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独身リーマン異世界へ!  作者: 黒斬行弘
第八章 森と砂漠の国「フォレスタ」
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なんで思いつかないの?

「こんな所にいたのね」


 声の方を振り返ると、そこには超絶美人が立っていた。

 まあ、エレオノーレさんだ。


「すみません、少しぼーっとしていました」


「そうですか」


 そう言うと、エレオノーレさんも俺達の隣に座る。

 だが会話があるわけでもなく、3人でぼーっと今度は川の流れを見つめていた。


 そして俺は、サランドラが提示してきた「スタンドプレート」の事について考えた。

 考えたけど、どうやってもあれを販売する為の方法が思いつかない。


 180万フォルンは大金だ。

 キャベツが60~70フォルンで売られている事を考えれば、それがどれくらいの大金かは、よそ者の俺にでもわかる。

 確かに売れれば200万フォルンとなり、差額の20万が利益となる。

 たった1個でこれはでかい。

 だけど、売れなければ、180万がアスタリータ商店の負担となったままだ。

 カンパーナのようなでかい店ならともかく、アスタリータのような個人商店では、それは大きすぎる負担だろう。

 しかも、全盛期と違って今は結構ギリギリのとこで勝負している状態だ。


 どうしたもんかなあ。


「あの、そろそろ帰りませんか?少し薄暗くなってきたようですし・・・」


「え?」


 エレオノーレさんに言われて周りを見回すと、確かに日が暮れようとしている。

 自分の思考の中に入り込んでて全く気が付かなかった。


「そうですね。そろそろ帰りましょうか」


「そうだね・・・」


 俺の言葉にユリアーナが元気なく応答する。

 何があってもへこまなそうな彼女も、今回ばかりはショックを受けてるようだ。


 そりゃそうだよな。

 紆余曲折を得て、ようやくなんとかなりそうだと思ったら、結局は最初よりちょっとはましな程度になったんだからね。


 そうなんだ。

 実は、最初よりは幾分か、ましではあるんだよ。

 けど最初に良い知らせを聞いて、その後落とされたもんだから、ダメージはでかいわな。

 フィリッポさんが、言う順番を逆にしてくれたら良かったのに・・・。


 それにしても一度もスムーズに事が運ばない。

 なんか呪われてるのか俺は・・・。


 一人で勝手に悶々としながら、俺はアスタリータ商店へとつながる路地裏へとはいろうとした。


「!?」


 しかし俺の足は角を曲がろうとしたところで止まってしまった。

 なぜならそこにはロザリアがいたからだ。

 濃厚なチューをしている最中のロザリアさんが。


【うわあ、あれロザリアちゃんでしょ?凄い・・・】


 ふと見ると、俺のすぐ隣からユリアーナが顔だけを出して小声で話しかけて来た。

 顔を真っ赤にして口に両手を当てている。


【あらあらあら、まあまあまあ】


 エレオノーレさんもユリアーナの隣から顔だけをだして覗いている。

 なんか発言が娘のそういう場面を見てしまった母親みたいだなエレオノーレさん。


 それにしても何というか生々しすぎるぜこれは・・・。

 よく見ると、若干足を絡ませているようにも見える。

 やばいな・・・。45年間純潔を守って来た俺には、これは刺激が強すぎる。

 ダメだ!一刻も早くここを離れないと、俺の何かが崩壊しそうな気がする!


【あの、そろそろここを離れませんか?】


【あ、そ、そうだね。うん】


【行きましょうか】


 俺の提案に皆さん快く賛成してくれたようだ。

 まあ、他人の、しかも知人のあーいう場面なんか、まじまじと見るものではないよね。


 そういうわけで、アスタリータ商店は目と鼻の先にあるのだが、ロザリア両親の、というよりウルバノさんの顔をまともに見る自信が無いと言う、俺とユリアーナの意見により、少し遠回りして帰ることに。


「あの、少し確認したい事があるのですが?」


 少しだけ気分が落ち着いた俺は、思い切って二人に確認してみることに。


「シンちゃんの言いたい事はわかるよ」


 俺の方に手を置いて、うんうんと頷くユリアーナ。


「やっぱり、そうなんですね・・・。僕の見間違いではありませんでしたか・・・」


「そうですね、私も少しびっくりしました」


 俺の言葉にエレオノーレさんも同意してくれる。

 知らない人が聞いたら、内容を何も語ってないのに、なんで同意できるのか?ってびっくりするかもな。


 だってさ?ロザリアがチューしてた相手さ、


「女の子」


 だったんだもん。


 いや、世の中にそういう方々がいるのはわかってたし、別にどうこういうつもりは微塵もない。

 けど、身近な知人がそっちのひとだったら、そりゃ驚くだろ?

 知り合いがチューしている所を見て衝撃を受け、さらにその相手が女の子だったことで、2重の衝撃ですよ。

 こんなもん、彼女いない歴45年の俺に短時間で処理できるわけがねえ。


 デートとかどうしてるんだろう?

