29,あの方
昨日寝坊して、投稿遅れました!
ふふふ、今日はアレンがいない。
なんだかよく分からないけど、幼なじみの子達と最後の試合をしてくるって。
まったく、龍の相棒であるアレンと戦うとか私には理解できないわ。
で、そんなことよりもよ。
今日初めて私はフリーになった。
だっていつも修行修行だったし、1人になる暇なんてそうそうなかったもの。
で、今日はその久しぶりの1人だからぐうたらしたいなーって気持ちもあるにはあるんだけど、それよりも私には気になっていたことがあった。
そう。この村について、ね。
毎日早朝から夜遅くまで修行だったからここについて知る時なんてなかったし、村人とも話すこともなかった。
だから今日、私はこの村の中を探検しようと思う。
ふふふ、楽しみだわ〜。
─5時間後─
私アンナ、今驚きで顎が外れかけているの。
この村、異常に魔力霧の濃度が濃いなとは思っていたわ。
ええ、思っていたわ。
でもそれは王種であるルイフの庇護下にあるからなんだと自分に言い聞かせてきた。
でも、そうじゃなかった。
いいえ。そうなんだけど、それだけじゃなかったのよ。
この村の住人、全員が強い。
私がこれまで見てきた中で間違いなく強者に入るほど。
私の鑑定眼もだいぶ精度が良くなってきた。
それで確認したのだから、これはもう確実。
ほんと頭が痛くなるわ。
そして他にもあった。
住人の中に、明らかに普通の人とは違う者達がいたのよ。
それは、今現在確認されている16の人種とは違っていた。
いえ、でも私には記憶にそれについてのことがあったわ。
蟲人族……
それは一種のお伽噺だと私は思っていた。
だってそうでしょう?
本や伝承でしか聞いたことの無い幻の人種。
純血種の人族が角、羽、外骨格等の蟲の特徴を持った超人。
その戦闘力は劣血種の天使族、悪魔族に並ぶとされている。
劣血だから褒めてない?
えっとね、そもそも、純血種に人間、エルフ、吸血鬼、樹人、精霊がいるの。蟲人も一応そうだったわね。その中で最も力を持つと言われているのが精霊族であって、悪魔や天使はこの精霊族の劣血種にあたる。したがって人族なんかより、もっと言えば私たち魔人族より強い。そう、私なんかよりもずっと……
でも、本当に蟲人族が超人と言われているのは、【変態】という特性があるから。
【変態】
それは私もよく分からないけれど、魔物の進化に似て非なるものということらしい。
これ以上の情報は今はわからない。
もっと根気強く調べてみれば分かるのかもしれないのだけど、別にやろうとは思わないわ。
というよりやれないのでしょうけど。
まぁ、そんな蟲人族がこの村にはいるということが分かったわ。
勿論、力は鑑定させてもらいました。
馬鹿げていて笑いそうになったけどね。
特にお屋敷?に住んでいた2人の夫婦と思われる方達。
あのおじいさんや、村長さんよりも恐らく強い。
まったく、上には上がいるものなのね。
改めて思い知ったわ。
そんな強い人達が住んでいる場所なんだから、必然的にここの魔力霧は濃くなるのね。
この村だけで、数国なら簡単に滅ぼせるんじゃないかしら。
流石に四天王や三魔王、あの方や忌々しい大聖女の領土には進行できないと思いたいけど。
いや、あの偽善者大聖女になら鉄槌を下して欲しいわね。
そういえば、あの方と長いこと連絡取れてない。
突然カーバンクルの赤子を連れて来いって言われた時は正直びびったわ。
まあなんとかしてやってみたけど結果はこれ。
はぁ……ほんっと毎回ベリア様の無理難題に付き合わされたる私の身になってみて欲しい。
常人じゃついてけないわよ?
いや、真面目に。
(では代わりましょうか?)
「ふぁ?! ちょ、はい?」
急に現れたもんだから変な言葉出ちゃったじゃない!
ええ、勿論そいつはルイフよ。
何度やられても慣れないわね。
(それで、やはりあなたが言うあの方、とは彼女でしたか。)
「ふん。分かっていたかのような口ぶりね」
(分かっていましたから。)
「……」
(……)
「で? どうする気? ベリア様の元に向かうのなら、私だってただで行かせてやんないわよ?」
(いえ、行かせてもらいます。)
「はぁ!? 私の命に変えてもさせないって、そう言ってるでしょ!」
(……あなたは、【王種】というものを舐めすぎです。)
「あんただって、私やベリア様のことを舐めすぎよ!」
思い切って挑発してみたけど、私死んだかもしれない。
いやいいわ。命に変えても!って言っちゃったんだし、精々華々しく散りましょう。
「はぁ!!!!!」
暴風を起こして距離を取ろうとする。
だけど、それは出来なかった。
「え……? なん、で?」
(だから言ったでしょう。あなたは【王種】というものを、いえ、私のことを侮りすぎです。)
私の魔法が発動しなかった。
意味がわからない。
(何も出来ないようなので私は行きますね。)
「あ、ちょっと! 待ちなさい!」
……行ってしまった。行かせてしまった。
まずいまずいまずいまずいまずい!!!
ルイフが相手だといくらベリア様が強くたってただじゃ済まないわ!
あー! もう! 私のバカバカバカ!
どうする? どうもできなくない?
転移なんて使えないし。
あぁ、せめてこのことを伝えられれば……
伝える…伝える……?
そういえばあるわね、一つ。
でも私に出来るのかしら?
いえ! やるのよ!
確かこうして、こうやって、ここをこう。
あれ、ちょっと違う? あ、これがこうなるのね。それでこうか。
よし! 多分これで出来た。
[もしもし、こちらアンナです。ベリア様、聴こえておりますか?]
[聴こえているし、分かっている。ルイフがこっちに向かっているのだろう? だったら心配はするな。]
[え……あ、はい。分かりまし…た?]
[何故疑問形なのだ。全く、では切るぞ?]
[あぁはい。ご武運を]
[……]
あら? なんか私おかしかったかしら?
こっちの事情がわからないだろうと思って、やり方も知らない念話を見様見真似でやってみたまでは良かった。
いえ、明らかに凄いことなのだからそんな簡単にすませるのも勿体ない気がしないでもないけど、まぁ良かった。
それで……?
ベリア様はなんて?
あれ?
いえ、きっと疲れているのよ。
大丈夫、多分前に同じことを言っちゃったのよね。知らないけど。
ええ、きっとそうに違いないわ。
そう……よね?




