水の国 正義と悪
前回のあらすじ
海の中に案内されたキータ一行そこで出会ったのは女王リアとその娘カイであった。
その二人の国は深海族の脅威が迫っていた。
キータ一行はどうするのか?
「深海の王?」
僕は急な依頼に戸惑いが隠せないでいた。
すると、見かねたカイがリアの前に来た。
そして、カイは口を開く。
「このことについては私が、海の世界は最初、水の国が全て支配していました。しかし、一部の市民が反乱を起こし、更には別の種族同士で戦争が起こりました。その結果、水の国、深海の国、人魚の国、海賊の国に分かれてしまいました。
そして、最近のことです。深海の国が他の国を侵略し始めた、と人魚の国から報告を受けたのです。」
カイが地図を魔法で出し、マホに差し出す。
空間魔法“見える目”
マホの魔法でこちらにも映し出されている。そこには何処が同盟を組み、何処で争っているかが書かれていた。
「そこで私たちも戦おうとしたのですが、水の国と深海の国では軍数も戦力も桁違いでとても相手に敵わないのです。水の国の最強の武器であるポセイドンの槍はあるものの、深海族は夜に戦うことが多く、敵を倒すのに手こずっていて他に手はないかと思っていたところに。」
僕たちをカイが指差す。
「僕たちが来たので一緒に戦おうと?」
カイは頷き、藁にもすがるように尋ねる。
「引き受けてくれますか?」
答えは決まっていた。
「分かった。それで深海の王を倒せばいいの?」
こうやって、話せているのもマホの
空間魔法“自由なる声”のおかげだ。マホにばかり負担を掛けている状況はよろしくない。だから、早く終わらそう。
「そうですね…。深海の王と幹部たちを倒してくだされば軍隊は混乱し、すぐに勝てると思いますが…。」
その言葉で十分だよ。
「よし、マホ。早速だけど行こう!」
「そうですね。私も早く帰りたいので。」
二人で話しているとカイが話に入ってくる。
「待ってください!それなら私も!」
僕たちに訴え掛けてくる。
「カイさんたちは水の国の最後の要として、水の国を護っていてください。」
カイは不服そうに頷き、護衛を強化するよう軍に指示した。
「それじゃ、行ってくるね。」
カイたち見送られ、マホの
空間魔法“自由なる者”
で深海の王の所へ行った。ファレとイトはこんなことが起きているとは知らずにぐっすり眠っている。
向かってから10分程で着いた。ちょうど、会議でもしていたのか、王も幹部らしき者も勢揃いだ~。
マホが
万能魔法“水無き魚”
で一気に倒そうとしていたのを止めさせて、深海の国の事情を聞くことにした。倒すのはその後でも間に合う。
彼らに近づき、攻撃された。
水魔法“水の矢”
を何千人で打ってくる。あまりにもしつこく打ってくるので、
水魔法“水晶”
をマホが全身を覆うように広げ、そのまま王の元へ進む。幹部たちが近づくにつれ焦ったのか、
水魔法“水龍の舞”
水魔法“渦龍の怒り《アングリーバテックス》”
を繰り返すが、水晶は水魔法を受けることで吸収し防御に使うため、受ければ受ける程、防御力は上がるようだ。
王は左腕を挙げ、攻撃を止めさせた。そして、重い口を開く。
「お前は何者だ?」
僕は場を和まそうと少しふざけることにした。
「あ、あ~マイクテスト、マイクテスト、よし、僕は無の童長でこの家は僕の仲間でマホと言うんだ。家の中からすみません。生憎、沈むことしかできないものですから。」
深海の王は鼻で笑う。
「ほう、お前が…。で、その童長さんが何のご用だ?」
殺気でピりつく。
「水の国の女王リアがお前に困っているから。どうにかしてくれと頼まれて、手っ取り早いのが王と幹部を倒すことと言っていので倒しに来た。」
マホに話している間に
封印魔法“空かずの部屋”
で全員の転移を防ぎ、閉じ込めた。
深海の王は気付いたように、こちらを睨めつける。
「小癪な!そこまでして、何を聞きたい。」
深海の王は冷静に僕の様子を伺う。
「なんで侵略し始めたの?」
「ふん、敵に教えることなど一つもない。」
深海の王の手から黒い炎が現れ、
精神魔法“永遠奴隷”
を放つがマホが
