ステータス
召喚された次の日、ベルト宰相とメリアによって詳しいことが話された。
約500年前、世界には2つの勢力があった。1つは人間。もうひとつは魔族。このふたつの勢力は、自らの領土を広げようと争った。
だが、魔族は強大な力を持っており、人間達は虐殺の限りを尽くされた。そんな中、8人の大賢者によって、勇者が召喚された。勇者は魔族たちを次々と返り討ちにして行った。魔王は倒されるまでには行かなかったが、勇者によって封印された。だが、最近になって魔王軍の力が増しているとのこと。世界はこのことに危機感を持ち、勇者達を召喚することとなった。
その勇者召喚をして呼ばれたのが俺たちということになる。
異世界系アニメなどの王道パターンである。
「では、再度自己紹介をさせていただきます。この国の宮廷魔法士団、副団長のメリアと申します。以後、お見知りおきを。」
そう言って、メリアは不敵な笑みを浮かべた。
「それではこの世界について説明をさせていただきます。この世界には、ステータスと言うものが存在致します。説明を聞くより実際に見たほうが早いと思いますので、皆様、ステータスオープンと声に出してみて下さい。」
「「「ステータスオープン!」」」
おおっ!
目の前に半透明な青みがかったプレートみたいなのが現れた。凄い!マジで異世界に来た感じがする。
火野坂 翔 (ヒノサカ ショウ)
Lv:1
HP:20/20
MP:25/25
STR:15
VIT:10
INT:20
MND:15
DEX:15
AGI:15
SP:5
<魔法>
<スキル>
言語理解lv.Max
<称号>
巻き込まれし者
ステータス、高いのかよくわからないな。
「皆様、ステータスプレートが見えたでしょうか?
皆様のレベルは1だと思いますが、他の値は50を超えていると思います。参考までに、一般の方々は初期ステータスは15前後です。
皆様方はこの世界を救うため召喚されました。何らかの異常事態により、勇者様以外も召喚されてしまいましたが、どの方にも補正がかかっているはずです」
「ほんとだ!」
「俺達は特別ってことか!」
「俺、STR60だぜっ!」
なんかさらりとすごいこと言ったよな。異常事態が起きたとかなんだとか。みんな気にしないのかよ。
メリアの発言に何か引っかかる。
「また、皆様のステータス値の一番最後の部分にSPがあるはずです。これは好きなステータスに分配することができます。分配の取り消しはできないため十分お気を付けください」
火野坂 翔 (ヒノサカ ショウ)
Lv:1
HP:20/20
MP:25/25
STR:15
VIT:10→12
INT:20
MND:15
DEX:15
AGI:15→18
SP:5→0
<魔法>
<スキル>
言語理解
<称号>
巻き込まれし者
メリアが言っていたことと、違いすぎる。SPを分配しても、みんなが言っていたステータスには届かない。いや、届くわけがない。あまりにも、差がすごいのだ。
「皆様方の称号の欄には、神の使徒と書かれているはずです。また、称号の欄に勇者と書かれている方がいるはずです。勇者の方は名乗り出てくださいますか?」
神の使徒なんてものはどこにも書かれていない。
じゃあ、俺は一体何なんだ?
「おっ!俺のとこに勇者って書いてあるぞ」
そう言って出てきたのは黒峰だった。なんであいつが勇者なんだよ。
「さっすが!黒峰様です!」
黒峰の取り巻きたちは黒峰のことを黒峰様と言う。
とても同じ高校生だとは思えない格差だ。
「あのぉ~、私のところにもあるんですけど...」
隣にいる香蓮が小さく手を挙げながら言う。
「ステータスプレートを見せてもらってもよろしいですか?」
香蓮はメリアの近くに行き、ステータスプレートを見せた。
メリアは少し驚いているようだった。
「確認いたしましたところ、カレン・ミズカミ様も勇者で間違いないようです。このような前例は聞いたことがありませんが、このお二人が勇者でございます!」
「香蓮。君も勇者だと思っていたよ。やっぱり君と僕は運命でつながっているようだね。あんな出来損ないなんて放っておいて、僕と一緒に魔王を倒そうじゃないか!」
実際、黒峰の言うことは正しいのかもしれない。
俺のステータス値は一般人並み。勇者、況して神の使徒という称号もない。俺は出来損ないなのだ。
俺といるより、勇者である黒峰といたほうが安全だ。
「翔。どうしよう...私勇者になっちゃった」
「よかったじゃん。勇者になんて普通は、なれないんだぞ。みんなのためにも頑張ってよ」
「...うん。」
香蓮の返事には覇気がこもっていなかった。そして、悲しい顔をしていた。
だけど、これでいいのだ。これが最善の道なのだ。香蓮を死なせないためにも。
召喚されてから五日目
俺たちは魔王を倒すため、まず剣の使い方を習うことになった。
剣を習い始めて二日経った今日は訓練場で、近衛騎士団の女騎士であるクレイネさんと模擬戦をしている。ぶっちゃけ、めちゃくちゃ美人だ。銀髪が日光にあたり、光り輝いている。
「さぁ、始めましょう」
「はい。よろしくお願いします」
今日までに教わったことを思い出し、木刀を上段に構え、上から下にできる限りのスピードで振り下ろす。だが、その攻撃は木刀で受けながらされ、手を叩かれる。
「痛っ!」
「もっと、相手の出方をうかがったほうがいいですね。愚直に切りかかってきすぎです」
何をしても勝てる気がしない。もちろん、直ぐに勝てるとは思ってないが、攻撃がかする気配すらない。
その一方で、黒峯は…。
「さすが!クロミネ様は剣の上達が早い。これなら私に一太刀浴びせることもそう遠くないでしょうぞ!ぐわっはっはっ!」
「まあな。俺はあそこにいる低能と違って、勇者になるんだからな!直ぐにお前なんぞ抜かしてやるよ」
「その意気ですぞ!クロミネ様!ぐわっはっはっ!」
くそっ!
黒峯はもうあそこまで上達しているのに俺はまだ何も成長していない。
この世界でも、俺はあいつに何もすることができない。
やっぱり、俺には才能がないのかな?
「そんなことはありませんよ。ヒノサカ様」
「えっ?!顔に出てた?」
「はい。この世が終わったような顔をしていました。剣は数日で上達するものではありません。」
「でも!黒峯はもうあんなに!」
「それはクロミネ様の場合の話です。クロミネ様は剣に少し才能があっただけ。ヒノサカ様には少し剣が苦手なだけ。ただ、それだけの話です。あなたが、気に病むようなことではないです。実際、私が見た生徒の中では優秀な方ですよ?」
「あ、ありがとうございます!」
「では、続きを始めます。私たちは、私たちのペースで進みましょう」
「はい!」
木刀と木刀がぶつかり合う音が訓練終了まで響きあった。