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拙い文章ですがよろしくお願いします。
そもそもどうして前世の私が死んだのか。
……思い出せない。
前世の私が高校三年生の時に発売された乙女ゲーム「学園LOVEア・ラ・カルト」、通称「ラブアラ」。
主人公は高校の調理科に入学して、恋と勉強、それから料理の腕を上げるために大忙しの三年間を送る。
発売日に購入して、受験生なのに勉強そっちのけで夜更かしして、お母さんに怒られたっけ。
受験が終わってから本格的に攻略を始めて、全部のルートを見終わるまで一年以上かかった。
というのもこのゲーム、シナリオのボリュームが凄まじい。しかも選択肢が多く、状況によって台詞や発生するイベントが変わる。さらにはランダム要素も加わってセーブ&ロードを駆使しても周回に時間がかかるのだ。
しかし、それが私のやり込み勢としての魂に火をつけた。攻略サイトと公式ファンブックを端から端まで読み込み、執念で全てのイベントとエンディングを回収することに成功したのだ。
あの日のことを思い出すと、達成感と感動で涙が出る。
主人公の篠崎愛佳はデフォルトネームで、私は名前を変えずにプレイしていた。
デフォルトネームにこだわりがある訳では無い。理由は、主人公の友人・間宮優希、つまり今の私である。
前世の私の名前も「優希」だったのだ。
主人公の名前を優希にしてしまうと、会話の中で「優希ちゃん」と出てきた時にどちらのことを言っているのか紛らわしくなってしまう。
そうして私は「篠崎愛佳」としてこのゲームを楽しんでいた。