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独身リーマン異世界へ!  作者: 黒斬行弘
第八章 森と砂漠の国「フォレスタ」
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アスタリータ商店の今後

 二日目。


 俺とエレオノーレさんは冒険者ギルドでクエストを受注、ユリアーナ達は猪狩りに出かけた。

 俺としては剣を振るえるようなクエストを希望したんだが、エレオノーレさんから


「街中でクエストを行いながら情報収集した方がよろしいのでは?」


と、言われ、街中メインで活動している。

 考えてみればティルデ捜索がメインなわけで、そりゃあ街の中での活動が良いに決まってるよな。

 そして、朝と昼は一人でカンパーナストアに出かけ、夜はユリアーナと一緒に偵察に出かけた。

 そして何故か、俺のポケットマネーからユリアーナのおやつを購入してから帰路に就いた。


 三日目。


 相変わらず俺とエレオノーレさんとでクエストをこなしつつ情報収集。

 朝と昼は一人で偵察に行き、夜はユリアーナと偵察にでかけ、何故か俺のポケットマネーからユリアーナのおやつを購入してから帰路に就いた。


 四日目。


 今日も街中でエレオノーレさんとクエストだ。街で住民の皆さんと話していると、このフォレスタ王国は砂漠と森が大部分を占めているんだが、砂漠では昼夜の温度差が激しく、森は割と温暖な気候で安定しているらしい。

 なので、森と砂漠では狩れる動物も違うし育つ植物も違うんだとか。なかなか面白い話を聞くことが出来た。

 そして夜、俺とユリアーナで偵察に出かけ、何故か俺のポケットマネーからユリアーナのおやつを購入してから帰路に就いた。



「一体ユリアーナさんは、何で自分のおやつ代を僕から出させるんですかね!?」


 五日目の夜、ついに俺は溜まっていた不満を爆発させた。

 大体、猪狩りのアルバイト代金が出てるんだからそこからお金を出せばいいのに、俺に出させる神経がわからんわ!


