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封印

 これからやることは、ひとつだけ。強くなること。アリアからの話だと、リーズがアリアに俺を弟子入りさせるように頼んだらしい。強くなるためには、アリアに弟子入りすることが一番の近道だろう。


「じゃあ、レゼル。君は今日から私の弟子ということになるっ!!」


 アリアが家の椅子に座りながら、高らかに宣言した。


「別に家の掃除をやらせようとかは思ってない。そういう弟子ではなくて、魔法に関しての弟子ということだね。べつにやりたかったらやってもいいんだよ?掃除」

「やらせて頂きます…」

「よかったー。最近家に帰ってなかったから、汚かったんだよねー」


 やっぱり、掃除させたかったのか。パッと見るだけでもほこりが目に入る。思ってたよりも汚いな。

 でも、掃除をする前に聞いておきたいことがある。


「あのー」

「なんだい?」

「なんで俺の事助けてくれたんですか?」


 これは重要なことだ。アリアはこの世界でも強者の1人だろう。だけど、それでも人を1人救うことは危険を伴うことがあると思う。この世界ではなおさらだ。

 助けた人がすごく強かったら、恩を仇で返される。なんてこともあるだろう。


「なんでって。人を助けるのに理由は必要かい?」


 この人にっとたら人を助けるということは造作もないことなのだろう。あの、ブラッディ・ベアーを一瞬で討伐してしまった。冒険者たちが危険だと言った、あの魔物(モンスター)をだ。


「もしも俺やあの魔物(モンスター)が、めちゃくちゃ強かったらどうしたんですか?」

「私は強いからね。そんじゃそこらの奴には負けないよ。だてに長生きしてないしね。しかも、もともとあの魔物(モンスター)を倒すために出かけてたわけだしね。……それに君は、あの人と雰囲気が似てる…」

「あの人って?」

「ううん。気にしないで」


 あの人のことは気になるけど、この人は信用できる人だ。リーズが頼れと言うぐらいの人だから、あまり不安ではなかったけど、念には念をだ。これで心置きなくこの人についていける。


「話はこのくらいにして、これからのことを話そうか。っと思ったけど掃除先にお願いできる?」

「はい」


 忘れてなっかたか。人の名前とかはすぐに忘れてたのに、なんでこんなことは覚えてるんだよ。

 ちょっとした愚痴を言いながら手を動かす。

 もともと掃除は嫌いなほうではないから、すぐに終わらすことができるだろう。


「アリアさん。掃除終わりました」

「おおっ!早いね。それにピカピカだよ。ありがとう。じゃあ、さっそくだけどこれからの話をしてもいいかな?」

「はい」

「これから君には魔法を極めろとは言わないけど、それなりに使いこなせるようになってもらう。そのために、君の体を見せて欲しい」

「……え?」


 体を見せる??俺も日本では男子高校生だ。色々なことを思い浮かべてしまう。


「いや、誤解だ!!そういうことじゃない。君の魔法への才能。それと、君が≪勇者≫に選ばれなかった理由。それを調べたい。いい?」


 ≪勇者≫に選ばれなかった理由。確かに気になる。


「俺の才能があまりにもなくて、選ばれなかったんじゃないんですか?」

「私の推測だと、才能は関係ないと思う。勇者となるのはそうなるべきだった人。運命、と言うやつかもしれない。勇者になる人はその運命に巻き込まれる。それに備えるための力なんだと思う。だから、レゼルにはそういう運命じゃなかったのかもしれない。だけど、≪神の使徒≫とやらにもなってないとすると何かほかの原因がある気がする」

「あの、≪神の使徒≫ってなんですか?」

「意味としては名前のまんま。だけど、≪神の使徒≫が一体何をするのかは私も知らないし、文献にも何も記されていない。≪勇者≫よりも謎の称号だね」


≪神の使徒≫という称号は、今回召喚された俺以外の全員についている。俺についた称号は≪巻き込まれし者≫という謎の称号のみ。


「アリアさんに体を見せる(?)ことによって謎が解明されるってことですか?」

「まあ、そうだね。私にも分からないことはあるけど、少しは謎が解けるかもしれない。これから使うのは<鑑定>というスキル。ある程度は注視することで詳細(ステータス)を見ることが出来るんだけど、対象に近づけば近づくほど、詳しいことが見れる。触るともっと詳しいこと奥底のことが見れる。まぁ、記憶とかは見ることは出来ないけどね。見れるのは詳細だけってこと。じゃあ、手出して」


 アリアに手を差し出し、手を握られた。接触するならどこでもいいんだろう。


「じゃあ、始めるから。リラックスしてて」


  ***


 おちていく。落ちていく。堕ちていく。

 深い深い海の底へ。

 深い深い世界の底へ。


 上から差し込む光が俺をここに繋いでいる。

 けれど、落ちていく。どこまでも。


 周りは夜よりも暗い。暗黒というにふさわしい空間。

 感じる光は背中に当たる一筋の光だけ。


 何かを感じる。

 深い深い暗闇の中で。


 心臓を握りつぶそうとする視線が。

 恨み。憎しみ。怒り。苦しみ。

 憎悪の感情が押し寄せてくる。


 視線を感じる。

 見られている。

 何者かが俺を暗闇の底から覗き、俺を招く。


 暗い暗い何者よりも暗い闇に飲まれる。

 飲み込まれる。


 一筋の光が俺を繋ぎ止める。

 暖かな光が。


 それでもなお、闇は増幅する。


「………ころすころすころすころすころす。なにもかも…こわし…つくしてやる」




「きゃあっっ!!」


 アリアの叫び声を聞き、覚醒する。アリアは吹き飛ばされていた。部屋の中も俺が座っていたところを中心として吹き飛んでいる。


「大丈夫ですか?アリアさん」

「なんとかね。それにしても、ものすごい力の暴発だった。おかげで、部屋がぐちゃぐちゃね」

「なんか、すみません」

「いいのいいの。結局君が片付けるんだから」


 とうとう、自分から言っちゃったよ。この人。


「とりあえず、この部屋片付けようか。私は外にいるから終わったら呼んで」

「分かりました」


 そう言って、アリアは家から出ていった。

 改めて部屋を見てみると、ぐちゃぐちゃだな。


「まあ、頑張りますかっ!」


  ***

 ーアリア・ゼラフィート


 最初は、レゼルのステータスの奥を少しだけ見る予定だった。順調に進んで行ったけど途中から、闇の気配を感じた。

 暴発した力は、一般人の力をはるかに超えている。それも、賢者に匹敵するぐらいの力だ。


 あの気配に似ているものを私は知っている。

 忘れもしないあの力。

 でも、なんであいつの気配がレゼルの中に?

 考えれば考えるほど謎が迷宮入りしていく。


 しかも、レゼルには封印が掛けられていた。それも、とても強力な封印が。


 あいつの気配がレゼルの中に封印されていた。その封印のせいで、レゼルのステータスは軒並み低かった。

 使徒の称号、いや勇者の称号は封印によって弾かれた。普通はそんなことありえないけど、あの封印は、とても強力。後付けの称号くらい弾いてもしょうがない。とすると…。


「……まさかね…そんなはずない…」


「アリアさーん。片付け終わりました!」


 玄関からレゼルが出てきた。黒髪黒眼で、それ以外はどこにでもいるような少年。


 レゼル。君は一体、何者なんだ?

 

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