第101話 ユキVSヴェヌス①
リリスの塔へ帰る道中、雪丸の様子がおかしい。腹痛か?
いかん、止まってしまった。俺太った?
リャナさんに見てもらうが原因が分からなかった。
リルさんもわからないらしい。俺は皆に雪丸の容体が良くなるまで
待ってもらう事にした。
いかん、痙攣?の様な・・・!?
突然の光、雪丸が光に包まれる。眩しすぎて目を閉じてしまった!
目を閉じてても眩しい!
その眩しさが和らいで目を開けるとそこには・・・。
白金色と言うのだろうか。色が変化し、一回り大きくなった
雪丸が居た。
なんか立ち方が神々しい程の姿。雪丸が俺を見つめている。
俺に近づくと一回りし、そして懐いてくる。
もしかして!?進化なのか!?有翼族との戦闘で?
ステータスを確認した。
エクストレム・ウルフ レベル1
能力 移動速度超向上 警戒警告 乗用
戦闘スキル 威圧 餓狼 威風堂々 通常攻撃特殊化
な、なんだって?エクス・・トレム?って
なんていう意味だ?くっそ、スマホさえあれば!まぁでも
色とか存在感が超かっこいい!そんな感じだ!多分!
え?通常攻撃の特殊化?ってなにさ。
ま、まぁいい!かっこいいから許す!
何か雪丸が顎を「クイッ」としたので背に乗ってみる。
あれ?すっごく乗り心地がいい!そして走り出す!
なにこれ。今までが軽自動車だとすると高級車!?
いや、逆だ。今までが軽自動車っぽく思える。
ってか速ええええ!
飛行型よりも速い!
一気にリリスの塔へと着いた。
次に到着したのはユキさん。15分遅れ。あれ?キューちゃんに乗ってる。
「速さで言うと飛行型よりもキューちゃんの方が早いのよ。
ねぇ、雪丸頂戴?」
・・・だそうです。
「やだよ!」
それからリルさん達を30分待ってしまった。
そして俺達はリリスの塔へと入る。
まだ夕方の5時。いま、メインのなったら約10時間ほど
メインで居られるか。
俺達は転移装置へと入る。
「これですね、現在60階まであるんですよ」
クドラクがそう言うと
「60階って何があるの?」リャナさんナイス質問。
うん、すっごく知りたい。
リリスの塔はいわば、ラストダンジョンだった。
それが拡張は心が躍る。
「いえ?ないですよ。転移装置が止まってドア開けて出ると
落っこちちゃいますよ?下に」
あーだから遠目からみたリリスの塔はアンテナみたいなのが
有ったのか。これね。
俺の意識が飛んだ時点で50階に戻るそうだ・・・。
ってかユキさんは大丈夫なのかな・・・。心配だったので
ここの仕組みを教えたら「ギリ」大丈夫らしい。
ユキさん・・・もう少し賢さに振ろうよ。あんたのレベルで「ギリ」って
やばいよ・・・。どんだけ近接戦闘特化なんだよ。
そして俺は意識が飛んだ。
うーん。俺の魂は大丈夫なのだろうか。なんか、簡単に意識飛ばして
簡単に体を変えてる。魂に相当な負担はないのだろうか・・・心配だ。
ヴェヌスになった俺はベッドから起き上がる。
そっか、リルさんとかの為に暁装備を脱いで着せ替え人形だったな、俺。
ふむ、まだみんな来ないか。ならばアイテムボックスの中を見る。
MP重視ならコレかなぁ。でも素早さや、ある程度の防御も欲しいな。
魔族の転移魔法を使うとして往復で750ちょっとか。でも
上級魔法も数発は打ちたいな。ならばMPは1000確保だ。
だとすると・・・。防御は捨てるか。素早さ特化なら両立できる。
となれば・・・。
スカディの法衣とミトラの体下、足、籠手。
セット効果はないがコレでいい。
しかし・・・この組み合わせは外見がいかにも魔王ってなっちゃうな。
俺が鏡を見てそう思っていると全員が部屋に入ってきた。
ってか、マカーブルもグルルもヴァスキも入ってきた。勿論バルバトスも。
「うぉ!かっこいい!それに素晴らし色合い!」
と言ったのがヴァスキ。
そうかぁ?如何にもって感じでなんかアレだなぁ。
「そうね、黒基調に紫と濃ゆい赤。まじで魔王って感じね」
ユキさん、腕組んで鼻にかけたように言わないでくれ。
「じゃあ色変えちゃいます?」
リルさんが当たり前のように普通に自然に言ってきた。
「出来ますよ?私錬金術師ですし?」
そして何故か全員で色決めが始まった。・・・おいおい。
なんか横道にそれてないか?
