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独身リーマン異世界へ!  作者: 黒斬行弘
第八章 森と砂漠の国「フォレスタ」
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マリアンナ無双・・・?

「えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」


 それほど広いとは言えないアスタリータ家のリビングに、皆の驚きの声が広がった。

 そりゃそうだろう。何より一番俺とウルバノのおっさんが驚いたんだからな。


 今日起こった出来事、つまり、スタンドプレートが売れた事や、シロちゃんの飼い主さんが購入してくれた事などを、みんなが揃ったアスタリータ家で説明している所だ。


「全部で8台ですか・・・。ちょっと信じられません・・・」


 これはフィリッポさん。

 サランドラ商会が販売したスタンドプレートの中でも、アスタリータ商店の占める割合はかなり高くなるだろうとの事だ。


「これでサランドラは、アスタリータを無碍には扱えなくなるでしょう」


 まあ、そりゃそうだろう。

 事は単純にスタンドプレートが8枚売れたと言う話しじゃない。


 スタンドプレートを買ったのが「誰だったのか」が重要なんだ。


「それにしても、まさかコレナガさんが、グリーンヒルの領主の娘さんと面識があったとは・・・」


 そう、なんとエミリアちゃんお母さん、実はグリーンヒル領主の娘さんなんだと。

 いやびっくりしたね!

 たしかにでかい家だとは思ったけど、領主の娘だとは思わないだろ普通?

 さすがにエレオノーレさんもびっくりしてたわ。


「いや、それはたまたま偶然だっただけで、別に特別なコネクションがあったわけじゃありませんよ」


 俺だって今その事実を知ったばかりなんだし。

 でもそれを考えると、あのおばさん3人組の慌てようもわかるというものだ。

 まさか領主の娘さんの知り合いだとは知らずに、散々俺達を馬鹿にしてたわけだしね。


 実はさ、あの後3人のおばさんだけでアスタリータ商店に戻って来たんだ。

 何事かと思ったら、「さっき馬鹿にした件は無かったことにしてくれ」と、お金を俺達に渡そうとしてきたんだ。

 まあ、気持ちはわからんでもないが、どうしたもんかな~って考えてたんだ。

 そしたらウルバノのおっさんが


「それでしたら、アスタリータ商店も皆さんの生活の一部として、たまにで構いませんので利用して頂けませんか?」


 って言ったんだ。

 そしたらおばさん達も「ぜひ喜んで!」つって帰っていったよ。


 おっさんカッコ良すぎるだろ。

 俺の実年齢とそう変わらないはずなのに、なんなんだ俺とのこの差は・・・。

 やっぱ、これまでの生き方なんだろうなあ。

 ゲームとアニメばかりだった俺では絶対無理な渋さだわ。


「じゃあ、アスタリータ商店は、今後もサランドラと取引継続って事?」


「そうですね。というより、より条件は良くなる可能性もあります。まあ、明日以降本社連中とその辺りは話し合いになりますね」


 ユリアーナの質問にフィリッポさんがそう答えた。

 フィリッポさんはまた調子の良いこと言って、あとでがっかりしなきゃ良いけどと一瞬思ったが、これで条件良くならなかったらさすがにサランドラ上層部は無能としか思えないから、まあいいか。


「あの~」


 それまでずーっと空気みたいに座っていたマリアンナちゃんがおずおずと手お上げた。


「どうしました?」


「あのう、その領主の娘さんって、以前私が間違ってチラシを配った地域の人ですよね?白いネコちゃんがいた」


 俺のどうしましたに答えていくマリアンナちゃん。

 ああ、そういえばマリアンナちゃんって俺の指示を聞いてなくて、北アメリア地区にもチラシを配ったって言ってたな。


「それでそれで、他の3人の女の人は、北アメリア西区の方々なんですよね」


「はい、そうらしいです」


 そう、あの3人のおばさん達は、エミリアちゃんたちが住む中央区ではなく、西区に住んでるらしいんだよ。

 けどさ、マリアンナちゃんがチラシを配ったのはエミリアちゃんのいる中央区なんだよね。

 なんで西区の人がチラシを持ってたんだろう?


「あの、実は私、西区にもチラシを配ってたんですよね・・・てへっ」


「え?」


「いやあ、中央区に配った話をしたらフィリッポさんに怒られたんで、中々言い出せなかったんですよ~」


 えへへ~と恥ずかしそうに言いながら話し出すマリアンナちゃん。


「ああ、なるほど・・・」


 それでか!

