43.アンナの失敗
「身分証は?」
「持ってな…「ここに」
正直に話そうとしたらタマに遮られた。
ダメなんだ。
「うむ、いいだろう。入れ」
「ありがとう」
あのオッサン目付き鋭いな。怖いや。
ともあれ中に入れたわけだし、もうルビアスを呼んでもいいのかな?
「あぁいや、まだ待て。というか中に入ってもらうのはちょっと厳しいな」
「どうして?」
「ほら、さっきのやつ。お前が龍契者()だと知ったら多分だが、飛んでくるぞ?」
「ああ、さっきの……それは嫌だな」
面倒くさそうという意味で。いや、会ったこともないのに失礼だとは思うけどさ。
でも、あの覇気……龍契者ってあんなのばっかなのかな?
うん、もしもがあるからやっぱルビアスは呼ばない方がいいか。
ごめんな?
─私は大丈夫。アレンの方が心配─
いえてる
「さて、まずは宿を探すか」
高い建物に挟まれた広い通路。
そこを歩きながらタマが言った。
「タマってお金もってるの?」
「一応な。ただ、お前たちも金が少しあった方がいいなら今度どっかのギルドにでも行ってみるか。ここは超巨大都市国家だからな、ギルドの数も凄いぞ? ま、所属すると面倒だし後後のことも考えて冒険者ギルドが得策だろうけどな」
冒険者ギルド……詳しくは知らない。
村の本に書いてなかったからね。ドロフィンさん達から聞いたことはあるけど、M級の冒険者が~って話とか。あとはリアの夢が冒険者だったような。
「……先に登録だけ済ましておくか?」
「どっちでもいいよ」
「私も。というか私はもう登録してあるわね」
「そうか、じゃあアンナには宿を探してきてもらおうかな。まだ少し明るいし大丈夫だろ」
と言っても、既に陽は落ちかけている。着いたのが昼頃でも入るまでが長かったからね。
「そうね。適当に探してくるわ」
「一応気をつけろよ。変なの買わされたりしないようにな」
「ええ」
アンナが人混みに消えた。
ま、よっぽどの事がなければ大丈夫か。
あ! 待ち合わせ場所!
念話でいいか。
「んじゃあ、アレン。俺たちは冒険者ギルドに行くぞ」
「了解!」
─────────────────────
……つけてきてる?
アレン達と別れてすぐ、私は何者かの気配を感じとった。と言っても別段強そうでもないわね。
少しずつ人気のない道へ入っていき、様子を伺ってみたけど、どうやら追ってきてるみたい。一体誰で、なんの用かしら?
完全に周りに人がいなくなった所で気配の感じた方を向き、声をかける。
「要件があるなら早くしてくれないかしら? 私も早く宿を探さないといけないのよね」
「宿ね。んじゃ俺達と一緒に泊まろうぜ? なんてな。さっきの会話を聞いててよ、いいとこ知ってるから教えてやろうと思ってな」
なにこいつ……いやこいつらね。見たところ8人だけ。
「へえ、気が利くじゃない」
「まあな」
さっきから話してるのはリーダーと思う男。角、は無いから魔人じゃないわね。翼もないから天翼族でもない。牙はないし、耳も尖ってない。身体も小さくないし大きくもない。羽根もないし鱗もない……はあ、人族ね。こんな低俗なこと。
「で、そこはどこなの?」
「いやすぐ近くにある……ッ!!」
いっけない。触られたから反射で攻撃しちゃった。
でもまあ、遅かれ早かれ殺るんでしょうしいいわよね。
「こいつ……人が親切に教えてやろうと……お前ら!」
「「「「「「「「うす!」」」」」」」」
「礼儀がわかってねえこの嬢ちゃんを痛めつけてやれ!」
「あら、礼儀がわかってないのはどちらなのかしらね」
そこからはもう……蹂躙ね。と言いたいところだけど、こいつら案外しぶとくて……
「「「「突風!」」」」
「くっ!」
何が厄介って、連携が上手いのよ!
「「「炎風!」」」
「きゃっ!!」
……調子乗ってたわ。
それにこの人数、やばいかもしれない。どうする? アレン達に助けを求める……?
「ふう、無詠唱を使えるとはなかなかだな嬢ちゃん。さ、もういいだろ?」
「まだよ!」
「いや、何を勘違いしてんのか本当に……」
「我、水の精霊との魂の契約により、大いなる水神の化身と化し、敵を討ち滅ぼさん……」
「おい! こんなところでそんな大魔法を!!!?」
「水鎧!!!」
この魔法は今私が使える中で最大のもの。と言っても直接攻撃じゃなくて付与魔法の仲間ね。その効力は桁違いだけど、その分魔力消費も大きいし、まだ無詠唱も出来ない。
水の鎧が私の身体を覆っていく。
久しぶりだけど、やっぱだめだわこの魔法……だって
ふふ、この高揚感! 幸せ!!
「ちっ! 聞こえねーか。解除しないと嬢ちゃんまでまずいよな。ここも危ねーし……よっ!」
相手のリーダーが飛び込んできた。
けど、関係ないわ。
「ぐはっ!」
男が壁にめり込む。
手を薙ぎ払うだけで終わり。
武器も防具もこの水だけ。水の威力を舐めちゃダメよ? こうやって、簡単に人の命なんて奪えちゃうんだから。
まだ身動きの取れない男に手の平を向ける。
「じゃあね」
「っと、ここで何してんの?」
「!!!」
突然後ろから声をかけられた。おかしい、さっきまで気配なんてなかったはず……いや、違う。こいつ、空から。
そう頭の中で整理する前に体が動く。後ろへ手刀。
「ぐっ!」
耐えはしたけど、今の感じだと大したものじゃないわね。いいわ、ついでに消してあげましょう。
「ライカ!!!」
「オォオオオオオン!!!」
「!?」
ドゴーーーーーンッ!!! バチバチッ!
落…雷?
そこで私の意識は途絶えた。




