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魔法召しませ

氷雪城の花婿

作者: 黒森 冬炎

 彼女は息を呑むほど美しい子供だった。鼻筋が通った陶器人形のような顔立ち。凍った湖のような神秘的な蒼い瞳。雪を飾った山茶花のような控えめでありながら華やかな唇。


 細く弧を描く眉は艶やかな錦糸の刺繍を思わせ、同じ糸が房を作って上品に下ろされた瞼を縁取る。目元は優しく切長で、上がりも下りもせず調和を保っていた。


 その指先はたおやかに桜貝のような爪をして、子供らしいフリルのついた薄紅色のドレスを摘む。同じ色で誂えられた繻子の靴は、小さく細く優雅に引かれる。


「ご機嫌麗しゅう、オズワルド・ルドルフ・モハー=サントムーン王子殿下」


 7つの歳に似つかわしい高い声で、その子供は挨拶をした。私は10歳になり、伴侶を選ぶガーデンパーティーに臨んでいた。


「御目文字嬉しく存じます」


 はっきりとした発音でゆっくり話す姿は、周りの大人を称賛のざわめきで満たした。


「黄金卿キリアン・ハンス・メディバンが息女、リリアン・エディス・メディバンにございます」


 最後まで気品を保って挨拶を終え、少女は次に控える10歳のジーナにその場を譲る。



 ジーナ・フィデス・ウッドは幼馴染である。陽気な大臣メテオ・キース・ウッド氷雪卿の一人娘だ。一人娘なので跡取りである。わがモハー朝サントムーン王国は血族実力主義相続である故、適当にサボっておけば長子である私でも国を継がなくて済む。そのため、伴侶候補に跡取りもまざっているのであった。


「ご機嫌麗しゅう、オズワルド・ルドルフ・モハー=サントムーン王子殿下」


 快活なジーナは、しかし愚かではない。大人の賛辞を独り占めにした1人前の少女に臆する事なく、しっかりとした態度で挨拶を終えた。



 挨拶の列が途切れ、子供たちと付き添いの大人たちに軽食や飲み物が振る舞われた。私はジーナのミント色をしたドレスの背中を目で追いながら、7歳から10歳までの候補者たちと雑談をする。


 私の暗い金色の巻毛は金茶の瞳と合わさると、毛むくじゃらの子犬のようだ。それが親しみやすいのだと乳母に褒められたことがある。そんなものかと私は思う。


 ジーナは持ち前の明るさで、候補者の兄弟として出席した少年たちにも気持ちよく対応している。彼女の笑顔を見ているだけで、私の心は温かになる。


(おいこら、なんだあいつは)


 私はジーナと日々冒険をしているので、騎士団の連中が使うような荒っぽい言葉も知っている。むしろその方が好きである。ジーナの継ぐ北国は、首都よりはるかに粗暴な人々が住まうという。私も今から練習しておかなくてはならない。


「ジーナ」


 美しい銀のアラザンで飾られたライムグリーンのマカロンが、ジーナに差し出されている。そいつは、貴女の瞳のようなこの美しいお菓子をどうぞ、とか抜かしやがったのだ。遠耳の魔法でちゃんと聞いていたんだ。


「殿下」


 ジーナが受け取ろうとした手を下ろす。流石に王子の前で、ものを受け取りながら受け答えは出来なかろう。誰かの弟らしき6、7歳のブリュネット小僧は不満そうに口を曲げた。おいこら、不敬であるぞ。


「ミストファングの花が咲きましたよ」


 私はよそゆきの声を出す。ジーナは鮮やかな微笑みで応えてくれた。黄金卿メディバンの息女が、取り巻きらしき子供の群れに(いざな)われ、さりげなく私の方へと近づいてくる。


(あの手の奴は自分からは来ないよな)


