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手紙

 世界には8人の賢者がいる。それぞれ、火、水、木、風、雷、土、光、闇を得意とする魔法使いである。

 その力は絶大的であり、小国ならば滅ぼせるほどの力を秘めていると言われている。


 八大賢者の1人、

 《神風(しんぷう)》アリア・ゼラフィートは、

 風の大賢者である。

 彼女は、丘の上から西の空を眺めていた。


「やな風ね…」


 西から吹く風を感じ、呟く。

 普通の人からしたら、心地よく感じる風は彼女が見ると、全く心地よいものではなかった。

 血と涙の風。そして、怒り、恨み、恐怖などの負の感情が流れてくる。

 彼女はその風を不快に思い、自身の魔力を使い風を消滅させる。


「何が起きてるのかしら…」

「アリアさーん!村長が呼んでますよ」

「分かりました!今行きます」


 アリアは丘から飛び降りた。ゆっくりと静かに。


  ***


 王都脱出から2日後、今はマスルール王国との国境前の小さな村で休憩をしている。

 小さな宿に泊まっている。ベットと小さな机に椅子という簡素な部屋だが、馬車の生活よりは断然良い。


 ーコンコン


 明日の準備をしようとしている時にドアがノックされた。


「ヒノサカ様。ザンです」


 ザンとは、王都から俺をここまで乗せてくれていた馬車の御者である。


「どうぞ。入ってください」


 ザンは俺に促され椅子に座った。ザンは、30代手前の若い御者で、俺の事情を知っている。


「ここまでの旅ご苦労様でした。これからの話をしたいのですがよろしいでしょうか」

「はい。お願いします」

「マスルール王国までついて行きたいのですが、ここから先はついて行くことができません。地図などを渡しておくのでご自身で行けるでしょうか?」


 リーズが言っていた通りここから先は自分で行かなければならないようだ。異世界で一人旅は憧れるものの、実際考えてみると不安でしょうがない。だけど、どっちにしろこれ以上はザンは着いてこれないから一人で行くしかない。


「はい。大丈夫です」

「よかった。明日、必要なものはお渡しします。

 あと、レリーズ王女様から渡すように言われていたものです。」


 そう言って渡されたものは、封筒に入れられた手紙だった。

 ザンとは、明日の朝の集合時間を決め、別れた。

 封筒から手紙を出して開く。


 ーーヒノサカ様へ


 この手紙が読まれているということは、貴方様は王都から離れることが出来たということでしょう。


 私があなたを初めて見たのは剣の稽古をしている時です。貴方様は勇者様方の中で、人一倍の努力をしていることが一目でわかりました。魔眼など使わずとも貴方様の煌びやかなお姿は私に真の勇者が現れたことが神から伝えられたかのようでした。


 そんな貴方様が処刑されてしまうと知り、直ぐにこの作戦を計画し始めました。


 まず初めに、クレイネに呼びかけました。貴方様のことを王宮内で最も知る人物だと思ったからです。クレイネは直ぐに参加してくれました。クレイネと相談し信用できると思った、近衛騎士団長、副団長にも呼びかけました。近衛騎士団長、副団長はとても強い方達です。


 宰相のベルトはまだ分かりませんが、ベルトがかけている片眼鏡は魔法道具(マジックアイテム)の″真偽の眼鏡″と呼ばれるものです。これは、あらゆる偽りを見抜く特性を持っています。ベルトはメリアの正体に気づいているようです。最近は誘惑耐性の指輪も付けています。味方になってくれるよう、これから声をかけていくつもりです。


 この他にも、多くの方が力を貸してくれています。


 話は変わるのですが、ヒノサカ様は死亡したということで世間には発表致します。そうすることによって、大々的に、ヒノサカ様を討伐しに行くことが出来ないようにするためです。ですが、暗殺者などが来るかもしれません。お気をつけください。


 なので、この世界に、ヒノサカ様という名前の人物がいてはいけないことになります。私が渡した、魔法鞄(マジックバック)に″世界樹の根″というアイテムが入っています。世界樹の根に名前を刻み込み、大地に埋めてください。そうすれば、新たな名がステータスに刻まれることでしょう。詳しいことは世界樹の根と一緒にいれてある紙に書いてあります。


 もしも、新しい名前が思いつかないのでしたら、

『レゼル』という名前をお使いください。この世界の言葉で羽ばたくという意味です。私の好きな言葉の一つです。


 また、生きて合うことをここに誓います。


 追記、

 ナシュ村の魔女には、必ず会って下さい。絶対にあなたの力になってくださるはずです。もしもあったら、よろしく伝えといてください。


  バルクスト王国第3王女

  レリーズ・レネット・フォン・バルクスト


 近衛騎士団長、副団長は会ったことないが、地球での知識から考えて、近衛騎士団とは結構強い軍団なのだろう。


 これから一人旅をする上で重要なのは、物資と情報だろう。魔法鞄(マジック・バック)の中身を確認しておこう。


 一覧表みたいのが入っていればいいのだが、そんなものは見つからない。しょうがないので、一つ一つ取り出していく。


 中に入っているものは、鉄の剣、革の防具、一週間ほどの食糧、金貨十枚、ナシュ村の魔女宛の手紙、そして、世界樹の根だ。


 この世界では、通貨が世界共通らしい。銅貨、銀貨、金貨、白金貨がある。

 銅貨が百枚で銀貨一枚。銀貨が百枚で金貨一枚。金貨十枚で白金貨一枚だ。価値としては、銅貨一枚が日本でいう百円ほどだ。


 もっと細かいお金を作るべきだと思う。この宿は約四千円ほどの宿だから、銅貨四十枚だ。一度に出す枚数が多すぎる。魔法鞄(マジック・バック)を持っていない人は持ち運びが大変そうだ。


 よくよく考えると今回もらった、金貨十枚は、日本円の価値にして約一千万円ほどだ。とてつもなく大金だ。

 誰かに見られたら、盗まれそうだ。しっかりと隠しておこう。


 魔法鞄(マジック・バック)の中に入っている物の確認は済んだ。やはり一人旅は怖いので、ザンについてきてもらいたいが、わがままばかり言ってはられない。


 これからやるべき最優先事項は、ナシュ村に行って魔女に会うことだ。そして、必ずバルクスト王国に戻り、クレイネやリーズ、香蓮を救い出す。


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