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魔法

 翌日。


 剣の稽古は午前中で切り上げられ、クラスメイト全員が訓練場に集められていた。みんなを見ると、ずっとソワソワしている。もちろん俺もだ。


 クレイネが話してくれたように、魔法をこれから教えてくれるらしい。

 魔法である。異世界と言ったら、必ず存在すると言われている、魔法である。


「火野坂君、眠そうだね」

「委員長。昨日あまり寝れなくてさ」

「僕もだよ。魔法ってやっぱり、非科学的なものじゃないか!魔法がどのように成り立っているのかをじっくりと見たいんだよね」


 黒縁メガネをかけている彼は、佐藤 匠。俺のクラスの委員長だ。運動はどうか、わからないけど、学業面に関しては超が着くほどの天才だ。あっちの世界だと、仲がいい訳では無いけど、少し話す程度の関係だ。


 10分後、メリアが来た。


「皆様、お集まりいただきありがとうございます。

 この度集まって頂いた理由は、皆様方に魔法を習得して頂くためでございます。」

「前置きはいいから、さっさと教えてくれよ」

「クロミネ様。そう焦らずに、魔法とは、しっかりと説明が必要なのですよ?」

「じゃあ、説明をよろしく頼みます」


 委員長がメリアに、急かすように言う。


「自然界中には<魔素>と呼ばれるものがあります。その<魔素>を凝縮して、力として変換したものを<魔力>と呼びます。人間や魔物の体の中には魔力が流れています。

 その魔力を火や水など他の現象または物体に変換したものを<魔力>と言います。


 魔法には階級(ランク)があります。低いほうから、低級、中級、上級、超級、究極級があり、別枠に極大魔法というものが存在いたします。


 続きまして、魔法の種類です。基本的な種類は、火、水、木、風、雷、土、光、闇がございます。それぞれの説明をいたしますと時間がかかりますので、今回は省かさせてもらいます。」


 委員長は省かれた部分の説明が聞きたかったらしく、不満そうな顔をしていた。


「ではまず、皆様には魔力を感じてもらいます。では、この魔法道具を持ってください」


 そう言って渡されたのは、所々に綺麗な模様がついている銀の球体だ。


「目を閉じて身を任せてください。では行きますよ『魔力感知』」


 その言葉と共に、身体中に電流が走ったかのような感覚がする。けれどその電流は痛くなく、むしろ心地よいものだった。これが魔力。何故か、懐かしい感じがする。


「皆様、魔力が感じられたでしょうか?次は魔法を発動してみましょう。皆様が今感じられた魔力を消費して魔法を発動させます。」

「俺、火出してー」

「私、水出したい!」

「皆様落ち着いてください。まずは自分の適性属性を知ってもらいます。1番簡単に知る方法はステータスを見ることです。では皆様、ステータスの魔法の欄を確認してください。」

「ステータスオープン!」


 火野坂 翔 (ヒノサカ ショウ)

 Lv:1

 HP:20/20

 MP:25/25

 STR:15

 VIT:12

 INT:20

 MND:15

 DEX:15

 AGI:18

 SP:0

<魔法>


<スキル>

 言語理解 片手剣Lv.2


<称号>

 巻き込まれし者


 片手剣が追加されている。レベルが上がらなくても、スキルは獲得できるらしい。


「皆様確認して頂けたでしょうか?書かれていない人がいたと思います。魔法は才能がとても強く関わっています。だから、魔術師は重宝されるのです。ですが、今回は特別に国宝である魔道具を用意いたしました。この水晶に触れると特定の人物にだけ魔法を授けることができます。ただし、魔法を取得できない人もおりますのでご了承ください。では、魔法を取得したい方は前にお願いします」


 前に出る。俺の他にも10人ほど前に出てきた。勇者である黒峰や香蓮は出てきていない。魔法が使えるという事だ。

 目の前に置いてある水晶は少しモヤがかかっていて神秘的なオーラを醸し出している。


「では、この水晶に手を触れて魔力を流し込んでください。魔力を放出させるのは先程感じた魔力を外に出すイメージを持ってください。」


 そう言われて、1人ずつ水晶に魔力を流し込んでいる。


「おっ!魔法の欄になんかでてきた!」

「おめでとうございます。これであなたも、魔法を使えるはずです」


 とうとう俺の番だ。

 魔法が使えるようになりたいという願いを込めて、魔力を流す。


 バチッ!!


