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太陽の申し子〜竜に選ばれた少年の旅物語〜  作者: 日孁
第1章~純白の支配者~
33/86

26,手合わせ……?

「では、我々はこれで失礼します」

「爺さん達、世話になったな」

「うむ、またいつでも来るがいいぞ」

「またねー」

「ご教授ありがとうございました」

「じゃあまた」


 今日がドロフィンさん達の出発の日。

 それを見送りに村長や長老の大人達や僕にスー、リアを筆頭にした村の子供たちが集まっている。わけではないんだなー。

 来たい子もいただろうけど、面倒になるからと村長達が止めてた。

 まぁそこまで関わりがある子もいなかったしね。

 一番の理由は村の外に出さないようにだろうね。

 一応成人の儀式を終えてるから行けるには行けるだろうけど、それは建前。

 境界にハーカバがあるのがその証拠。

 ルイフがここを隔離できてるのはこれがあるから。

 まぁ、僕はそれでも越えれたと思うけど!

 ほんとだよ?

 で、そんなわけで見送りに来てるのはさっき言ったように複数人しか来ていない。

 なんか可哀想にも思えるけどな。


召喚(サモン)


 はいでました陸龍(ドレイク)飛龍(ワイバーン)

 相変わらずかっこいいねぇ。

 って言おうとしていた僕の気持ちを返して欲しい。

 召喚されたのは陸龍に飛龍ではなくて、馬。

 いや、馬だけど魔物ね。

 馬に角と翼が生えたような姿をしたそれはサッコフース。

 危険度は1だけど、それは単に大人しいからで、実際の格としては3でもおかしくはないという。

 そしてそんな馬たちが5頭。

 なるほどこれで移動するのか。

 ドロフィンさん達はそいつらに跨るとすぐに行ってしまった。

 なんかいなくなると寂しくなるな、毎回毎回。


「さて、それで? アレンも出ていくんだっけ?」

「な、何故それを」

「ああ、そういうのいいから」

「ぬ」


 相変わらず冷たい。


「それで、出ていく前に久しぶりに手合わせお願いしたいんだけど」

「手合わせ、か」


 リアと手合わせなんていつぶりだろ。

 まず最近は会えてなかったし、その前もそんなに。

 一年近くやってないのかな?

 いや、儀式の前にやったことあったか。

 負けたけど……

 いや違うんだって。

 なんかこうね。

 女性に対して手をあげるのがいけなことだな、と。

 思ったわけですよ。はい。

 ……すみません。言い訳です。

 もうありとあらゆる手を使ってことごとく打ちのめされました。

 でも考えてみな?

 ウルフル200頭を1人で殺れる女だぜ?

 こちとら一般人1000人分のヤマコスタルでさえ2人でやってるような子だよ?

 ほら、納得したかね? え? よく分からない? まあそういうもんさ。

 それで今回お願いしてきたのは、まぁ普通に考えて自分の成長を知りたいんだろうな。

 昨日までフィルさんに指導受けてただろうし。

 それを僕でやるとかちょっと酷いと思うけど。

 いや多分、僕が修行してたのを知ってるな?

 長いこと顔だしてなかったし、ドロフィンさんもいるし、そこから予想したんだろうな。

 まぁここは


「よし、受けて立つ。」

「そう言ってくれるって思ってた」


 リアが微笑む。

 うん、やっぱり顔が美人なだけあって笑うと可愛い。

 こんな子が、ねえ?


「俺もー、いいー?」


 スーが控えめに聞いてきたが、そりゃあ勿論。


「当たり前だろ?」

「そうね、でも2対1ってきつくないかしら?」

「ん?」


 まじか、リア。

 僕とスーを相手に自信があるのかよ。


「あ、勘違いしてない? ()()()()1よ?」

「へ?」


 あれ?

 どうやら僕は疲れているようだ。

 幻聴が聞こえる。


「すまん。少し疲れているようだからまた今度な」

「幻聴じゃないわよ?」

「……」


 まったく、なんだってんだ!

 無理に決まってる、わけではないけど。いや、やっぱり無理だ!


「そこはさ、な? ほら1人ずつでさ」

「まぁそうね……私もタイマン張りたいし」

「な? じゃあさ」

「分かったわ。それならとりあえず今日は1対1を。タッグは明日にでもやりましょう」

「あの、自分はタッグではないのですが?」

「ふふ、そんなの分かってるわよ。まぁもしもの時は誰か誘ってきてもいいわよ」


 ぐぐぅ……!

 いやここは誘ってもいいと許可を得られたことに喜ぶべきか?

 まて、なんだ許可って。

 許可を得られるとか、完全に上下関係できてるな。

 でも、僕も今の自分がどんなものか知りたいし、今日の打ち合いで誰かを呼ぶか決めよう。


 ─そのときは私を─


 殺す気かな?

 まぁそれもまた後で。



「じゃあお昼食べてからまたね」

「ああ」

「はーい」


 ─お昼後─


 さあやってまいりました。

 村の広場には既に続々と観客が集まっております。

 んー? なんで?


「私は呼んでないわよ……?」

「俺もー」


 2人の視線が僕に向かう。


「いや、僕でもないから」

「それじゃあ、誰が?」

「さあ?」

「ふふふ、話は聞かせてもらった!」


 3人してうんうん悩んでると、後ろから声がかかった。


「ブランドン、お前か」

「おう。グローリアの方々にせめて顔を見せようかと思ってたんだけど間に合わなくてなー、そしたらちょうどお前達が話しているのを聞いてしまったわけですよ」

「そう。まぁ観客が増えたところで変わらないわ。早速だけど始めましょう」

「お、おう」

「おー」


 リアさんメンタル強いっすね。

 こんだけの人数に見られてやるのって緊張が半端ないっす!

 村の人達ほとんど来てるんじゃ?

 あ、でもスーの両親は来てないな。

 良かった。これならスーを相手に手加減とかする必要はなくなる。

 ふ、まあこれは僕の優しさかな?

 杞憂だったけど。


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