11,王種からの説明③
連休の始まりです。
布団から出たくありませんね。
(ルビアス様のお父上である初代竜王様。そして他の竜の方々、さらに相棒として選ばれた太陽の申し子の方々。彼等は突如として姿を晦ましました。一斉にです。それがどうしてなのか、私には見当もつきません。)
謎なのか……
ルイフも悩んでいるからか、炎が寂しそうに揺れていように感じたる。
ルビアスは相変わらず興味が無さそうだ。
「あ、太陽の申し子って?」
(古代語ですよ。竜の強大なお力はまるで、この星の生命に力を与え、延々と真っ赤に燃え続ける太陽のよう。その竜に選ばれた者達を、太陽の申し子と呼称しております。)
「そうなんだ……古代語?」
(最古の文明が発見した、力を持つ言語のことです。)
「力を持つ言語……どういうこと?」
最後の文明が発見した言葉だから古代語は分かる。
言葉に力が宿るってこと?
(そうですね。簡単に説明すると、現代の言葉で魔法、聖術を行うと自分の中にある魔力、聖気を使いますね。)
うん。それが普通だ。
(ですが、古代語を使って魔法や聖術を行えば、自分の中の魔力や聖気は失われません。言葉に宿る力のみで、その魔法と聖術を発動し維持してくれるのです。)
「……いやいやいや、なんすかその馬鹿みたいなの。古代語使えば誰だって魔法とか聖術が扱えるようになるってことでしょ?」
そんなこと出来たら、普段の生活超便利じゃん!
(その通りです。しかもその効果・威力は現代魔法、現代聖術の比ではありません。ですので、竜様や私たち王種は古代語が危険と判断し、封印しました。)
もったいない……
ま、悪用して人間相手に使ったら洒落にならんもんな。
全員が使えるわけだし、大戦争だ。
(最も、精霊族、エルフ族、吸血鬼族、天使族、悪魔族。この5つの種族には、まだ覚えてる者もいるようですが。)
「え、いいのそれ?」
封印出来てないじゃん。と続けようとしたが、
(彼らの古代魔法や聖術は先程の古代語を使いますが、それぞれ種族別に少し特色があります。基盤は古代語なのですが、あれは別の魔法に別の聖術と言ってもいいですから。)
ふーん。あ、そういえばマスコルも古代語だったな。
でも力みたいなものは感じなかったし……
(ちなみにアレン様には、この古代語を覚えてもらいます。)
「ふぇ?」
変な声が出た。
え? 覚えるの?
(災禍に抗うために力をつけないと。ルビアス様もよろしいですね?)
─問題ない─
「問題おおありだろぉ? 確実にやばいじゃん! そりゃあさっき確かに、『災禍なんて関係ない』とか言っちゃったけど……あれはなんか違うじゃん。言うしかなかった流れじゃん!」
─アレンうるさい─
「う"ぅ"……」
(では、明日にでも始めますか。大丈夫ですよアレン様、初めは覚えるだけの作業です。)
「なのに嫌な予感しかしないのは何故なんだろうね?」
(さあ、見当もつきません。)
「あー、殺されるー!」
(不老不死になったんですから死ぬなんてありません。)
あー、そっか。
……もう不老不死なのか!?
じゃあみんなが死んでも生き続けるってこと???
嫌だ! 精神的に死ぬ!
(もしもの時は私が何とかしますから。)
「……なんか出来るの?」
(これでも【王種】の一柱ですよ? 不死鳥とも呼ばれるのです。)
不死鳥……
(私の涙はどんな傷も癒しますし、私の血を飲めば不死にさえなれます。因みにこの村の儀式、何か問題があれば私が対処することになっています。)
「あぁそうなの。よし、じゃあ今すぐみんなに飲ましてくれ!」
これで安心だ。ぼっちにならなくて済む。
(それは不可能です。)
「な、なんで!?」
(不可能というかやりたくありませんね。大量に不死の方々が生まれるのは良くありませんし、各々が本当に不死になりたいのかも分かりませんから。)
そんな……確かに僕も不老不死になりたかった訳じゃないけど。
(では、いいですね。明日の朝にこのハーカバの山頂で待ってます。)
「山頂って、行ったことないです……確実に死にます……」
(だから不老不死ですって。それに私がいるので暖かいですし、魔物も近寄りません。)
「……うぅ、分かりました」
─アレン、私がついてる─
そうだなルビアス
頑張ろうな
「あ、あのぉー」
おお、村長達影薄かったね。
「これから、アレンは一体どうなるのでしょうか?」
「どうって……」
(分かりません。ですが、時が来たらこの村からは出てもらいます。)
そうなの?
「それは過酷なものなのでしょうか……?」
(さぁ? しかしアレン様はもともとこの村の外に出たがっていたみたいなので、ちょうどよく目的ができた程度でしょうか。)
こいつ勝手に僕の夢を!
あっ、でももう夢叶うわ。
叶ったら……どうしよう?
なんにもすること決まってないや。
だから、確かにちょうど良かったのかな?
生きる目的ができて。
村長は今の言葉を聞いて驚くのかと思ったが、案外スっとしている。僕の普段の行動からある程度の予想はしていたのかもしれない。
「そうなのか? アレン」
首肯する。
「……分かりました。では、私も同行させてもらえないでしょうか?」
お義父さん……
「私も、外に出てみたいのです」
「お・ま・え!?」
(嘘は良くありませんね。アレン様のことが心配なのでしょう? お気持ちはわかります。)
え、嘘なの?
「で、では!?」
(ですが、お連れすることは出来ません。)
僕もついてきて欲しかったけど。
(旅の目的は楽しい家族旅行ではありません。弱いものは、連れていけません。)
「そ、そんな……」
カーバンクル倒したのに……
村長は肩を落としうなだれている。
息子としてここは慰めるか。
「お義父さん、大丈夫だよ。だって儀式も無事に合格したんだよ? そんな心配要らないって!」
「アレン……そうだな」
うんうん。
信用してもらわないと!
「ルイフ様、分かりました。アレンのこと、よろしくお願いします!」
(ええ。……とは言っても出発はまだまだ先ですが。)
あぁなんだ。
(ふむ、そのうちドロフィン・ゴールドがまたやって来るでしょう。彼らがここを出発する際に一緒に行きましょうか。ハーカバを超える時期としてもちょうどいいでしょう。)
てことは、あと十数ヶ月はあるよな。
その間ずっと修行……?
(そうです。頑張りましょうね。)
……生きた心地がしねー。
(あぁそうそう。魔法猫も連れてきてください。彼とも一緒にやりましょう。)
「マジで? タマも一緒にいいの?」
(ええ。一緒にシゴいてあげますね。)
「オーマイゴッド……」
ドロフィン「へっくしゅん!! 誰か俺の噂をしてらぁ。」
???「いや、気の所為だろ。」