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独身リーマン異世界へ!  作者: 黒斬行弘
第九章 第三都市アルターラ
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事務所

「そうですか、特に情報はありませんでしたか」


「すみません」


「いえいえ、そんなに簡単に見つかるとは全く思っていませんよ」


 俺達は今、自宅のリビングで夕食を食べている所だ。で、ついでにと言っては何だけど、今日の成果をエレオノーレさんに報告している。まあ、何の成果も無かったという報告なんだけどな。


「まあこれだけ広い街だからね」


 ユリアーナが言う通り、確かにこの街は広い。さすがフォレスタ第三位の街だけはある。しかも上位二つの都市はこれよりでかいって言うんだぜ。リバーランドの首都くらいあるのかもな。


「では明日も今日と同じ日程でいいですか?」


 エレオノーレさんが俺とユリアーナにそう確認してくる。俺としては、今日みたいな不毛なやり取りはごめんなので、別の案を推してみることにする。


「ああ、それについてですが、明日は全員で行きませんか?いくら以前来たことがあるとはいえエレオノーレさんも久々なのでしょう?」


「そうですね、前の訪問から結構変わっている所もあるかもしれません」


「それにソフィーも、街の事にはあまり詳しくは無いんじゃないですか?」


「あ、はい!」


「じゃあ全員で行く事にしましょう。帰りに買い物もすればいいし」


「そうですね、じゃあ明日は全員で行く事にしましょうか」


 よっしゃああああ!エレオノーレさんの同意を得られればこっちのもんだぜ。ユリアーナと二人で行くと、喧嘩を止めてくれる人がいないので、延々と言い争いが続いて疲れてしまう。


 じゃあとっとと言い争いをやめろと言われそうだが、それはなんか負けた気がするので嫌なのだ。


「ん?シンちゃん何か言った?」


「なななななななな、何も言ってませんけど!?」


「ちょっと!大きな声出さなくても聞こえてるよ!しかも声裏返ってるし!」


 もう!意味わかんない!とか言いながら、ユリアーナは自分の部屋に戻っていった。


 こわ!ユリアーナの奴、カン良すぎだろ・・・。


「あの・・・」


 俺がくっそ下らない事で頭を悩ましていると、ソフィーがいつの間にか隣に立っていて、上目づかいで俺を見ている。


「どうしました?」


「この前は取り乱してしまってすみませんでした!」


 そう言いながら、深々と頭を下げて来た。


 この前ってのは、ユリアーナがソフィーの兄の事を聞いた時の事だろう。ハイランドでの家族の思い出を色々思い出したらしく、ソフィーが号泣してしまったんだ。


「あー!いやいや、あれは僕たちがデリカシーに欠いた質問をしてしまったのが悪いのであって、ソフィーは全く悪くありませんよ」


「でも・・・」


「ホントに、あなたには申し訳ない事をしました。もう大丈夫ですか?」


「はい!今日はエレオノーレさんに買い物に連れて行ってもらったりしていました」


「そうですか。今日の夕食大変美味しかったです。明日もよろしくお願いしますね」


「はいっ!」


 そう言うと、ソフィーは明るい顔でキッチンへと戻って行った。先日の件で俺の気分を害してしまったのでは?と彼女なりに考えたのかもしれない。ホント悪い事をしてしまった。


 今後は彼女へ家族の事を聞くのは、余程の事が無い限りやめておくことにしよう。




「コンコン」


 次の日、リビングで皆で朝食を取っていると、扉をノックする音が聞こえた。


「はーい、お待ちくださーい」


 そう言いながらソフィーが玄関へと走っていく。こんな朝から一体誰だろう?とも思ったが、ここは社員寮でもあるので、関係者であることは間違いないと思うんだけど。


「コレナガさん、フィオリーナさんがお見えです」


「へ?」


 フィオリーナさんて、あのフィオリーナさんだよな?こんな朝早くから一体どうしたんだ?


「おはようございますフィオリーナさん。何かありましたか?」


「あらおはようコレナガ。実は事務所の件を言い忘れていたの思い出して、出社前に伝えとこうかなーって」


「事務所?」


 事務所とは何ぞや。いや、事務所が何かはわかってるけど、フィオリーナさんの言う事務所って何のことだ?


「そう、事務所。あなた達今ここに住んでるじゃない?」


「そうですね」


「で、お仕事もしていくわけでしょ?」


「はい」


「お仕事の打ち合わせとかもあるのよね」


「まあ、そうですね」


 なんだ?このやりとりは以前もした記憶があるぞ。


「自宅で出来ない話とかあるんじゃないの?」


「・・・あ・・・」


 そういえば、転生者がどうとかなんて話、絶対ソフィーの前じゃできねーっつーか、今もかなり気を使って話をしている状況だ。外に出た時に情報のシェアを行ったりね。


「もしかしたら、そういう場所が必要かもと思って、事務所になるような空き部屋も用意していたのに伝えるの忘れちゃってて」


「え?そうなんですか?いやでも、そこまでお世話になって良いんでしょうか・・・?」


 いくらフィリッポさんの紹介とは言え、限度ってもんがあるだろう。自宅までお世話されてその上事務所まで用意してもらうとかあり得ないよな。


「この前あなたに、これまでの仕事のことを色々聞いたじゃない」


「え?ああ、サランドラの事務所でですね」


 アルターラに到着した日の事だ。俺はフィオリーナさんから日が暮れるまでずっと、グリーンヒルまでの仕事の件について色々聞かれていた。


「そうそう。そこでね、スタンドプレートの売り方で、在庫を持たずに注文が入ってから発注する方法、あの方法を取引先の小規模店に営業かけてみたの」


「そうなんですか?」


「うん。そしたら、スタンドプレートを取り扱う店が5倍になったの」


「ええっ!」


 あんな馬鹿高いもんの取り扱いが5倍?つーかそもそも、この営業所のスタンドプレートの販売数ってかなり高いのよ。それがさらに取扱店が増えるって事は・・・。


「まあ、たまたまって可能性も有るんだけど、取引先の反応がかなり良かったという報告が届いてるの。何しろ発注イコール販売だしね。小さい店にとっては、多額のフォルンを支払うリスクも無いし」


 いやもうそれ、売り方の問題ではないんじゃなかろうか?この人だったら、そのうち自力でそのくらい到達しそうな気がする。つーか、その話したのついこの間じゃん!もう試したってのかよ・・・。


「だから出社前にその件だけ伝えておこうと思って」


「ホント、何から何までありがとうございます」


「いいっていいって。その代わりまた今度、話をね?」


「わかりました」


「やった!じゃあ私もこのマンションに住んでるから、夜にでも事務所の件でお邪魔するわね」


「はい、わかりました。ありがとうございます」


 俺がそう言うと、彼女は手をひらひらとさせながら玄関から出て行った。


 いやあ、ホント彼女にはお世話になりっぱなしだよ。俺の話で喜んでくれるならいくらでも話すことにしよう。


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