわ。じゃあ仕切り直し」
ユキさんはそういいつつもステータス確認をした。どれくらい
ステータスが減ったかの確認か。以前の少し変な間があったのも
そういうことなんだろうな。
徐々にステータスが減るのであれば特に体感を気にせずに
戦えるが一気に2割は変なズレが気になるよね?
俺のはなっ先を剣が掠める。当たってない、というかフラグだ。
このままグーパンチが来る!問題ない!受ける!そのまま横なぎして
バックステップで・・・・っぶほおお!
そ、そうだった!防御に関しては紙装備だった!やっべえ!
うまく・・・よけれない・・・!
向うも横なぎを繰り出している!あかん!避けれない!
くっそ!もういい!抱きつけ!それでも掠ったぁぁ!
しかし一撃目とは違い少しのHP減ですんだ?いや?
減ってない!今の攻撃は中級か?
そうか!『魔王の涙』の中級までの斬撃無効は草薙の剣でも
適応できるのか!さすが魔王装備!・・・なるほど運営の
草薙の剣への対策だったのか?
俺達は床に抱き合いながら転る、と同時に俺は剣でユキさんの足を
斬る・・・がこれもかすった。うーん、ユキさんの全ステータスは減る!
これで合計3割減だ!
「チートじゃないの!その装備!なんであなただけ持ってるのよ!」
ユキさんや!欲しけりゃイベントやっとけばよかったのにね!
「パーティなんて組めるか!こちとら正真正銘の人見知りなんだよ!
アンタも私と思っていたのにずっるいわね!」
そりゃどうも!こちとらこれが欲しくて胃薬飲みながら、吐き気抑えて
がんばってパーティ組んだんだよ!
明らかに最初からするとユキさんの動きが悪くなっている。いける!
おせるかもしれん!まじか!
あ、溜めてる。これは・・くる!そりゃそうだ、上級特攻しか
効かないからな!え?なに?そのモーション、初めて見るんだけども?
嫌な予感!避ける!避けろおおお!
その瞬間、風圧に絡みとられる。動けねぇええ。中級までの魔法も
無効化するのに・・・ってことは上級魔法?いやこんなものはない。
って事は特攻効果の一部か!そんな攻撃知らんぞ!
ぼっほおおお!草薙の突きをまともに食らった!ひっでえHPの
減り方した!まじか!あとHP93しかねええええ!もう掠っても
終わりじゃねえか!
しかし、突きを食らった分、目の前にユキさん!左下段からの切り上げが
真面に入った!このまま怒涛を繰り出す!が、2撃目は入ったが3撃目が
入らなかった。しかし!2撃目は多分、いや確実にクリティカルだ。
これでユキさんは、ユキさんの全ステータスは6割減だ!
ユキさんの攻撃は防御無視のHP攻撃。だから斬撃でHPを
普通に減らす。威力が高ければそれだけHPは減る。しかし真面に当てないと
俺のHPは減らない。しかし俺の攻撃はかすっただけでもステータスを
削る。そう、HPさえも。
「やっぱり貴方のその剣、フラガラッハはチートね。ゲームの時に
持ってたのは貴方だけなんじゃないの?」
多分片手で十分に足りるんじゃないかな?運の悪かった俺が
ポロっと出しちゃったんだ。まさかここまでの激レアとは
思わなかったよ、自分でも。
明らかにユキさんは今の俺よりも格下となっている。
俺はスピードに物を言わせヒットアウェイを繰り返す、が。
流石ユキさん、一撃も当たらない。全て剣で弾かれる。俺の剣筋が
明らかに読まれている。完全に完璧に読まれている。
「どれだけ貴方の対策を研究したと思っているのよ。
PVPもアンタに勝てば優勝確定だったしね!」
俺みたいな3回戦ボーイをそこまで買ってくれてありがとうねっ!
ユキさんは完全に動かない。待っている。そりゃそうだ。
ユキさんは上級特攻を溜めている。そう、その特攻はかすっただけでも
おれのHPを0にできる。
さてさてユキさんや。俺、今、MP爆盛って事忘れてません?
俺は遠距離からの魔法攻撃へと対応を変える。
「くっ!ズルいわね!正々堂々と剣で勝負しなさいよ!」
俺の魔法攻撃が面白いほど当たる、・・・が、何故だ?効果が、手ごたえが
全く感じられない。HPは減っていそうだけども?あれ?ユキさん余裕?
魔法攻撃耐性?いや、現状中級までの魔法攻撃対策のアイテムはあるが
上級魔法の対策アイテムはないはずだ。・・・まさか!