 人の流れに乗ってくる。命令しなくても周りが上手く取り持つのだ。彼女は気高くあれば良い。稀に見せる優しげな笑みは、多くの人の心を掴む。


 黄金卿の領地は南の山岳地帯だ。これまで首都には来ていない。このガーデンパーティーが終われば、暫くはまた領地から出てこないだろう。それであれだけの子供を魅了しているのだから、大したものだ。



「お手をどうぞ」


 私はジーナの手を取って、素早くしかし慌てずにオズワルド王子庭園に逃げ込む。そこは私だけの庭園だ。


「ちょっと!マナー違反よ!」


 公式の場では反抗出来なかったジーナが、会場の隣にある小さな庭で夕焼け色の眉を吊り上げる。魔力エリートの証、100年に1人といわれる赤毛の麒麟児。それがわが宝玉ジーナだ。


「貴方の王子妃選びパーティーでしょう!」

「もう決まってるから必要ないよ」

「無理よ。2ヶ月歳上ですもの」


 本来なら僅かであっても歳下だけが対象だが、ジーナは私が父王とジーナの父大臣に頼み込んで参加が叶ったのだ。つまり、内定者なのだ。


「そんな慣例、知ったこっちゃないよ」

「オズワルドは王様になってよ」

「いいよ。ジーナなら氷雪卿と王妃の二役を簡単にこなせるからね」


 ジーナが望むなら、サボるのやめよう。


「そこまでは出来ない」

「ジーナ?さっきのマカロン野郎」

「違うわよ」


 ジーナは緑の瞳を決意に燃やし、私の金茶の瞳を覗く。


「私は北の大地を守る氷雪卿になるの」

「俺はジーナの隣に居たい」

「何を言うの。貴方の価値はもっと上よ」


(適当にサボるような奴が国を引き受けられるかよ)


 ジーナが望むなら頑張るけれど。



「あにうえ」


 思いがけない場所から声がした。背の高い花木の影から末姫グローリアが現れる。


「グローリー?」

「ごあんしくだしゃい、世継ぎ(よちい)はあたくちめが」


 鼻息荒く胸を張る。こいつはまだ4歳だ。教師どもは天才だと持て囃すが、どうなることやらわからない。この国は女王でも統治できるので、飽きずに目指して欲しいものだ。


「頑張れよ」

「おまかしあえ」


 お任せあれとは頼もしい。


「だってさ、ジーナ」

「私はオズワルドが王様だといいと思う」

「まだわからないよ」


 10年、20年、いや一生かければ説得できるだろう。気長に待とう。


「お后様には黄金卿のご息女が」


(まて)


「とてもお似合いよ」

「ジーナ!俺の気持ちを知ってるくせに」

「あなたは氷に相応しくない」


 ジーナの赤い睫毛の下で、ライムグリーンの瞳が苛烈に燃えた。その凛々しさに惚れ惚れとする。


「ジナしゃん、ひかえよ。女王はあたくちでし」


 威厳すらある4歳児は、声に威嚇の魔法を乗せた。私もジーナもその魔力に圧倒されて跪く。



 3人で会場に戻ると、一つ下の弟エドワードと黄金卿息女が手を繋いで花のベンチに座っていた。物静かなエドは、完璧な息女と並ぶとさながら一幅の壁掛け(タピスリ)のようである。


「非の打ち所の無いカップルね」


 会場の隅で、ジーナが小声で言った。私は黙って頷いた。




 ※※※




「ジーナ!結婚してくれ!」

「あんた、懲りないわねー」


 吹雪の吹き荒れる北の大地を死ぬ気で渡り、私は氷の城に来た。あれから6年経つけれど、いまだに何故ジーナが私を拒むのかわからない。

 彼女は魔法のゲートでしょっちゅう王城に遊びに来る。相変わらず仲は良い。友達としか見られていない?そんなことはないはずだ。


(マカロン野郎に向ける目と違う)


 あの日ライムグリーンのマカロンを厚かましくも私のジーナに差し出した小僧は、今でもしつこくアプローチしている。もちろん邪魔しに行くが。


(ジーナも同じ気持ちの筈だ)