「ええっ、シンちゃんも可愛い女の子におごってあげることが出来て嬉しかったくせに」


「全く嬉しくありません!」


「そんな事言っていたらもてないよ?」


「彼氏にたかろうとするような女性からもてたいとは思いませんから結構です」


 ユリアーナは何やらぶーぶー言っているが知ったこっちゃねーよ。


 今俺達は、アスタリータ家のリビングで作戦会議を行おうとしていた。

 で、会議の前に積もり積もったうっぷんを爆発させていたんだ。


「喧嘩はいけませんよ!」


 ロザリアさんから叱責が飛んできたが、これは断じて喧嘩ではない。


「これは喧嘩ではありませんよ。僕からユリアーナへの正当な抗議です」


「なら仕方ありませんね」


「ええっ!なんかずるーい!ロザちゃんもあっさり引き下がらないでよー!」


「ずるくありません!」


 俺はユリアーナのうるさい抗議を却下してやった。

 言いたいことはまだまだたくさんあったが、ロザリア父と母の視線がそろそろ痛くなってきたので、真面目に本題に入りたいと思う。


 さて、なんで五日目の夜に会議を行っているかと言うと、思ったよりもカンパーナストアのデータが収集できたからだ。

 当初は1週間は様子を見たいって言ってたからね。

 カンパーナはアスタリータ商店の事なんて全く意識していないので、俺達が毎日通っても気にも留めていなかったと思う。

 そりゃあもう、売り場の隅から隅まで観察しまくったよ。

 それと、ユリアーナとロザリアが狩りを頑張ってくれたおかげで、思ったよりも早く3週間分の資金が貯まったんだ。


 なので、1週間様子を見るつもりだったけど、色々と提案できる案の考えがまとまってきたし生活費や軍資金も貯まったので、こうして集まってもらったわけだ。

 ただ、その為には親父さんに確認しとかないといけない点がいくつかある。


「ウルバノさん、アスタリータ商店が品物を仕入れている商店はカペリ商店でしたっけ?」


「ああ、うちは以前からカペリ商店だな」


「昔からお付き合いがあったとか?」


「いや、単に近くに商店があったからそこにそこにしただけだ」


「えっと、この街にはそういった商品を売ってくれる商会はカペリ商店だけですか?」


「いや、サランドラ商会と言う店がある」


「そこは利用されていないんですか?」


「カペリの方が近かったからな。値段はそう変わらねーし」


「なるほど・・・。ちなみに、カンパーナストアはどこから仕入れているんでしょうか?」


「カペリ商店だな」


 カンパーナストアもカペリ商店から仕入れているのか・・・。

 だとすると、カンパーナストアには、かなり安く(おろ)しているんだろうな。


「あまりに値段に差がありすぎるから、カペリに文句を言いに行ったことがある。うちも安く仕入れさせろ!って」


「え!?それは、お断りされたのでは・・・?」


「ああ。カンパーナと同じくらい仕入れてくれたら可能ですって言われた」


 そりゃそうだろうなあ。

 ようするに商品1個あたりのカペリの利益は少ないが、大量に卸すことによって利益を得るわけだからな。

 アスタリータ商店のような家族でやってる個人経営の店では、大量に仕入れる事なんて、そりゃ不可能だよ。


 しかし、これでやっと今後何をすべきかがまとまった気がする。

 なので俺は、とりあえずの今後の予定を話し合う事にした。

 だがその前にひとつだけ確認しときたい事がある。


「えっと、今後の予定を話す前に、一つだけ確認したい事があります」


「おう、なんだ確認したい事ってのは?」


「今回の作戦で達成したい事は、カンパーナに勝つことではない、という事です」


 俺の言葉を聞いた全員が「こいつ何言ってるんだ?」って顔になった。


「ちょっと待ってください。それでは私達は、何の為にこれまで動いてきたんでしょう?」


 皆の気持ちを代弁するかのように、エレオノーレさんが俺にそう聞いてくる。

 まあ、気持ちはわかる。わかるけどさ、それは無理なんだよ。


「僕が考えているのは、アスタリータ商店がカンパーナストアの存在に関係なく、今後も経営できるようにしていく事です」


 はっきりいって、アスタリータ商店とカンパーナでは、経営規模が違いすぎる。

 掛かっている金額も桁違いだと思う。

 そんな大規模スーパーに個人商店が勝つなんて絶対無理だ。

 なので俺としては、カンパーナと共存の道を歩みたいと思っている。


「でも、あんな大きなお店と共存する事なんて本当にできるのでしょうか?」


 ロザリアが不安そうな表情でそう聞いてくる。

 まあ、信じられないのはわかるよ。これまでそれが出来なくて苦労してきたんだからな。


「大丈夫です!これからの予定をお話ししますので、その通りにやっていけば、全員とは言えませんが、必ずお客さんは戻ってきます」


 かなり力強く言ったつもりだったが、ロザリア達はかなり不安そうな表情をしている。

 だが、俺がこれ以上言葉で何を説明した所で、不安は解消されないだろう。

 そもそもこの案が成功しなければ店を畳むしかなく、俺にはカンパーナに勝つための方法なんかわからない。

 だったら、思い切ってやるしかないだろう。

 幸いアスタリータ商店には負債は無く、失敗したとしても土地店舗を売却すれば十分お釣りがくることはわかっている。

 これは最初に確認したから間違いない。

 もし負債があって、これ以上後が無い状況だったりしたら、俺は絶対店の再建なんか受け入れてなかったと思うわ。


「それで、今後どうするつもりなの?」


 俺がそんな事を考えていると、ユリアーナが質問してきた。


「そうですね。今後についてはこの予定表の通りに行いたいと思います」


 俺は一枚の用紙を差し出した。

 そこには今後のおおまかな予定を書いてある。


「おい!これはどういう事だ!?」


「シンちゃんこれどういう事なの!?」


 ウルバノさんとユリアーナの声がほぼ同時に聞こえてきた。

 他の面々も困惑の表情で俺を見ている。


「ここに書かれている通りです。アスタリータ商店は最長1週間先までの営業で、一旦店じまいをします」

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