14,修行③ 魔物討伐 後編
ぐへぇ!
なんでいるの!?
さっきまで遠くにいただろ!?
え、ちょ!
クイーンの姿が霞む、そして体に衝撃。
いやいやいや、早いのは知ってたけどさぁ。
これ程までとは思わないじゃん!
これじゃあ魔法で攻撃とか無理だろ!?
それ以前の問題、当たらないじゃん!
ドッ……ドッ……ドッ……ドッ……
痛い! 痛い! 痛い! 痛い!
なんか音がおかしくない?
身体強化で防御力を上げていなけりゃ、今頃どうなってたか。ともかく、見えないことには話にならない。まずは速さに慣れないと……!
─4分経過─
……見えない。
いや、最初に比べたらまだ反応できるようにはなったよ?
でもムリー!
攻撃が当たんないんだもん!
攻撃しようとすると隙狙われるし。
この4分間ずーっと防戦一方。
おかげで守りだけは結構身に付きました!
あぁダルー。
死ななかろうと痛いものは痛いし、攻撃当たんなくてイライラするし。
かくなる上は……
『身体強化・速』
に・げ・る!!!
「オォォォォォオ!!!」
一目散に山頂へ向かって走る。このスピードについてこられるかな?
ドスッ!
「ぐは!」
まぁそうだよねー。
速いってんだから追いつくよねー。
もう少し遅かったら何とかなるのに!
ん? 遅く?
出来るんじゃね?
『閃光よ、敵を眩ませ』
僕の手のひらから光が漏れる。
クイーンがそれを見て怯む。
きた!
『光よ、敵を射抜け』
一筋の光線が、クイーンを貫いた。
「おぉぉぉぉっしゃぁぁぁあ! やってやったぜぇぇぇエ!」
いやぁ、気づくのに遅れたね。
もっと早くに気づけれたら、もっと楽だったろうに。
ともあれ、これで討伐成功!
帰って飯でも……
テーナースアが猛スピードで迫ってきていた。
「あぁ、忘れてた。でも♪ でも♪ でも♪ でも♪ はい。そんなのk((殴」
ぶほぁ!!
なんだ!?
どこからともなく攻撃を受けたぞ!?
まさかまだクイーンが……!
死んでるわ。
テーナースア、でかいけど、クイーンを仕留めた僕の敵ではない! かかってこい!
蛇は毒霧を噴射した。
「うぎゃァァァァ! 目がぁぁぁぁ!!!」
お前、遠距離攻撃出来るんけ!
『光よ、傷を癒せ』
目をやられたら何も出来ないのですぐに治す。
こいつ、なかなかやるじゃねーか!
……はい。舐めてました。
だってクイーンより楽そうだったじゃん!
仕方ないじゃん!
でもまぁ、殺れるな。
『大地よ、凍れ』
僕を中心に半径20mの地面が凍る。向かってきた大蛇が体を滑らせ、バランスを崩して勢いよく倒れた。
もらい!
『氷よ、敵に死を与えよ』
ピキピキと音を立てながら大蛇が凍りついていく。
体の奥底、魂ごと。
よぉーし、ミッション達成!
(お疲れ様でした。お見事です。)
「ルイフ貴様ァ!」
(余裕でしたね。)
「いや、どこがだよ」
(死系統の魔法は素晴らしい出来前でしたよ。そして、剣を利用して竜巻を発生させるとは驚きました。)
「はいはい、どうも。」
(今回の実戦で、今のアレン様に必要なことがなにか分かったかと思います。)
「うん」
(そこを明日からは改善していきましょうね。)
……はい。
実力不足だったのは、身体能力を上げた時に判断がついていけなかったこと。あと魔法を自分の思い通りの数や大きさ、威力に調整すること。このあたりだな。
古代語はだいぶ覚えた。
あとは上手く使うだけ。
まだドロフィンさんが来るまでには時間がかかるし、頑張るか……
明日はどんなことやらされるのやら。
そういえば、結構前からタマがいないんだよな。
あいつめ! 自分だけ逃げやがって!