 私の成績はそこそこだし、見た目も磨いていない。ジーナの好みだけは気にして、あとはお世話係に任せきりだ。女性の喜ぶこともわからない。ジーナのご機嫌取りで手一杯である。だから当然モテない。王子ではあるが、お友達要員だ。


 私はジーナ一筋だし、ジーナも私しか見ていない。と思う。それなのに、オズワルドは氷に相応しくないとの一点張りだ。


 世継ぎは早々にグローリアと決まり、完璧令嬢リリアンは上品王子エドワードと縁組された。私たちに障害は無い。



「オズワルドは氷に相応しくない」

「氷の魔法も頑張ったぞ!」

「だめよ!危険すぎる」


(きけん?)


 大声の魔法を使い、高い尖塔の窓辺にいるジーナと叫び合う。私は門衛に止められていたが、遠目で見えるし遠耳で聞こえるし大声で叫ぶから問題ない。世継ぎでなくとも王子に不敬だとか、面倒臭いことに使う時間はないのだ。1秒でも長くジーナと話していたい。


「開門せよ」


 氷雪卿の伝声魔法が城門に届く。


「近所迷惑である!」


 この凍った大地には、氷雪民族という原住民が住んでいる。領民は氷雪卿の城周辺に村を作り、氷雪民族と仲良くしながらこの地に眠る無尽蔵の氷の力を分け合っている。多くの王国民には夏しか興味を持たれない雪と氷を、熱烈に愛する人々なのだ。


 そして彼らは粗暴で野次馬根性丸出しだ。今も原住民と王国民が連れ立って城門の騒ぎを取り巻いている。中には、両者の異民族カップルが情熱的に抱擁しながら出会いの頃を懐かしんでいるのまでいる。



 見かねた氷雪城主かつ大臣のメテオ・キース・ウッド氷雪卿が私を中に入れてくれた。大臣は魔法のゲートで毎日王城に出勤してくる。今日は休日で、たまたま居城にいたようだ。


 ゲートは城主一家しか使えないため、王族であろうと訪問は常時ブリザードの吹き荒れる雪原を越えてくる。つまり、こちらから出向くのは他の諸地域にもまして異例の出来事なのである。



「大臣」

「なんでしょう」

「危険とはどういう意味ですか」


 私は率直に聞いてみた。


「氷雪城主の伴侶となるには、氷の試練が必要なんです」

「受けます!」


(今すぐにでも)


「だめよ!」


 悲鳴と共にジーナがワープしてきた。自室と応接間を繋ぐゲートがあるらしい。しかし、こんな恐怖の表情はこれまでに一度しか見たことがない。




 あれは、5歳の時のこと。2人が初めて出会った西の大森林の奥、魔窟と呼ばれる深く暗い洞穴の中だった。

 私は、王宮図書室の植物図鑑に載っていた幻の魔法植物を採集に行ったのだ。その頃はまだジーナと出会う前だったから、何をするにも全力で取り組み天才の名を欲しいままにしていた。その日も実力を隠しもせず、操作が難しい魔法の馬で魔窟を目指した。


(結局、大賢者の称号も魔法帝の称号もグローリアが拝受したけどな)


 あのまま精進しても、グローリアの足元にも及ばなかっただろう。6歳下の妹姫は、空前絶後の存在なのだ。100年に一度の麒麟児ジーナよりも更に燃えたつ焔の赤毛を持って生まれた、次期女王なのである。


 とにかくそんなわけで、私は幻の魔法植物ミストファングと対峙した。それは、銀色をした釣り鐘型の花が吐き出す霧を牙として襲いかかる植物だ。襲われると獣に噛まれたかのような傷が出来る。花の無い時には、舟形で濃い緑色を輝かせる葉の先から霧を飛ばす。効果は花よりも弱いが、それでもかなり痛い。


