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独身リーマン異世界へ!  作者: 黒斬行弘
第八章 森と砂漠の国「フォレスタ」
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なんで俺には幼馴染イベントが無いんだ

 次の日、俺達はウルバノさんの計らいで、イノシシの焼肉を食べれることになった。

 正直昨日から楽しみで仕方なかった。


 けど、ガスも無いこの世界で、どうやって屋台に火をつけるんだ?


「あ?お前何言ってんだ?木炭を使うに決まってるだろ」


 こいつ何言ってんの?みたいな顔でウルバノさんに言われた。


「デスよねー」


 そういえばそうだった!

 しばらく料理なんか自前でしてなかったから、炭の存在なんか頭の中からきれいさっぱり無くなってたよ!

 屋台って聞いた瞬間、ガスの事しか頭に思い浮かばなかった・・・。


「あれ?それ古い炭じゃないんですか?」


 ふと見ると、新しい木炭があるにも関わらず、古いっつーか、どう考えても一度使いました的な炭をウルバノさんは使おうとしていた。


「おう、木炭はな、新しいやつは火が付きにくいんだ。だからまずは消し炭と呼ばれる火付きが良いお古から使うんだ」


「へえ~」


「というかお前さん、これまでどうやって火を起こしてたんだ?」


 まじかよ・・・。

 ロックストーンでは、奴隷なので中古の炭しか無かったと思ってたんだけど、使いやすいから一度使った炭を利用してたのか・・・。


 俺は日本に住んでる時だって、ずーっとインドアの人間だったんだ。

 そんな事全然知らなかったよ。


 俺にとってのアウトドアと言えば・・・


・花見と言えば、オンラインゲームの花見イベント

・祭りと言えば、人気アイドルグループの推しメン生誕祭

・クリスマスは、終了のお知らせ

・正月は、オンラインゲームの新年おめでとうイベントマップで、気の合う仲間とパーティー(プレイ)


 ダメだ、なんか泣きたくなってきた!


「うわっ!どうしたのシンちゃん?一人でテーブルに突っ伏しちゃって」


 アスタリータ家のリビングで、一人で薄暗がりの部屋で一人でへこんでいた俺をみたユリアーナが声を掛けて来た。


「いえ、あまりの自分の知識の無さに、へこんでいた所です」


「は?」


「別に大したことじゃないんですよ。それよりどうしたんです?」


「えっとね、ウルバノさんがそろそろ肉を焼くからみんなを呼んで来いって」


「ホントに!?」


 思わず「がたっ」と音を立てて立ち上がってしまった。


「ただね・・・」


「ん?なんですか?」


 あんなに焼肉を楽しみにしていたユリアーナが、困った顔をしている。


「実はさ、ウルバノさんの機嫌がMAXで悪いのよねえ」


「へ?何故です?」


 だって、別にさっきまで機嫌なんか悪くなかったぞ。

 と言うか、鼻歌を歌いながら準備してたくらいだぜ?


「まあ、くればわかるよ」


 くればわかる?どういうこっちゃ。

 そう思いながらも、俺は素直にユリアーナの後ろをついて行った。


「すみません遅れました」


「おう・・・」


 ウルバノさんが、俺の挨拶にどすの利いた言葉で返事をしてくる。

 こええ・・・。

 何か怒ってるというより、まさに不機嫌オーラが全身から漂っているのが見えるようだ。

 普段怖い物知らずのユリアーナさえ、あまり近寄らないようにしている。


 が、ロザリアとソニアさんはいつもと変わらない様子で談笑をしていた。

 俺の知らない男と。


「あれ、誰です?」


「なんか、ロザリアさんの幼馴染みたいですよ」


 俺の言葉にエレオノーレさんが答えてくれた。


 ほお、幼馴染ですか。

 なんか良い響きですね。


 と言うか、なんで異世界転生してきた俺には幼馴染イベントが起こらないどころか、他人の幼馴染イベントを見せられなきゃいけないんだ?

 ウルバノさんだけでなく、俺まで不機嫌になりそうだぜ・・・。

 

「あ、コレナガさーん!」


 そんな不毛な事を考えていると、ロザリアからお呼びがかかった。

 たぶん、幼馴染の彼を紹介されるんだろう。


「コレナガさん紹介しますね!こちら、幼馴染の「リーノ・レマーティ」です」


 ロザリアが幼馴染の彼を俺に紹介してくれたので、俺も自己紹介をする事に。


「シン・コレナガです。よろしくお願いします」


「・・・ども・・・」


 すげえおざなりな挨拶をされてしまった。


 なんだこいつ?なんでこいつも不機嫌なわけ?

