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太陽の申し子〜竜に選ばれた少年の旅物語〜  作者: 日孁
第1章~純白の支配者~
44/86

35,念話みたいなやつ


 翌日の朝、僕らは既に村を後に…してないんだなーこれが。

 前も似たようなこと言ったっけ?

 まぁいいか。


 はい、早朝に出発だ!とか言っておきながらまだ馬が決まっておりません。

 いや、別に誰かが寝坊したとかじゃないよ?


 狩人たるもの寝過ごすことは許されん!


 とかなんとかは関係なく、問題はルビアスだ。

 んー、これも別にルビアスが悪いってことじゃなくてね。

 ルビアスって竜でしょ?

 竜ってちょっと怖いじゃん?

 つまり、馬さんが竜であるルビアスを怖がっててね。

 一時的にルビアスに離れてもらうって手もあるんだけど、そうすると途中で合流した際に馬さんが恐慌状態に陥って暴れる可能性がある。

 とは言っても、ルビアスを怖がらない馬がいるということもなく。


「申し訳ございません! 申し訳ございません!」


 そして村長さんがとてつもない勢いで頭を下げているという。

 てか、この村長さん震えてるぞ?

 え、どうして。

 なにもしてないし、しないよ?


「あー分かったたから、村長殿、頭を上げてくれ」

「い、いえ……」

「ほら」


 タマが強引に頭を上げさせる。


「元々、俺達は見返りを求めて、救済したわけじゃないんだ。だから、別にあんたらを取って食おうということも無い」

「いや、なんで食う? そんなわけないじゃ…」


─アレン─


「あー、ルビアスもそんなこと……え、しないよな!?」


─ア、レ、ン?─


 な…なんでしょうルビアスさん?

 なんだか声に怒気が混じっているような気がしたのですが。


─そんなことはない─


 そ、そう?


「……まぁともかく、そういう事だから安心してくれ!」

「は、はい」

「あ、あとこの馬たちについてだがな。ふむ、村長殿少し席を外してもらっても?」

「え…分かりました」


 おぉん? 何をするんだ?



「さてさて、アレン君。ひさしぶりに修行といこうか」

「???」


 村長さんがいなくなった途端にタマが突然変なことを言い出した。

 ついに、いかれちまったのか…


「おい」

「……はいすみません」


 読まれた…


「で、修行ってのは?」


 こういう時は即座に話題をすり替えよう!

 というか戻そう!


「まぁいわゆる、念話に近いことだな」


 言われてみれば、僕って念話使えないな。


「どうやってやるの?」

「そう焦んなくてもいいぞ。これは念話よりも多少簡単だしな」


「まず、相手の心に入り込む。これが1番難しいとこだな。そのあとは心に自分の感情を訴えかける。これだけだ」

「ふむぅ、なるほど?」

「とりあえずやってみろ。」


 んー、心に入り込む……

 馬をじっと見つめ、集中する。が、何も掴めてこない。

 え、本当に分からない。


「あー、あれだ。そんな気を高める感じじゃなくてだな。もっとこう、落ち着いて。」

「ややこしい!」

「目を瞑れ!」


 言われた通り、目を瞑る。


「余計な事は一切考えるな。自然と同化するんだ。」

「……自然と、同化?」

「息を吸って、吐く。吸って、吐く。肌で空気を感じろ。風を感じろ。」

「肌で、感じる。」

「なんの匂いがする? 畜舎のきつい臭いか? 土の香りか?」

「匂い……」

「耳をすませろ。俺の声、鳥の鳴き声、風の音、虫の働く音。少しの音も漏らすな。」

「……」


 ただ、息を吸っては吐くを繰り返す。

 ほんの少しの風が、自分の肌をふわりと撫でるのが分かる。

 土の香ばしい匂い。草木の優しい匂い。

 変わった鳥が陽気に歌を歌っている。

 虫がせっせと忙しなく働いている。

 お、この馬、こっちを物珍しそうに見てやがんな。

 ん……??? なんだろう…目は閉じてるはずなんだけど、周りの光景が手に取るようにわかる。

 でも、居心地がいい…


「……今、何が見えている?」

「色々なもの。」

「そうか、流石は太陽の申し子か。掴むのが早い。いいか、そのまま、そのままこいつに意識を向けてみろ。」


 タマが馬を指さす。


 じっくりと馬の周りを見る。

 一つ一つの筋肉の動き、荒い呼吸、瞬き。焦点を一つに絞ったことでさっきよりも細かい部分まで感じ取れる。

 もっとよく見てみると、なにやら馬の感情らしきものまで伝わってきた。

 恐怖心、好奇心。

 単純だがだいぶハッキリとしている。

 自分自身がこの馬になった気分だ…


─アレン、相手の感情に飲み込まれないで─


 ああ。

 馬の感情らしきものに触れる。

 馬が体をブルりと震わす。


(大丈夫。怖くないよ)


 落ち着かせるよう、優しく語りかける。

 徐々に馬の呼吸が落ち着いてきた。


(ほら、君を傷つけるやつは誰もいない。だから怯えないで。)


 馬がこちらを観る。タマ、アンナと続いてルビアスへと目線を移す。

 大きく息を吐いて、こうべを垂れる。

 そして擦り寄ってきた。


「うんうん。良くやった! まさか1発で成功するとはな。」


 タマが嬉しそうに、そして若干悔しそうに頷く。


「しかも、そんな詳しく教えてなかったんだがな。」

「チッチッチッ、舐めちゃいけないよタマ君。こちとら竜に選ばれし者だぜ? こんなの朝飯前さ。」

「ったく、調子のいいこといいやがってよ。出来ないなら俺がやろうと思ってたんたのにな。」


 ははは! 今、猛烈に調子に乗ってます!

 ちなみにもう一頭はタマが速攻で終わらせてた。

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