転換魔法“燕返し《フルカウンター》”
で深海の王の魔法を深海の王に返し、従順になった深海の王に聞いた。
「どうして、侵略したの?」
僕が聞くと深海の王はすんなりと答える。
「水の国が深海族を虐殺したと水の国にいた手下から報告がありました。それも軍隊ではない国民も…。
黙っているわけにはいかないと思い、人魚の国王に会いに行きました。ですが、そんなことかと言わんばかりに笑われて、そんなことどの国でもあると言われたのです。それを聞いて、このままでは国民の命が危ないと思い、戦うことになりました。」
国民のためか…。
「そろそろ、解除して。」
マホは不満そうに解除した。
「王の考えは分かりました。しかし、やり方が間違っています。そこで僕に考えがあります。いいですか…。」
僕たちは水の国に戻り、倒し損ねたことを告げた後、神の国に戻り、とあるものを調べた。そして、何ヵ月後、再び水の国の女王リアに会いに行った。
「女王リア!!深海族を虐殺したよね?」
女王リアの顔はキョトンとしている。
「何のことでしょう?」
僕は調べたことをマホの中から告げていく。
「定期的に水の国での死体数が異常に増える日があります。不謹慎ではありますがお墓の中を調べた。そしたら、深海族の死体が出たんだ~。それも何百とね。」
女王リアはまだ余裕の表情でこちらを見下ろす。
「言いがかりも甚だしい!そんなことは何の証拠もないですよ。キータさん。」
ここで白状すれば良かったのに仕方ない。
「だ、そうですよ。」
扉がゆっくり開き、光が照りつけてくる。
「最後のチャンスだったのに、残念です。」
現れたのはオールだ。これには女王も側近たちも驚きを隠せないでいた。
「女王リア、はじめまして、オールです。」
オールが深々と頭を下げるとリアはオールより頭を下げた。
「それでリアさんは何もしてないんですね?」
穏やかな笑顔でオールは言うとリアはブンブンと前後に頭を振る。
「はい!この方がひどい言いがかりを…。」
オールは
記録魔法“転写”
で映像を流す。
「では、これはどういうことだろう?」
その映像では深海族が鎖で繋がれており、何十人といる。そんな人々に罵声を浴びさせ、嘲笑いながら痛めつけていた。深海族の泣く声、傷みに耐えきれず叫ぶ声、肉や骨が切れる音、血が出てくる音が聞こえる。あまりにもひどい仕打ちに耳を塞ぎたいが、それをグッと堪える。女王リアは焦り、汗を流し目は泳ぎ、口はアワアワしている。
オールは映像を止め、僕が尋ねる。
「これでも言い逃れできると思いますか?」
「私は知りませんでした。きっと深海族に恨む人々がやったんですね。なんてひどいことを。」
女王リアは自分のことしか考えられないようだ。
「では、続きを見てみましょう。」
映像を再生する。すると、外から現れた女性がいた。そして、深海族を背中に集まった人々を見る。
その時、顔がしっかりと映る女王リアだ。
女王リアが崩れるように床に座りこむ。映像を止める。オールが腰を下ろしリアに囁く。
「あなたがなぜ、それをやったか。知っています。でも、今、やっていることは貴女が受けた傷よりも深い。その罪を地獄より苦しい闇の国に行って償って下さい。」
「オール様、すみませんでした。どうか、命だけは許して下さい。」
オールの肩を揺らし訴える。
「そう言っていた人たちをどうしましたか?」
リアは力が抜けたようにペタリとへたりこみ、あ~!!と叫んだ。
「お前のせいだ!!お前のせいだ!!」
僕の方を指差し罵ってくる。その時、黒いシミのようなものが大きくなってリアがそこに沈んで行った。最後まで見送るとオールは後ろの方を向き、不気味に笑う。
「次はあなたたちです。女王と一緒に楽しそうに殺していた皆さん♪」
オールが指をパチッと鳴らす。すると、空飛ぶ悪魔が映像に映っていた人たちを連れていった。
このことを因果応報というのだろう。
次回予告
女王リアの悪事を暴き、水の国の闇は消えた。しかし、深海の国と水の国にはまだ、問題が残っていた。
娘カイとオール、キータ一行はどうするのか!?
次回「水の国 謝罪と再建」