 ウルバノさんも不機嫌。俺も不機嫌。そしてこいつも不機嫌。

 あれか?今日は男性陣の不機嫌祭りか何かか?


「シンちゃんシンちゃん」


 ニコニコで俺にリーノを紹介しているロザリアをよそに、わけのわからん不機嫌合戦を繰り広げていた俺をユリアーナが呼ぶ。


「なんですか?」


「あれ、あの男の子!すごい不機嫌な顔してたね!」


「ですね・・・。わけがわかりませんよ」


「えー!そんなの決まってるじゃん!」


「え?彼が不機嫌な理由わかるの!?」


「えー!シンちゃんわからないの~?」


 そんなのわかるわけねーよ。むしろなんでわかるんだ?


「いえ、まったくわかりません」


「それはね・・・シンちゃんという、全く見知らぬ男が、自分の幼馴染であるロザリアと仲良くしているのを知って、嫉妬してるんだよ」


 ・・・は?

 認めたくはないが、割とイケメンの部類に入るであろう彼が俺に嫉妬?

 何を言ってるんだこのローフェルのお姉ちゃんは。


「いやいや、それはありえないですよ。彼、かなりかっこいいじゃないですか。その彼が僕に嫉妬なんかするとは思えませんね」


「わかってないなあシンちゃんは。この際シンちゃんがイケメンかどうかは関係ないの!近くに男の影があるってことが問題なの!しかも一緒の家に泊まってるしね」


 そんなもんなのか?


 あ!すると、ウルバノさんの不機嫌の理由ってのは・・・。

 俺はそっとウルバノさんのほうを見てみることに。


「じいいいいいいいいいいいいっ」


 うわー、あのおっさん、リーノとロザリアが仲良さそうに話しているのを、きっつい顔で見てやがる・・・。


「という事は、ウルバノさんの不機嫌の理由は・・・」


「そそ。娘に近寄る男に不機嫌になってるの。しかもロザリアちゃん楽しそうだしね」


 なるほどなあ。

 しかしあのリーノって奴、ウルバノさんの不機嫌オーラは感じているだろうに、全く動じてないのがすげえ。


「おい!いつまでくっちゃべってやがる!ちっとは手伝いやがれ!」


 び、びっくりした!

 いきなりウルバノさんの怒声が聞こえて来た。


「もう!お父さん、リーノが来てるんだから、大きな声出さないでよ!ごめんえリーノ」


「いや、相変わらず声でかいおっさんだな」


「おい聞こえてるぞ!」


 リーノは慣れっこな感じで「やれやれ」といったジェスチャーをして、ウルバノさんに答えている。


 これもしかして、彼が来ると恒例行事か何かなのか?

 ソニアさんも全然うろたえてないし。


 それにしても、考えてみればウルバノさんからあんな態度をとられたことは俺は無いんだけど?

 やっぱイケメンが関係あるんじゃねーの?

 その事をユリアーナに話してみた。


「シンちゃんには私達がいたからね」


「どういう事ですか?」


「シンちゃんだけをロザリアさんが連れてきたら、たぶん追い出されてたかもよ?」


「ええ!」


「でも、私とエレオノーレがいたからね」


「そんなもんですか?」


 いやあ、こういう関係の話は全くわかんねーよ。


「それと、コレナガさんと一緒に住んでいて、コレナガさんが娘に手を出すような男じゃないってわかったのも大きいと思いますよ」


「ははっ、それは喜んでいいのか悲しむべきなのか悩むとこですね」


 エレオノーレさんの言葉に顔が引きつりそうになっちまったぜ。

 大体、彼女いない歴45年の俺に、女の子に手を出す方法がわかるわけがない。

 日本で40年、異世界5年だ。

 泣きたい・・・。


「でも、これはちょっと面白くなりそう」


 俺の隣で一連のやり取りをみていたユリアーナがニヤニヤしながらそうつぶやいた。


「なんでですか?」


「いやあ、突然幼馴染の元に現れたライバルに、リーノ青年はどう対処するのかなーって」


「え?ええー!それもしかして俺の事!?」


「他に誰がいるのよ」


「絶対ありえませんよ。だってウルバノさんは、俺がユリアーナとエレオノーレさんと一緒だったから何も思わなかったわけで」


 だったら、このリーノって奴も一緒だろう。


「いやいや、ウルバノさんは妻子がいる身でいろいろな人生経験もあるから。けど彼は見た所20前後でしょ?そんな余裕無いって」


「ええ・・・」


 楽しそうにユリアーナに言われて、俺はリーノの方をちらっと見てみた。


 うわあ、俺の方をなんか時々威嚇するように見てるよ・・・。

 面倒くせえ・・・。

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