サンテミリオンか!
俺の知らない能力か!?
「あら、もしかして気づいた?そう、私のサンちゃんてね、すごいのよ?
サンちゃんの能力はね。攻撃力3倍のほかにもね、全ての魔法攻撃を
大幅カットしちゃうのよ?」
ずりいいいいい!俺のジヴァニアと変えてくれ!
「なによ!キョーク!じゃなかった、ヴェヌス!私の効果がなかったら
アンタとっくに負けてるんだけど?」
え?何それ。もしかして能力追加してるの?ジヴァニアさん。
確認すると何と。
特農
?
特濃ってなんだよ!わけわかんねえ!
「特濃は特濃よ!・・・ま、まぁ私もわかんないけども!」
せ、整理しよう。この戦いは少し驚いている。
この装備でユキさんと渡り合えている。暁装備じゃないのに。
最初は素早さが有効なのかと思っていたがいつもよりも
うまく立ち回れている。それにクリティカルが2回も出ている。
あ、後で考えよう。本人もわからない効果なんて俺にもわからん!
魔法を大幅カットといっても減ってるんだ。撃ち続けてやる!
しかし、上級特攻を溜めながら魔法を上手く剣で弾く様な・・・。
あれ?いつの間にか剣を左にも持ってらっしゃる。
ずりいいいい!二刀流じゃねえか!くっそ、俺も左に持ってやる!
がしかし、俺の場合は只持ってるだけでキョークの時のように
全くもってシックリこない!
これが閃きがあるのと無いのとの差なのか?
「さて、このままじゃらちが明かないので突っ込むわよ!」
いやいや、ユキさん!十分、らちは空いてらっしゃいますよ!俺には!
くっそ!こうなりゃ俺も突貫だ!気合いの12連撃だ!
最初の7連撃は空振ってもいい!8連撃目さえ当たれば後は
全部繋げるだけでユキさんのHPは無くなる!大丈夫!いける!
入った!そして9,10、11!・・・最後!
ん?なんでユキさんは受けている?避けてないぞ?・・・あ。
この距離を待ってたのね。
しかし!俺の方が!早い!・・・と思ったのに!
その最後は草薙の剣じゃなく、もう1本の剣フルンティング。
以前は草薙を左に持ってたのに、そのまま右に持って。
すっかり草薙の剣に騙されたわ。笑える。
そりゃあ高速の一撃だわ。フルンティングの能力、素早さ依存の
高速攻撃。そうでした。サンテミリオン効果は素早さも3倍でした。
そして俺は・・・負けた。HPゼロ。
意識が飛ばなかったのはマイナスじゃないからだろうな。
キョークに戻る所だったよ、と回復魔法を掛けてくれているリャナさんに
愚痴ってみた。
「流石ユキさん、やっぱツええよ。」
俺は苦笑いしながらユキさんの所へと向かう。
「ねぇ、これって。減ったステータスって戻るのかな」
そう聞いてきたので3時には戻るはずだよ?多分だけど。
「な、長いわね。まぁでもその装備で十分じゃないかな。
チートアイテムもあるし。こんなことなら私も胃薬飲みながら
魔王イベントするんだったわ。くやしい」
いやいや、サンテミリオンの全魔法効果大幅カットのほうが
やばいだろう!
「いい?全魔法効果大幅カットなのよ?わかる?
バフも大幅カットされちゃうのよ・・・。」
サンテミリオンを見ると「テヘへ」みたいな顔をしていた。
「ささ、宴もたけなわ。食事の準備をしておりますよ。
食べながら今後の事でも話し合いましょう。」
リリス、いやリルさんはなんかとっても嬉しそうに言ってきた。
あのぉ、あなたがたの大将の魔王、所謂俺負けちゃったんだけども?
「いやぁ、良い戦いであった!まっことユキは見事だった!」
バルバトスがユキさんの肩をポンポンと叩きながら笑う。
「魔王様の立ち合いも美しすぎて見惚れてしまいましたぞ!」
マカーブルが興奮気味で言ってきた。
いや、負けちゃったのよ?俺。
「良いではないですか。私もマカーブルもみんな負けた事なんて
ありますよ。しかし、なによりみんな生きている。いいじゃないですか。」
グルルは何故かウンウンと頷きながら言ってくる。
「負けたのは結果です。そこからどうするか考えれば
良いだけですよ。まぁ話の続きは食事をとりながらでも」
顔を赤らめてリャナさんが言ってくる。
そっか、そうか・・・。よし!みんなで食事しよう!
次回は5月4日更新予定