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後宮のインチキ占い師  作者: 寄付
恋を招く石
17/19

恋を招く石 9



息を切らした不審な三人組が、后妃の一人、李妃の住まう紅梅宮の前に居た。


「どちら様ですか?」

「李妃様にお会いしたく参りました」


「どちら様でしょうか」


有能さ、というのはどこから生まれるのだろうか。

医務局の奴らとは比べ物にならないほど落ち着いた態度、不審な人物にも負けない毅然とした応対。

(よく躾けられてるな…)


よく躾けられているがために、厄介だった。


「筆頭侍女、居ますか?」

「はい」

「そちらに伝えていただければ、通してもらえると思います」

「「え?」」


「(雨辰ユーシンさん!私たちのためなのは分かりますけど…嘘はだめです!)」

雪英の耳を引っ張って、雲花ワンファが言う。

「まあ、落ち着いて」



「何を、お伝えしましょう」

「あの女官が、『桃を食べに来た』と」

「え、私?」

雲花が間抜けな声を上げる。


「承りました。少々お待ちください」


受付の女官は、奥に引っ込んでいった。


「「……」」




「ど、どういうことですか、雨辰さん!ここって、紅梅宮ですよね⁉︎」

「そうですよ!僕、どうしてここまで連れてこられたんですか?」


女官が見えなくなった途端、雲花と若い宦官が騒ぎだす。

(どう説明したものか…)


「ええと、その前に。君、名前は?」

沐陽ムーヤンです」

「沐陽ね。うん、覚えた」


「……」


「ああ、忘れていたね。私は雨辰」


「……」



「「誤魔化さないでください!!」」

「…いやあ、はは」



「随分と楽しそうだな」


(…え?)


低い声に振り返ると、医務局の宦官が一人立っていた。




———————————————



「「(雨辰さん!!)」」


雪英は二人を背中に隠す。

彼女が睨むと、宦官の目尻は垂れ下がり、口角は下品なほどにつり上がった。


「ああ、…ここまで来たのですね」

「ははは、余裕だな!当たり前だろ、お前らなんか逃げる場所も無い」


「しかし……、それで紅梅宮か?ははは!!厠にでも逃げた方がまだマシだろうに、そんなことを考える頭も無いんだな」

宦官は大きな口を開けて笑う。


「その言葉、そのままお返ししますよ」

「は?」


「貴方は、一人だけで私たちを追ってきたのですか?」

「心配しなくても、俺の後を追っていたやつがすぐ迎えにくる」


「来ないでしょうね」

「ははは!それはなんの虚勢だ?いいからこっち来い、李妃様の手を煩わせるな」

宦官が、端にいた沐陽の腕を引っ張る。

彼は反射的に抵抗したものの、その後困ったように雪英の顔を見た。


「沐陽、大丈夫。行かなくていい」

「なに?」

沐陽はその隙に宦官の手を振り解いた。


「まだ分かりませんか?」

「何だ」

「貴方はもう、あの医務局長から切られてますよ。用済みです」

「…ふざけたこと言ってんじゃねえ!!」


「本当ですよ。医務局に帰ってみればいい」

「…はは、そういうことか」


「そんなんで俺が帰るとでも思ってんのか?お前、威勢の割に本当に頭足りてないんだな」

「はぁ……」


「私たちは三人です。いくら貴方の体が大きくても、一人で三人を連れて帰れると思ってるのですか?それとも、貴方の上司はそんな単純な計算も出来ないと?」

「っ、うるせえ!!俺はそう命令されたんだよ!」


「貴方が命令されたのは、『戸口を閉めておけ』だけでしょう?私のことを散々馬鹿にしていましたが、貴方こそ、簡単な命令も聞けないんですね」

「黙れ!!!」


「では連れて帰ってみてください。まあ、沐陽一人に抵抗されているような力では無理だと思いますが…」

「…っふざけんじゃねえ!!おい!お前!!!」

宦官が沐陽を睨みつけ、大声を出す。


「沐陽って言うんだな。へへ、さっさとこっち来い。お前の家族、どうなるか分かるよな?」


(そこは力で勝負しろよ…)


袖を掴む沐陽の手が震える。


「大丈夫、全ては力が解決するから」

「……え?」

「ごたごた言ってんじゃねえ!!早くこっち来い!!」



「あら、お邪魔でしたでしょうか?」



「「え?」」

(…やっと来た)


朱雀よりも強いのではないかと思える守護神。

紅梅宮を守る筆頭侍女が、雪英らの元へ到着したのだった。



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