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小雀浮かれ模様  作者: 28号
ちよこれいと怖い
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ちよこれいと怖い その1

いきなり季節物のお話です。バレンタインのお話です。(体調がっつり崩して、めっちゃ過ぎていまい増したが……)

鴉さんがナチュラルに恋人を本名呼びしてます。


「我々の命は、君にかかっている」


 場末のスナックに呼び出され、突然重すぎる使命を託された。

 それも託してきた相手は、憧れてやまない噺家の大先輩たちである。


「すこし、大げさやしませんか。……それに、この状況はおかしくないですか」


 スナックの中央に置かれたソファに座らされた俺を、取り囲んでいる顔はざっと見積もっても三十。

 落語界の重鎮から気鋭の若手まで、そうそうたる顔ぶれである。

 一方自分はまだ前座であり、本来なら彼らに取り囲まれたあげく酒を奢られる立場ではない。人より奇特な人生を歩んできた自覚はあるが、これほど奇妙な状況は初めてだった。


「大げさではなく死活問題だ。だから夜鴉(よがらす)、俺たちのためにどうか犠牲になってくれ」


 そう言って深々と頭を下げたのは、俺の師匠である冬風亭(とうふうてい)圓山(えんざん)だ。

 それにあわせて他の噺家たちも「このとおりだ」と頭を下げ始めたので、さすがに慌てる。


「いや、犠牲……になるのはともかく、自分に出来ることならやりますが」

「ならあいつを……小雀を止めてくれ!」


 師匠を筆頭に、縋るような眼差しを向けられる。

 その表情から毎年の苦労が察せられ、俺はつがれたばかりの酒を置き、「わかりました」と頷いた。


「それで、私は何をすれば――」


「「「小雀にバレンタインのチョコを作らせるな!!!」」」


 俺の言葉を遮る勢いで、放たれた言葉は見事に重なっていた。

 芸風も年齢も性格も違う噺家たちをここまでひとつにさせるとは、我が姉弟子『冬風亭小雀』こと小鳥遊(たかなし) 雲雀(ひばり)は本当に凄まじいなと、思わずにはいられない瞬間だった。


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