 私は慎重に魔法の盾を展開する。そこへ、氷のかけらを撒き散らしながら赤毛のちび魔女が突っ込んできたのだ。


「君!邪魔をしないでくれたまえ」

「はあっ?なにアンタ」

「サントムーン王国長子、オズワルドである」


 私は子供マントの背中にある太陽と月の組み合わせ紋の刺繍を見せつけた。


「あ、あ、ええと、その」


 少女は驚き、適切な挨拶を失念したようだ。その様子があまりにも可愛らしく、私は柄にもなくときめいてしまった。


「いや、よい」


 気を取り直して魔法の盾を再び展開する。魔法の炎を纏わせた剣も構えた。


「あの、殿下。それ、ちがいます」

「え?」

「ミストファングは臆病なんです」

「臆病?」


 しかし、アドバイスは遅かった。霧の牙は魔法の盾を割る。5歳が7歳レベルを作れるからと褒められて良い気になっていたのだ。所詮は子供の盾。


「だめーっ」


 赤毛がふわりと舞い上がる。なんだか素敵な香りがした。ライムグリーンの瞳が恐怖を宿して私を見つめる。覆い被さる少女を抱えて、私は横に転がった。辛くも霧の牙を避け、少女を助けて立ち上がる。


「ごめんなさいっ」


 少女は泣きながら魔法植物に謝った。


「怖かったよね?」


 ミストファングは茎をゆらゆらしながら様子を伺っている。


「お願い、仲良くなろう?」


 少女は魔法の氷でミストファングの形を作る。少女の掌に乗るミニチュアだ。


「あげる」


 ミストファングは葉を持ち上げ、包むようにしてミニチュアを受け取る。少女は嬉しそうに笑った。薄暗い魔窟に太陽が射したようであった。

 私の胸は高鳴った。この笑顔のためならなんでも出来ると思った。


 ミストファングはしばらく花をミニチュアに向けていたが、やがて静かに氷の像を下ろす。それから徐に同じ株の別の茎を震わせた。そこには枯れた花があり、中から種が溢れでた。棘もなく丸く、大きさは子供の拳ほど。すべすべして硬い灰色の種だった。


「ありがとう、大切に育てるね」

「君の仲間を増やすと約束する」


 ミストファングの種は万能薬の材料になる。増やせれば国の為にもなるだろう。図鑑によれば、花を咲かせるには大量の魔力が必要で、太陽の光を浴びると枯れてしまう。魔窟には沢山の魔法生物がいたから、洞窟の中に膨大な魔力が溜まっている。ミストファングにとっては願ってもない環境なのだ。


 私は王城に小さな庭園をいただき、人工の洞穴を作った。魔力は天才児2人分でなんとかなるだろう。


「一緒に育てよう。君、名前は」

「ジーナ。氷雪城のジーナよ」


 私は素晴らしい宝玉の名を知った。




 そして11年の月日は流れ。今私は氷の魔宮に独り立つ。私の本気を大臣に認められ、求婚の試練を受けることが許されたのだ。



 今までいくつもの冒険をジーナと共にこなしてきた。海底神殿の髪飾りや、火山宮の火袴だって手に入れた。


「そんな所は氷の魔宮とは比べ物にならないわ」


 氷耐性だって極限値まで上がっている。


「若者の極限値なんてたかが知れてるのよ」


 まだ見ぬ先があると言うことか。


「行ってくるよ」


 氷の魔宮の最奥にある氷竜(ひりょう)の玉座から小箱を開いて中身を持って来るのが目標である。


 第一の試練は門だ。目の前にある入り口の門扉は、人の背丈の10倍はある。遥かな昔、氷の巨人が建てたそうだ。


「オズワルド」


 いつも明るいジーナの顔が不安で曇る。


「大丈夫」

「でも」

「もう相応しくないなんて言わせない」

「ごめんなさい、でもやっぱり」

「信じろ!」


 私はついにイライラして叫ぶ。ジーナはキョトンとして緑の目を丸くした。


「可愛い」


 あまりの愛らしさに思わず呟くと、赤毛の魔女は髪の毛に負けないくらいに顔を赤くした。


(求婚に成功したらキスしよう)