 すごい音とともに俺は2メートルほど吹っ飛ぶ。


「痛っ!」


 後ろに吹っ飛んだ拍子に、後頭部を強打した。

 うおっ!HPが減ってる。


 火野坂 翔 (ヒノサカ ショウ)

 Lv:1

 HP:12/20

 MP:15/25

 STR:15

 VIT:10

 INT:20

 MND:15

 DEX:15

 AGI:15

<魔法>

 火属性Lv.1


<スキル>

 言語理解 片手剣Lv.2


<称号>

 巻き込まれし者


 ん?やった!魔法使えるようになってる!


「メリアさん!魔法の欄に火属性って出てきました!」

「それは喜ばしいことですが、どこかお怪我はありませんか?HPが減っていますね。回復しておきましょう」


「【彼の者を癒せ】」


「『回復(ヒール)』」


 魔法名と共にメリアの手から暖かな光が擦り切れた傷を包む。すると、HPが回復し、みるみるうちに傷が治っていく。


「これで、大丈夫そうですね」

「ありがとうございます」

「いえいえ、当然のことでございます。気を取り直して、授業の続きを始めましょう『(ファイヤー)』」


 メリアの指先に小さな火が出てくる。


「魔法はイメージが重要です。また、詠唱と魔法名によって成り立っています。イメージが崩れると、魔法は発動しません。では、皆様実際にやってみましょう」


 手を前に出しす。大事なのはイメージだ。小さな火。

 マッチの火をイメージする。


「『(ファイヤー)』」


 魔力(MP)が消費される。

 すると手のひらの上に小さな火が灯る。


「やった!できたっ!…あつい?…あつっ!」


 手を全力で振る。ギリギリ小さな水脹れ程度ですんだ。


「すみません。言い遅れましたが、火属性や雷属性の魔法は制御が難しく、制御を誤ると自分の身体が焼けたり、感電したりするのでご注意ください」


 周りを見ると同じ失敗をした人が多かった。でも、魔法を使えたから、少し頬が緩んでしまう。


「これからは午前中に剣術を午後に魔法の方の授業を行います。今日はこれから自習にするので時間はご自由にお使いください。」


 やっと、異世界に来たっていう、実感が湧いた。

 もう一度魔法を発動しようとすると黒峯とその仲間達が話しかけてきた。


「さっき見たけど、お前の火小さかったな!しかもこいつ、自分の火で火傷してんですよ!ダサくないですか?」

「勇者であるこの俺様が、本当の魔法ってもんを見せてやるよ!」


「『(ファイヤー)』」


「あつっ!」


 そう言って黒峯はから出された火は、俺のよりも5倍はでかかった。なのに、黒峯は熱そうにしていない。


「どうだ?火野坂。元の出来が違うんだよ!」

「さすが黒峰様です!すばらしい魔法です」

「当然だよ!こんな出来損ないと比べるまでもねーよ」


 黒峰たちはそう言ってゲラゲラと笑った。

 黒峰の掌の上にあった火に、水がかけられ消える。


「あんたたち、いい加減にしなさいよ!特に黒峰、あんた勇者なんだからそれらしい行動してくんない?」

「そうですよ。火野坂君だって魔法を使えているではありませんか」


 香蓮と委員長だ。


「ちっ!香蓮もよぉ。こんな奴とつるんでないで、勇者なんだから俺と一緒に来いよ」

「気やすく名前で呼ばないでくれる?」

「まあ、今日のところはいいや。また後でな」


 黒峰たちはそう言って立ち去った。


「まったく、どこに行ってもクズはクズね。翔も言い返しなよ」

「黒峰が言ってることは事実だから、、」


 黒峰の火は俺のよりも大きかった。俺よりも優れている。それは、変わりようのない事実なのだと思い知らされる。


「本当にそう思ってるの?それでいいと思ってるの?」

「、、やっぱり香蓮は黒峰と一緒にいたほうがいいよ」

「、、っ!翔のバカ!もう知らない!」


 香蓮は泣きながら怒鳴り、走ってどこかに行ってしまった。

 香蓮を泣かしてしまったことは、申し訳なく思うが、これでいいのだという思いもある。


「はぁ。火野坂君。君は乙女心がわかってないね。勉強ぐらいしか取り柄がない僕だけど、これ位はわかったよ?水上さんは火野坂君のことを本気で心配していたし、、、いや、これは火野坂君自身が気付くべきだね。今じゃなくてもいい、後でしっかりと謝るんだよ?いいね?」


 俺の選択は間違っていたのだろうか。これから殺し合いをするというのに、足手まといの俺が香蓮のそばにいてもいいのだろうか。


 委員長が言った言葉が俺の頭の中に反響し続けている。

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