剣術が得意です。
私の婚約者は、剣術が得意です。
学園内の剣術大会で優勝なさいました。
私もその大会を見学させていだだいておりました。ただ、殿下の勇姿を見に来たわけではありません。父とともに「使えそう」な人物を見定めにきたのですが、もちろん、私がこの場にいる理由など他の誰がどう思おうと自由です。
最後の相手を制した殿下に、そっと近づく人物がいた。
ふわふわと揺れる桃色の髪。光の加減によっては金色にもみえる。
「リリアよ。殿下はどうだね?」
父の低い声が、耳元でささやく。
彼女は白い肌を薄く赤く染めて、殿下にタオルを渡している。
「・・・特に・・・」
優秀な生徒の集まるこの学園で優勝することはたやすいことではないが、所詮は学園、見た目だけの剣術だ。命がけで技や体を磨く兵士などと比べては話にならない。
とはさすがにいえないので、言葉を選んでいると父と目が合う。
殿下も彼女からタオルを受け取り、そのタオルで汗を拭う。
「殿下は実に卓越した技術を持ち、その技術を活かしきる身体能力を祖のみに宿しておられます。それは殿下の日々の努力の賜物。このようなすばらしい方と婚約できて私はとても幸せにございます」
彼女が意を決したのだろう、一歩彼に近づき。何かを言葉にする。
その言葉を聞いた彼の顔が赤く染まる。
「あぁ、とても理想的だ」
父はうれしそうにうなずいた。