海の平和 キータの一歩
前回のあらすじ~
海に巻き起こった一連の騒動に対して、キータが行った行動によって収まるかに見えた。
しかし、まだ収まらない深海族の怒り。
果たして、どうなる!?
そして、キータが歩む。次なる一歩とは!?
娘のカイは床に崩れ、絶望している。母親がやっていたこと、母親と周りの人達が連れていかれた。
国の事を考えるとお先真っ暗なのだろう。
「あげます。」
マホを通じてカイに饅頭を渡した。
「母親があんな事になったけど、私たちは全力でサポートしますから。」
カイはガバっと顔を上げて、泣きそうな表情になった。
マホにその場から離れるようにお願いをして、走ってその場から離れた。
後ろから啜り泣く声が聞こえた。
翌日、オールとカイは玉座の近くで話し込んでいた。
「何を話しているんですか?」
マホが二人に聞くとどうやら、深海の国に行き、謝罪をしに行くようだ。
「母の行ったことは許されることではないです。私自ら謝罪したいです。」
オールとマホは終始戸惑っていたけど、カイは意思を貫いた。
カイは決まったら早くて、すぐに深海王のディープの元へ向かった。仲介者として僕たちも同行した。
深海王ディープがカイを禍々しいオーラを纏って睨んでいる。カイはそんなディープを真っ直ぐな目で見る。
「母や水の国民がディップの国民が行った事、申し訳なかった。私の事は好きにしてもいい。しかし、国民には手出ししないでください。罪は私、国を治める者のみが負うべきですから。」
「お主だけではこの怒りは収まらん。」
「私たちの国民を傷付けるなら、私は死んでもこの国に崩壊をもたらします。」
カイはディップを睨みながら真っ直ぐに見る。カイの表情は覚悟が決まっている。
僕は背筋が凍った。カイの強気な姿勢がディップにどう映るか、怖いから。
「覚悟はできているのだな?」
「そうでなけば、私はとっくに逃げています。」
緊迫した空気が流れる。それを破ったのはディップの鼻が笑った音だった。
「それではお主を殺す訳にはいかぬ。水の国の国民を殺す奴らもいると断言できるのだからな。」
カイは静かにディップを睨む。
「それではお互いに滅んでしまう。だからな、同盟を組まぬか?お互いを支え合い、お互いの国民が酒を飲み交わせるようにそうあの頃と同じように……な?」
ディップはカイに微笑みかけ、手を差し伸べてくる。
「まったく、そう言われては断れないですよ。」
カイはディップに釣られて笑い、ディップの手を握る。こうして、水深同盟が結ばれた。
この瞬間に僕たちはやっと胸を撫で下ろした。
帰り道の途中で人魚の国へ寄って王に会った。人魚の国王も深海族を残酷に殺したから、闇の国へ葬った。そのことを人魚の国民に告げると歓声が飛んだ。
オールはお祭り騒ぎの人魚の国を何かを探すように彷徨う。
そしてオールが立ち止まったのはひっそりと構えたパン屋だった。
「あのー、この店に何か用ですか?」
オールはエプロンを着た女性を指差して笑う。
「お名前は何ですか?」
「ブレッドですが……」
「ブレッド、貴方は女王になり、この国を導いてください。」
その場にいた全員が動きを止めた。
「貴方は神の国の方ですか、なぜ私なのですか?」
「貴方が女王になる未来が見えたからです。」
オールはブレッドを口説き落として、女王にすることができた。
「いつか、キータと言う者が訪れます。その時は笑って出迎えてください。」
マホはそう言うと人魚の国を去った。そして、海を出た。
僕は久しぶりに外に出て背伸びをした。空は茜色に染まって星が薄っすらと光っている。
「キータはどうするんです?」
僕は悩んだ後、茜色に染まった海から一つの答えが出た。
「国を作ろうと思うよ。」
マホとオールは目を大きくする。
「本当に作るのですか?」
マホが冷たいトーンで訊いてくる。
「うん。他の国を止める国を僕は作りたいと思う。」
僕たちに少し強い風が吹く。
「それはこちらとしても助かりますが……」
オールは言葉に詰まる。
「僕は全ての国が平和になるために国同士のいざこざを仲介する国を作りたい。」
「国名はどうしますか?」
マホは僕に微笑みかける。
「母星の護国マイスタープロテクト王国かな?」
オールは溜息を吐き、諦めたように僕を見る。
「どこに開国する気ですか?」
「僕らの原点かな~。」
マホとオールは呆れたように溜息を吐く。
「急ですね。」
「まったく、忙しくなりますよ。」
二人は愚痴をこぼしながら、どこか嬉しそうな顔を浮かべる。
僕たちは一歩を踏み出した。あまりに大きな一歩を……。
次回予告~
キータが作ろうとしている国マイスタープロテクト王国を村の皆は受け入れるのか!?
そこで巻き起こる騒動が!?
次回もお楽しみに