 心に固い誓いを抱き、私は門に刻まれた巨人の呪文を読み上げる。城主一門が見守る中で、程なく巨大な扉は開く。音もなく、冷気も漏らさず。



 第二の試練は氷の槍道だ。出鱈目に飛び出す氷の槍を交わして進む。

 第三の試練は氷の玉だ。無数に分かれた氷の通路や上がり下りする狭い氷の階段に突然転がり出す大玉は、分解して氷雪城付近の雪原に送る。

 第四の試練は毒の吹雪だ。紫の吹雪が渦巻きながら大広間を満たす。特に問題はない。氷雪城訪問で越えた吹雪の氷野に毒が加わっただけである。視界を確保して解毒しながら前を向く。


 第五の試練は氷の狼だ。大広間の扉を開けると、そこは氷樹の森だった。氷の狼は群れでやってくる。透明なのと炎で解けず砕けもしないのが厄介だ。仕方ないので総て避けて先を急ぐ。

 第六の試練は凍った棘だ。森の湖を取り巻く木々には棘のある凍った蔓植物が絡み付いている。凍った蔓は締め付け切り裂き氷の狼を捕食していた。私に向かって伸びてくるその蔓は、炎を纏わせた剣で案外簡単に断ち切れた。


 第七の試練は氷の碑だ。棘のある凍った蔓を焼き払いながら、湖の中州島に渡る。船はないが、薄氷を歩いて渡るのは初歩的な氷の魔法だ。

 島の中央に建てられた碑文の謎も単純だ。古代魔法文字と古代氷雪民族文字が混ざっている。それぞれ取り出して並べ替え、発音してやれば良い。


「開け、道。雪と氷の。わが愛しき王の玉座へ」


 たちまち玉座が現れた。

 透明な氷で出来た氷竜の玉座は、座面でさえも人の頭を遥かに超える場所にある。軽く跳び上がり、安全を確認して座面に降り立つ。


 最後の試練は箱の解錠だ。魔法で探るが罠はない。ヒントもない。もう一度跳び上がり、風に乗って玉座をぐるりと一周してみた。

 氷で出来た椅子の背に、古の巨人と竜が仲睦まじく寄り添う姿がレリーフとなって飾られていた。


 背を縁取る部分には、碑文と同じに古代魔法文字と古代氷雪民族文字が刻まれている。


「春も溶かさぬ硬きもの。愛しき人の呼びかけよ。氷は雪と。雪は氷と。溶けぬ氷の心は開く」


 再び座面に帰った私は、愛しさの限りを込めてその名を呼んだ。


「ジーナ!」


 たちまち小箱は蓋を開け、白銀の吹雪を噴き出した。気づけば私は一組の指輪を手にして立っていた。


 あの巨大な扉の前に。


 指輪は、白銀の台に銀青に光る四角い氷が嵌められたものだ。指輪を飾る魔法の氷は愛ある限り溶けることがないという。これは氷雪城主の婚姻指輪である。


 扉も破れよとばかりの大歓声が沸き起こる。この試練をかつて突破した先代の妻と当代の妻、つまりはジーナの祖母と母もその中にいた。誠に勇猛な一族である。



 喜び祝う轟きを浴び、赤毛が私に突進してきた。


「ジーナ!結婚しよう!」

「オズワルド!結婚しよう!」


 すかさず叫ぶ私に、愛しい人も叫び返した。私はジーナを受け止める。幸福に輝く緑の瞳は煌めく雪片に飾られて、いつにも増して美しい。私は胸に秘めた誓いの通り、優しく静かに、初めての口付けをした。



お読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 朝から「おまかしあえ」に胸を射抜かれております…… 「ごあんしくだしゃい」はなんとか耐えたのに…… かわいすぎか(←ピンポイントすぎる感想ですね
[一言] 楽しく拝読させていただきました。 お互いに惹かれながら、思いやる二人。 お見事なのがクライマックスでもなぞかけ。 これは力作だと思います。
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