✧✧3ヶ月前のとある街のとある地下室✧✧
「兄貴、カーバンクルの子供逃がしちまいました!」
「すみませんでやす!」
「今、なんつった?」
暗い部屋、2人のスキンヘッドの若い男達が、金髪グラサンの男に顔を下げている。このスキンヘッド二人が今回のカーバンクルを誘拐を実行した張本人だ。
そして、彼らの口調から分かるように二人は金髪グラサンの舎弟にあたる。
「いいか? 連れてこれなければ俺たちだって危ねぇんだ!」
「そ、それは。」
「勿論でやす。」
「だったらとっとと捕まえてこい!」
「ですが兄貴! あんなバケモン相手にどうすりゃいいんですか!」
「そ、そうでやす! あんなの人間がどうこう出来るもんじゃないでやす!」
彼らの言い分は妥当だろう。一体、誰が王種が出てくると思っていただろうか。
依頼内容や王種を撒いたことから、彼らの実力はおおよそ予想がつくと思う。そんな二人が口を揃えて無理だというのなら相当な事だと、金髪グラサンも理解はしている。
だが今回の依頼主がとても大きく、それ故に引き下がれないでいるのだ。そもそも、王種の存在が無ければ今回だって成功していた。そう思うと腹が立ってくる。
金髪グラサンは二人を睨み、更に怒鳴り散らす。
「怖気付いてんじゃねぇ! いいから、やるんだよ!」
「う、うう……」
「酷いでやす……」
「あぁもう分かったよ! 俺もついて行ってやる。」
「ほんとですか!」
「やったでやす! 兄貴がいてくれれば百人力でやす!」
「はいはい。じゃあ早く終わらせに行くぞ」
弟のような二人を甘やかす自分の弱さを恥じる金髪グラサンと、流石は兄貴だと喜ぶ二人の構図は彼らにとっては日常茶飯事だ。しかし、そこから先はいつもと違っていた。
「へいへい、お兄ちゃん達。一体どこに行くんだい?」
三人が立ち上がり部屋を後にしようとすると、部屋の奥から待ったをかける者がいた。
赤褐色の猫っ毛にスラリとした体、整った顔をしている青年だ。人化したタマである。
「だ、誰だ!」
「どこから入ったでやす!」
「どこって、別にどこでもいいだろ?」
焦るスキンヘッド二人にタマはニヤリと笑って答える。
「フレイム!」
只者では無いと即座に判断した金髪グラサンが、冷静に火の魔法を発動した。タマが炎に包まれる。
「聞かれちまったからには生かしとくわけにはいかないんでな……悪く思うなよ。」
「そうかそうか、それはすまなかったな。だがその言葉、そのままお返しするよ」
金髪グラサンは決して弱くない。むしろ人間の中では強い部類に入る。そんな彼の魔法によって生まれた炎の中は数千度を超えているはずだ。防御していようが防御壁の中も熱されるため、いかに強い魔法使いだろうと無傷で済むはずがないと考えていた。
だが炎に包まれているはずのタマの声が先程と変わらない調子だったことで、金髪グラサンの額から冷や汗が垂れる。
これは勝てない。
「悪く思うなよ?」
「え?」
突如タマを包んでいた炎が掻き消え、同時に金髪グラサンが達三人が青い炎に周りを囲まれた。形勢逆転だ。
「お前らの依頼人を教えてくれたら助けてやる」
「くっ……!」
「さぁ、早くしな?」
青い炎が、スキンヘッド2人へと徐々に近づいていく。
「あ、兄貴ィ!」
「助けてでやす!」
二人からべそをかいて助けを求められ、金髪グラサンは見るに堪えなくなり
「……わ、分かった。だからそいつらに危害を加えるのは止めてくれ……!」
承諾してしまった。
「ふむ、賢明な判断だな。」
タマがパチリと指を鳴らす。すると、何も無かったかのように炎が消えた。
「じゃあ話してもらおうか。」
そういえば今日で1週間なんですね。
なんだかもっと経っている気がしてます(笑)
読んで下さりありがとうございます。
また、評価をくださった御二方ありがとうございます! 励みになります!
これからも頑張っていきますので、よろしくお願いしますm(_ _)m