00 登場人物
おかつ(with 玉藻前)
21歳。大沢宿領主の和華(元・尼僧)の片腕で家老格の女侍。九尾の狐・玉藻前と心身ともに一体化した半妖半人。顔以外の全身を毛が覆い、頭部に狐耳が乗り、脚は獣脚、九本の尾がある。剣の腕前は武蔵国最強級で、呪いの力は神獣・朱雀に匹敵していた。軍略・兵站の造詣も深い。人の恐怖心を糧に呪いの力の器を広げ、九本の尾から女性器の生気を吸い上げる。マニアックな惨殺魔。それらの面は領民に知られておらず、狐姫と呼ばれて親しまれている。大沢宿を堀部家の一大造兵拠点に仕立てた立役者。
おこう(with こだま)
17歳。劇中、呪いの潜在能力は最大。九尾の狐の変化である殺生石の小破片から復活したミニ九尾の狐・こだまが憑依しており、二重人格的。玉藻前とおかつに篭絡され、享楽的な性格。こだまの狐耳や九本の尾を可視化して、半狐にに見せることができる。力強さはおかつに劣るが、技・知力はおかつと同等、呪術のコントロールや威力はおかつを上回る。将来は朱雀も超える力量に達すると思われている。切れ者だが、軍師的な思考はおかつ任せで、直感で動く。
和華(with 空狐)
27歳。大沢宿の領主。妖艶な雰囲気をたたえた美女。田上城下の女郎宿の女郎だったが、年季が明けると西福寺の尼僧となり、住職の和同と夫婦になる。迦陵頻伽の化身と言われるほどの美しい声と大きな呪いの器で、式神の空狐も憑いている。清濁併せ呑む人格の持ち主で、おかつ、おこうさえなついている。おかつとおこうの凶暴な行動を収め、二人を配下に置くために還俗して領主・士分とされる。法力僧・仙術師として呪いの力もふるうし、声で人を操ることができるため、堀部家の上層からは警戒されている。
堀部掃部介忠久
35歳。氷室郡の国人で、氷室郡戦役で津山家に勝利し、田上郡も支配。『孫子』の一部を諳んずるほどの策謀家・軍略家で、稲荷明神の加護を受けた無銘神剣の使い手。呪いの力はほとんどないが、神剣を使えば、おかつ・おこうとも渡り合える剣技を繰り出す。神剣が戦い以外の「悪事」を拒絶するため、使い方に戸惑っている。娘・さえを幼い頃から管領家に人質に出し、一度は見捨てたが、生きていると知り、救援をおかつたちに依頼する。
さえ
13歳。管領家に人質に出されていた堀部掃部介の長女。管領による堀部懲罰によって起こった田上城合戦の前後に処刑されたと堀部家には思い込まれていたが、上杉憲政のおかげで生きている。気丈で、人を喰ったような言動が父親譲り。本来なら歴史的に無名の存在で終わるはずが、憲政にさまざまな影響を及ぼし、狐御殿の女たちとともに戦国史に名を刻むことになる。
上泉伊勢守信綱
26歳。上野国生まれの戦国屈指の剣豪にして兵法家、新陰流の始祖。本来の歴史なら箕輪長野家に仕え、その滅亡後に官職名を武蔵守に改め、諸国を放浪し、剣豪として天下に名を響かせるのだが……。前々作の田上城合戦で長野業正が討ち死し、その結果として起こった家内の分裂を切っ掛けに出奔。管領家の直臣となり、さえを庇護・監視するとともに、憲政を補佐・警護する。
上杉憲政
13歳。関東管領。本来の歴史では成人後に川越合戦で北条家に大敗を喫し、上野を追われ、越後の長尾景虎を頼り、上杉家の名跡と管領職を景虎に譲り渡す。作中では、田上城合戦で管領軍が大敗を喫し、家内も大混乱。若輩で政にも武芸にも身が入らず、無力感と厭世観に付きまとわれるようになり、早くも管領を投げたいという言動が続くが……。
まつ
15歳。元は津山の姫君で氷室郡戦役の最中の田上城中でおかつ・おこうに出会い、その後、母親ともども大沢宿に引き取られ、手なづけられている。呪いと剣術の厳しい稽古をつけられ、狐御殿4番目の女侍になるのも間近。おかつとおこうには、殺生石の破片の依り代にと期待されている。
りょう
13歳。大沢宿の百姓の娘だったが、母親ともども狐御殿に奉公に上がり、おかつ・おこう・まつに隷従させられる。呪いの力の器を見込まれており、まつと同様、呪いと剣術を厳しく仕込まれているが、修行に入ってまだ日が浅い。
長尾景房
25歳。白井長尾家の養子で、田上城合戦てで足利長尾家当主にして管領家宰の景長が戦死したことにより、長尾一族に適齢の後継者がないため、予期せず家宰に就任。上野内の争いの鎮定に東奔西走するが、収拾できず、憲政とも不協和音。いっそ憲政を幽閉し、管領家の乗っ取りをと考えているが、自分の立場に嫌気が差しているという点では、憲政と似ている。
高橋治五郎信広
34歳。元・津山家作事奉行。玉藻前復活のせいで大虐殺に陥った久保多村の事後処理を請け負った。そのせいで九尾の狐を討伐すべしと主張し、氷室郡戦役において閉門・蟄居。津山本家の滅亡に伴い、盟友の元・津山家郡奉行の山科亮助暁家ともども、九尾の狐討伐を継続している。
信然
28歳。常念宗の法力僧。和華の元夫で京に戻った和同が、信広の求めに応じて送り込んできた。夜叉を使役する。
堀部清次郎
3歳。堀部家の嫡男。まだただの童子。
新庄亮介為好
24歳。堀部家旗本。元は田上城下で父親とともに密偵として働いていたが、潜入した屋敷で、父親はおかつとおこうに惨殺される。氷室城に逃げ、士分に復帰し、氷室郡戦役にも出兵。父親の仇を討とうとおかつを狙う(R18版では登場していない)
(年齢の表記は、数え年。忠久、信綱の官名は自称)
上野・北武蔵要図(赤文字は堀部家傘下)