表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
後宮のインチキ占い師  作者: 寄付
呪いの幽霊
4/19

呪いの幽霊 3



(ええと…)

自室に戻った雪英シュウインは、遅めのおやつを頬張りながら頭の中を整理する。



『呪い』の噂を誰も知らなかったのは偶然だろうか?

依玲イーリンたちが知らないとなると、情報の速度というよりは、紅梅宮だけで広まっていると考えるのが普通だが。


噂がそこまで広まってないのは、呪われた人が居ないから?

(……いや、)

この場合は、呪われた者が実際に居てはならない。実害が出ては、「事件」として広まっているだろう。


そもそも、『幽霊』の存在に怯えているという紅梅宮の女官にのみ『呪い』の噂が広がる理由は?

恐怖心だって噂を広める一因ではあるが、本当に恐れていたら口に出すのも躊躇われていくものだ。

いつだって、噂を広めるのは面白がっている人間なのである。

仕事への影響も出ている中、噂を止めるような自制心は紅梅宮内に無いのだろうか。


(………となると)



幽霊と、その呪い。

一人分多く申告された女官。

伏せっている李妃、減った食費。

李妃からの依頼。

後宮に入ってきたばかりの后妃。



李妃様が、『イー先生』に言ってほしい言葉は何だろうか。



(まあ、今夜になったら分かるか)




———————————————




そして夕餉の時間。

雪英は食堂に居た。


「そうだ。昨日の夜、紅梅宮の子が易先生に相談に行ったらしいよ。耐えられなくなったって」

「そうなんだ」

仕事中に仕入れたであろう最新のゴシップを、依玲が話す。



「あそこも大変だよね、もうすぐ皇帝帰ってくるのに」

「そうだね」



一年近くかけて南方遠征に出ていた皇帝がもうすぐ帰ってくる、とふた月ほど前に伝令があった。

李妃からすれば、あちらで見初められて以来の再会となるだろう。


『幽霊』の噂話も、半ば皇帝不在が故に可能だった嗜みであって、後宮の主である皇帝が帰ってきてからは、后妃に関する噂話は気軽に出来なくなる。

后妃の悪い噂は、皇帝からの渡りに直結するからだ。後宮では人の噂が最上の娯楽と言えど、皆そこまでの責任は負いたくなかった。


『皇帝の居ぬ間に悪事』、これは階級にかかわらず後宮内の鉄則だった。

…………

………


(ああ、そういうことか……)

雪英はまた一つ、この『幽霊』騒動を理解するための鍵を手に入れた。




(でも、この調子だと明日には『呪い』の噂も広まってるな…)


種を蒔いたのは、他でもない雪英自身だ。

(……まあ、良いか)



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