魔王と仲良くなる
前回のあらすじ~
国を作ってやっと回り始めた。
しかし、この後、起きる事は国を滅ぼしかねない危機に遭う。
この回はその序章でしかない。
僕は宮殿に帰ると、戦闘場の方から物騒な音が聞こえてきた。
僕は何をやっているのだろうと不思議に思って様子を見に行くと、イトとトキちゃんが戦っていた。
トキちゃんは素早くイトの周りを走り回りながら様子を伺っている。
イトは見るからに無防備だな~と思った。
トキちゃんは最近より鍛錬や修行に取り組んでいるので、技術もスピードも格段に上がっている。
「そろそろ終わりにしよう。」
イトが言うとゆっくりと短剣を納めて、お辞儀をした。
結局、トキちゃんはイトに近づくことも出来なかった。トキちゃんは僕に気付いてお辞儀をした後、戦闘場を出て行った。
「トキの奴、僕に攻撃もしないでグルグルと回る。」
「それだけイトのことを警戒しているってことじゃない~?」
イトが独り言を言った後、僕がイトの後ろから言った。
「先輩だからね!」
イトは鼻を長くしている。僕がそうだねと言ったら、イトに怒られた。
僕がイトを宥めているといい匂いがしてきて、イトはお腹を鳴らした。
イトは顔を赤らめた。イトはその場から逃げるように走り去ってしまった。
僕も少しして、戦闘場から出た。
食卓に行くと、そこにはイトとトキちゃん、エプロンを着ているマホがいて、遊びに来ていた魔王がいて、テーブルには料理が置いてあった。
「いただきます!」
僕が手を合わせて食べ始めると皆も食べ始めた。
しばらく食事を楽しんでいると、マホが何かを察知したのか、窓の外を見渡す。
マホが再び席に座ると強く揺れた。見た感じ、この国全体が揺れている。
マホは地魔法”地の平和”によって地震を止めてくれた。
「どうして地震が起きたの?」
スープを被ったまま、マホに質問した。マホは強い揺れの中、平然と椅子に座っていた。
「オール様から聞いたんですけど、魔王という最強の七人がいるそうで、そちらで料理を盛大に被っている魔王は最弱の魔王です。」
マホの辛辣な言葉に反論するように魔王が被った料理を払い、マホを指差す。
「弱くないのだ!!ただ本気を出せてないだけなのだ!!」
「それはともかく、その中で一番強いのはオール様でも手を焼く問題児、破滅の原者マオサです。」
「それのマオサって人がどうしたの?」
「いるんですよ。そこに……」
マホが指を差す方向へ目を向けると、角を生やした筋肉質な背の高い男性が立っていた。
「ご名答。」
マオサは満足したように笑う。
「それでここに何の用なの~?」
「儂は六九七万年は生きておるが、お主……」
マオサは言葉を濁した。
「あの?」
僕は不思議そうな顔でマオサを見る。
「儂はお主を殺さないといけないのだ。」
「ちょっと待て!?マオサ!?」
魔王がマオサを止めようとしたが、マオサは聞く耳を持たずに空気魔法”時のない矢”
を僕に放った。
僕の体に矢が当たった。僕は体を隅々確認して何もないと思った瞬間に圧し潰されそうになった。
少し重たかったけど、痛くなかった。
「生きているって素晴らしい!」
死魔法”魂根滅”僕の心臓が赤く照らされている。マオサから伸びてきた黒い手が掬い取ろうとするが、まだ赤く照らす心臓は僕の中にある。
万能魔法”全知無知”
マオサが手の中に魔法を凝縮して玉にして、こちらに投げてきた。
頭が追い付かないけど、避けると国が滅亡するような気がして、僕は真っ直ぐ受け止めた。
玉はどんどん小さくなっていた。良かった、これで終わる。
そう思って気を抜いた時に玉は一気に大きくなる。
部屋が壊れそうになって、皆の顔が浮かぶ。久しぶりかもね……、怒るのは。
体が熱くなり、頭に血が昇るのを感じた。
「ふざけないでくれる?この宮殿、この部屋を作るのに沢山の人が関わっているんだよ?」
僕のせいでピりついてしまった。
「儂の知ったことではない。」
僕を見下す目を見て限界を超えてしまった。
「それならマオサが泣くまで教えるよ。そして、直させるから。」
僕の貧弱な体がこの時はまるで強靭な体のように働いた。
僕は大きくなった玉を潰して消した。
マホは面白そうに不気味な笑みを浮かべた。
三人は開いた口が塞がらなかった。
僕は勢いのままマオサの顔面を殴ってしまった。
僕はマオサを殴ってすぐに我に返った。マオサは顔面を手で抑えていて、皆の顔が青ざめていた。
僕も青ざめていた。
僕は頭が真っ白になって、戸惑っているとマオサが僕に俯きながら近づいてきて、僕の両肩を掴んできた。
「お主は何をしたか、分かっているのか?」
マオサはドスの効いた声で言ってくる。
「えっと……」
「お主は初めて真正面から儂を殴った奴だ。」
マオサの体は震えている。相当、怒っているよ。
「お主はどうやって強くなったのか、教えてくれ!」
「へっ!?」
マオサの頬が赤らんでいる様子はなかった。その代わりマオサは目を輝かせている。
「スキルだよ。」
マオサは僕の返答に少し残念な顔を浮かべた。
「儂の練り上げた最高傑作だったのだが、あのようにいとも簡単に破られるとは思わなかったぞ。」
「あの時はここを作った時の事を思い出して、大切なものを壊されちゃうと思うとカッとなってしまったんだよ。」
僕が申し訳なさそうに言うとマホがジッと見てきた。
「マオサ様は誰に殺しの依頼をされたのですか?」
マホがより冷たい視線をマオサに向けてくる。
まるでなぜ断らなかったのか、と責めるようだった。
マオサは気にしないように説明し始めた。
「確か商業の国コーメラスの王だとか言っていたな。その後、つらつらと話していたので聞き流していたが。」
マホは嫌そうな顔をした。
「僕を殺せなかったけど、大丈夫なの?」
マオサは少し驚いた顔をした後、笑い始めた。
「愚門だ。あんなのにやられるほど腐っていない。」
マオサは自信満々に答えた。
「ここからは僕たちの仕事だね。」
「僕たちではなく僕のですよ。キータ。」
僕の言葉にマホが突っ込み。
僕は魔王と仲良くなった。
次回予告~
魔王との一件の後始末を行い、やっと終わったと思った。
前書きに書いた通りです。
お楽しみに