外を眺めるのが好きです。
私の婚約者は、外を眺めるのが好きです。
今は、王子としての責務を果たしている彼ですが、幼い頃は相当なプレッシャーにさいなまれていたようです。
そんな重圧から逃れるために、時折内緒で城を抜け出て町を歩き回ったそうです。しかし、外の世界を知らない幼い王子は町中で迷ってしまう。
そんなときに、声をかけたのは、それはそれは珍しい光り輝く桃色の髪をした少女。二人は、幼いながらも心を通わせ、将来を誓いました。
だが、突然の彼女の引っ越しにより、彼らをつなぐものはなくなり、ただ思い出だけが残りました。
彼が見つめる先には、人々が生活を営んでいる町がある。
彼がなにを思い、考えているのか、私にはわからないし、考える必要もない。
「二人きりにしてくれないか」
ぽつりとつぶやかれた言葉を理解するのに時間を要した。立ち上がり部屋を辞そうとすると、
「婚約者同士がどうして二人で語り合ってはならないの」
どうやら私に行っているわけではないらしい。彼の従者の一人が、困った表情をする。
「殿下の身になにかあってはなりません」
「彼女が僕に何かするとでも?彼女相手に僕の身に何かあるとでも」
いらだちを声に表すのはとても珍しい。
「それに結婚前の男女が二人きりなど外聞がよくありません。御身だけでなく、王家の品位にも関わります」
「私も反対いたします」
私の声に、彼も止まる。
私たちは、契約上の婚約。互いの家、将来、評判、様々な面から利があると判断されたから結ばれた。
彼が私に会いに来るのも、珍しいプレゼントを贈るのも、そのプレゼントを私が喜ぶのも、利益があるからだ。
次代の王と王妃になにも問題がないとパフォーマンス以外の何者でもない。
「私は、なにも隠すことなどありませんから」
桃色の髪の少女が反乱によって殺された先代の王の忘れ形見であり、彼と彼女が結ばれることによって、この国に本物の王家の血筋を取り戻そうとしていることを。