 なんかさ、店のリニューアルオープン前後くらいに、マリアンナちゃんの視線を度々感じてたんだよね。

 それでなんかやらかしたんじゃないかこの子はと考えていたんだけど、これが理由か・・・。

 正直もっとやっかいな事なんじゃと思ってたんで、ちょっとほっとしてる。


「でもでも!プレートが8枚売れたのって、私が間違ってチラシを配ったからですよね!?」


「え?あー、はい、そうですね」


 完全に偶然の産物なんだが、事実は事実だからなあ。


「ですよねー!」


 そう言うや否や、マリアンナちゃんはフィリッポさんの方に向き直り、これ以上ないくらいのどや顔を披露する。


「聞きましたかフィリッポさん!私だってやれば出来るんです!」


 鼻息荒くそう語るマリアンナちゃん。

 まあ、ほとんど偶然とか奇跡に近い実績だとは思うけど、本人が良いなら別に良いか・・・。


「いい加減にしなさい!」


 俺がそんな事を考えていると、フィリッポさんがマリアンナちゃんを怒っていた。


「いいですか?今回、確かにあなたが配ったからこその結果なのは間違いありません」


「じゃあなんで怒るんですかぁ!?」


「あなたが、色々考えた末にコレナガさんの指示を破ったのなら、私は怒らなかったかもしれません」


「ちゃんとかんがえてましたあああ!」


 ほっぺをふくらませながら反抗するマリアンナちゃん。

 ちょっとかわいいな。


「皆さん、さっきマリアンナが北アメリアに配った理由は何だったと自分で言っていたか、覚えてらっしゃいますか?」


 フィリッポさんはそう言って俺達の方を向いた。

 涙目で俺達に何かを訴えかけるマリアンナちゃん。


ユリアーナ「間違ったって言ってたよー」

ロザリア「間違って配ったって言ってましたね」

リーノ「俺もそう聞いたな」

ウルバノ「間違ったと言っていたな」

ソニア「そうねえ、私もそう聞こえたかしら」

エレオノーレ「すみません、私も間違ってって聞こえました・・・」


 こいつら容赦ねえな。


 皆の答えを聞いて、マリアンナちゃんはショックを受けたようだ。

 がくっと手を床についてうなだれている。

 ただ、俺がいる事を思い出したのか、最後の希望とばかりにうるんだ瞳で俺を見つめてくる。

 そんな顔で見つめられたら、おじさん弱っちゃうじゃないか。

 仕方ない、ここはマリアンナちゃんの為に一肌脱いでやろう。

 まあ、彼女が配ったからこその結果だからな、うん。


「えっと


「でもでも!プレートが8枚売れたのって、私が間違ってチラシを配ったからですよね!?」


 ってマリアンナさんは言ってました」


 超真面目に答えてやったぜ。



「なんでそんな詳細に答えるんです!?」


 マリアンナちゃんが涙目で身を乗り出して俺に訴えて来た。

 ふっ、世間は甘くないのだよマリアンナちゃん。


 まあでも真面目な話、彼女が配っていなかったらこの結果が無かったのは事実だ。

 後でフィリッポさんとウルバノのおっさんには、マリアンナちゃんにボーナスのようなものを出せないか相談しておこう。


「何か言い分はありますかマリアンナ?」


「・・・ありません」


 マリアンナちゃん、なんか俺の方を涙目でにらんでた気がするが気のせいだろう。


「すみません、アスタリータさん、お願いがあるのですが」


 フィリッポさんはため息をついてからウルバノさんに話しかけた。

 この人も大変だな。


「おう、なんだ」


「マリアンナですが、しばらくアスタリータ商店に出向という事にお願いできませんでしょうか?」


「いや、うちは助かるが良いのか?」


「はい。彼女には現場の厳しさを知るのが一番の教育だと思っています。ご迷惑とは思いますが・・・」


「いや、そっちが良いのならこちらは助かるばかりだ。今後もよろしくお願いしたい」


 そう言って頭を下げる両者。


「ええーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」


 唯一納得いってないのが、今声を上げたマリアンナちゃんだろう。

 なんか、私がサランドラにいないのは大きな損失だとか、このままアスタリータに就職してもいいんですか!?とか文句を言っているが、フィリッポさんはすべてスルーして、ウルバノさんと話し合いをしている。


 まあ、俺個人としてもアスタリータで修行するのは悪い話じゃないと思うし、ここはほおっておくことに・・・・いって!

 急に背中に衝撃を感じたと思って後ろを振り向くと、そこにはマリアンナちゃんがいた。

 俺の背中をポカポカ叩きながら。


「な、なんですかいきなり」


「コレナガさんがあんな事言うから、また帰れなくなっちゃったじゃないですか!馬鹿ー!」


 そう言いながら俺を叩き続けるマリアンナちゃん。


「いやいや、俺だけじゃないでしょ言ってたの!」


「知りません!」


 えええ・・・。俺だけ怒られるの理不尽じゃね?

 ふと窓を見ると、大きな月が出ているのが見えた。


 俺はマリアンナちゃんに背中をポコポコ殴られながら、アスタリータ商店ともそろそろお別れだな~とか、そんな事を考えていた。

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