 あ、同性だから一緒に出掛けた所で、ウルバノさんも何も思わないのか。

 友達と遊びに行った感覚だわな。


「シンちゃん何難しい顔してるの?」


「いえ、デートとかどうしてるんだろうとか考えてました」


「そりゃあ普通にしてるでしょ?記念祭も近いし」


「記念祭?」


「あ、そっか。シンちゃんは知らないよね。フォレスタでは年に一度、王国建立を祝う記念祭が行われるんだよ」


 へえ。それは初めて聞いたな。


「それは初耳です。ですが、記念祭とデートが何か関係が?」


「フォレスタの記念祭は、恋人同士が凄く親密になる期間でもあるの」


「へえ~」


 なるほど、つまり日本のクリスマスみたいなものか。

 そもそもはキリストの誕生を祝う祭りだけど、日本じゃケーキを食べる日or恋人や家族と過ごす日と化しているが、それと似たようなもんかもな。

 うらやまけしからん。


 クリスマスと言えば思い出した。

 昔コンビニでバイトしてる時、カップルでケーキの予約に来るやつとか居たんだよな。

 大体彼女の方が「これお願いしまーす」とか満面の笑みで持ってきやがるの。

 くそっ、思い出すだけで腹が立ってきたぜ。


 いやでも、今回の場合は女の子同士なわけであって・・・。

 それはそれで見てみたい・・・!


「シンちゃんシンちゃん、さっきからぶすっとしたりニヤニヤしたり、気持ち悪いよ?」


 しまったあああああ!

 どうも考えていたことが顔に出ていたらしい。


 なので、適当にごまかすために、コンビニでの思い出話を二人に披露する事にした。

 俺がカップルに嫉妬していた部分は絶対言わないけどね!


「へー、それ凄い便利だね!」


 俺の話を聞いたユリアーナは大興奮だ。

 

 コンビニではコンピュータ操作一つで演劇のチケットが買える事や、さっき言ったケーキの予約、それに加え、スマホアプリのカードなんかも購入できることを教えてやったんだ。

 特にスマホなんかで使うギフトカードが、実は仕入れ代金が実質発生しない話なんかは驚いているようだった。

 あれってさ、カードが売れた時に初めて仕入れが確定し、利益も確定するようになってるんだよね。

 なので、店に入荷した時点じゃ金銭的なものは全く発生していない。

 よく思いつくよなあんな事。


 現代社会の話が大好きなユリアーナは大変喜んで俺の話を聞いている。

 ただ、その隣で俺の話を聞いていたエレオノーレさんが、何か考え込んでるんだよね。


「あの、エレオノーレさん、どうかしましたか?」


 もしかして俺の話で気を悪くしたんじゃないかと心配になり、彼女に話しかけた。


「あ、いえ、特になんでもないんです・・・」


「いやいや、エレオノーレさん。その反応は気にしてくれと言ってるようなもんですよ」


「そうだよー。一体何を考えてたのかお姉さんに話してみ?」


 俺とユリアーナから問い詰められたエレオノーレさんは、しぶしぶ話をしてくれた。


「いえその、カーが売れた時点で仕入れと利益が確定すると言うシステムを、スタンドプレートの販売に生かせないかと思いまして・・・」


 スタンドプレートの販売にコンビニのシステムを生かす・・・?


「えっと、どういう事でしょう?」


「例えば、セキュリティーの問題から現品は店に置かずに注文性を採用して、お客様にお渡しした時点で仕入れ代金と利益が確定するようなシステムを採用できないかな~と思ったんです」


「あ、ああ!」


 なるほど!エレオノーレさんの言いたい事はこうだろう。

 1個200万もするような商品なので店に置いとくのは危険だ。

 なので注文制にして、客の手に渡った時点で初めて利益が確定すると言うシステムを作れないかという事だ。

 たしかにこれなら、アスタリータが背負うリスクはほとんど無いな。


「いやこれ凄いですよ!」


「あ、いえ、コレナガさんの話を聞いていたら、ふと思いまして・・・」


「と言うか、シンちゃんなんで思いつかなかったの?」


「え?」


「いや、そういうシステム知ってて、なんで思いつかなかったのかな~って」


 あれ?なんかこの展開前にもあったような・・・。


「ちょっと!ユリアーナ!」


「へ?」


「コレナガさんだって色々考えることが多いんだから、そんな事言わないの!」


「あ・・・。そうだよね。ごめん・・・」


「いやいやいや、謝られると余計あれなんでやめてくださいよ!」


「だよね!余計惨めになっちゃうよね!」


「ぶほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


「ちょっとユリアーナ!」


「ご、ごめん・・・」


 と、とにかく、俺達の前途にちょっとは明るい光が差した気がする。

 俺のコロロはダークサイドに落ちそうだが・・・。

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