色々な案が出てきたがなんか『コレ』ってものが出なかった。
「思い切ってさ、白基調で明るめの青とか使ってさ、少し黄色も入れて。
もう勇者って感じにしちゃえば?」
ユキさんや、他人事だと思って笑いながら言わないでくれ。
「そうですね、魔王様の髪の色を考えたら、いいかもしれませんね」
おいおいリルさん!俺は魔王よ!?その如何にも勇者って配色は
まずいんじゃないの!?
「え?何故ですか?魔王様は黒基調って誰が決めたんです?
取りあえず配色してみましょう。やり直しは出来ますから(多分)」
今最後、なんか含んだよね?
そして何故か魔王の俺は白基調の明るめの装備色となった・・・。
なに?こんなに簡単に出来ちゃうの?と思ったらリルさん、まぁリリスの
能力と力量があってこそだと言う。
「うぉ!なにこれめっちゃかっこいい!」
第一声は何とユキさんだった。他の皆は何故か無言。
そうだろうそうだろう、魔王がこんな勇者みたいな色調は・・・・
「熱いものがこみ上げて言葉を失ってしまいました」
何故泣いている!マカーブル!
「おい!鼻字出てるぞ!ヴァスキ!」
「よい!良いです!その一言です!」
喋る前に鼻血拭け、ヴァスキ。
「そう言えば前魔王はホムンクルスの時は明るめの装備でしたわ。」
クスクスと笑いながらリャナさんは微笑む。
「そうそう!俺なんて一緒に来いって言われて服買わされた!」
どんだけ地味なんだよバルバトス。・・・今もだが。
「まぁでも、他の組み合わせも見たいので一旦色変えて?」
とりルさんにお願いしてみる。
時が流れる。
空気は流れない。
「な、なんか、元に戻りません・・・。ちょっとやばいかも?」
リルさんの額が汗でびっしょりとなっている。それが顔面につたう。
・・・俺の、ヴェヌスの通常装備の配色が決まった瞬間だった。
「さて、やるわよ?ヴェヌス!」
沈黙を破るかのようにユキさんが叫ぶ。
そうでした。この装備で戦闘に耐えられるか試すんでした。
因みに俺のレベルは193、ユキさんは197だ。
「ユキさん、もしも黄龍に草薙の剣の特性が通用するとしたら?」
俺は聞いてみる。
「バフ、デバフのパーティ、リャナとニュクスが居れば十分勝てる」
自信に満ちた一言。しかしニュクスの名前を出した事で
空気が固まったのを感じた。
「デバフかぁ・・・。ニュクス以上のモノを知りませんな」
気を使ってかマカーブルがあごに手をやり答える。
当初、草薙の剣は使わないって話してたのだけど・・・使ってもらう事にした。
俺もフラガラッハを使う事とした。
「ねえ、その装備と暁じゃ、大きくどこが違うの?」
ユキさんの問いに噓をつかず真実を話した。
まずHPが5分の2程度になる。しかし、MPは3倍ほど。
後、素早さが1.5倍ほど・・・と。
あ、そうだ。後、スカディの法衣の基礎ステータスで運が微増している。
まぁ、大した程上がってないけど。防御は紙になってる。まぁ、
暁装備に比べてだけど。まぁレベルに応じた防御力かな。
因みに暁が1820だったのが、これは640になってるとも教えた。
「暁ってそんなにあったの!?」
驚いてくれてありがとう、ユキさん。でもね、あんたの剣の前じゃ
無意味なのよ?
ただし。そこからジヴァニアの効果が乗っかってる。これが大きい。
あれ?って事は暁は防御力3640かよ!コンクリートだな!
「話は聞きました。では48階にある闘技場を使いましょう。」
マカーブルは俺達を案内しようとするが雪丸が威嚇する。
「そうだな、雪丸。お前はキョークを守っていてくれ。」
俺は雪丸を撫でながら言う。雪丸はソファーに座っているキョークの前に
座る。うん、雪丸。お前が居たらどんな時だって安心だ。
俺達は闘技場へと着く。
「全部有りでいいよね?ってかPVPのややこしいモノなんて
消えちゃってるし。」
ユキさんの一言に俺は答える。
「ゲームじゃないしね、まぁでも胸を借りるつもりだけど・・・
負けるとは言ってない!」
俺のその一言が合図となりユキさんが突っ込んでくる。
知ってる!前回がそう言った感じだった。
俺もバックステップをしながらフラガラッハを下段から
切り上げる。そう、何もない所に切り上げる。しかし、何もないはずの
その場所にすでに、草薙の剣が上段から落とされる。
剣と剣が合わさった瞬間にユキさんの剣が軌道を変え、俺の肩口に
かすってしまう。
うっげええええ!当たっちまった!ってなに!?HPめっちゃ
持ってかれたんだけど!?3分の1は減ったよね!
しかしここで奇跡が起きている事に気づく。
なんと草薙の剣を受けた時にカウンターが発動したのだ。
今までユキさんとの戦いで一回も発動しなかったカウンター。そしてそれは
クリティカル確定となる攻撃。
俺のHPは3分の1減ったが・・・
ユキさんのステータス全てが2割減となった。