第1章「出会い」
寒い冬の日の中。雪が降った後の道に足跡をつけながら、途中で寄ったコンビニの袋を持ち先輩と帰路についていた。袋を持っている手とは逆の手に、ハッシュドポテトを持ちながら。
なんで買ったのか分からない。だが、衝動で買ってしまった。
そのことにほんの少し後悔をしながら、一口、また一口と口にする。
チラッと、見た先輩の横顔は、本当に綺麗だった。
何にも汚れのない、青年のような顔。
こっちが見ていることに気づいたらしく、マフラーで埋もれた顔をこちらに向けて、
「寒いね」
と言ってクシャッと笑ってきた。
(この時間が、続けばいいのに…)
そう思いながら、自分の赤くなった顔をさりげなく隠した。
桜がそろそろ散る頃。仮入部期間がきた。
放課後には校舎から校門までも、様々な部活が勧誘を始めていた。
「サッカー部に興味ない?とっても楽しいよ!」
「ごめんなさい。もう決めているので。」
スッと断り、自分で入学前から決めていた部活の活動場所に行く。
向かった場所は『演劇部』と書かれた紙が貼られている空き教室。
もうそこにはすでに、数名の1年生が座っていた。
自分も急いで空いている席に座ると、僕が最後だったらしく、教室の扉は閉められた。
何が起きるんだろうと恐怖と好奇心で胸がいっぱいだった。
目の前では、短い物語が披露された。短いながらも迫力があった。
(すごい…)
声、動き、全てを含めて楽しそうに演じている。演じることに喜びを得ている。
気がついたら、公演は終わっていた。拍手の後、真ん中に1人の男性が立った。
「1年生の諸君。入学おめでとう。俺はこの演劇部の部長。定本渉だ。この部活は文化祭、3年生を送る会。そして定期公演を行っている。毎週3回。1年生にも入部公演を行ってもらう。皆んなの
入部、心から待っている。」
(あの人…)
出てきた人は、自分が演技を好きになるきっかけの、文化祭でメインをやっている人だった。
その人が、自分にとって運命の人になるなんて、思わなかった。
えー柊白翔です。『忘れられない、あの日。』の連載を始めさせていただきます!
解釈によってはNL、BLと見えると思います。この作品では、いろんな想像ができる作品にしたいと思います。
李音のこれからの成長ぶりに、期待しててください!