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独身リーマン異世界へ!  作者: 黒斬行弘
第七章 幻想神と現代神
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転生者達の目的

「ちょっと、シンちゃん大丈夫!?」


 余程(よほど)俺の顔色が悪かったのだろうか?ユリアーナが声を掛けてきた。


「大丈夫です。今更ながら、自分の置かれている立場に、少しだけショックを受けただけです」


 実際ショックだったよ。

 だって、生きてる限り命を狙われますって宣言されたようなもんだ。


 ただ、絶望までは行ってない。

 たぶん、同じ秘密を共有している仲間・・・と言って良いかわからないけど、地球人が身近にいることがわかって安堵もしているんだと思う。


 実際、澤田もミュリエルも元は同じ地球人で、幻想神から見たら異世界からの転生者となる。そして適格者では無い。

 という事は、幻想神から命を狙われているという事だ。

 俺は小心者で小物だから、同じ境遇の奴が自分だけじゃないとわかっただけでほっとしちゃうんだよ。


「転生者がこの話を聞いた時は、そりゃみんなショックを受けるものさ。何もあんただけじゃない、安心しろ」


「そうですわ。私だって適格者の話を聞いた時は、ショックで寝込んでしまいそうでしたわ」


「アリサはホント、この世の終わりみたいな顔してたよね」


「そこまで酷くはありませんわ!」


「えー、顔が土気色になってたよー」


 ミュリエルとユリアーナは、二人でギャーギャー騒ぎ出した。

 おかげで少しは気が紛れた気がする。


 少し冷静になれたからか、色々と考える余裕も出てきた。


「えっと、仲良く遊んでる最中に申し訳ないのですが、少し聞いても良いですか?」


「ああ、かまわんよ」


 澤田は二人に構わず俺に返答する。


 転生の理由もわかった。

 適格者が何かもわかった。

 なので俺は、どうしても聞いておかなければならない、最後の質問を行う。


「転生する理由と適格者についてはよくわかりました。では、皆さんはこうして集まって、何をされてるんでしょうか?しかもリバーランドのような国家と手を組んでまでです」


 ただ単に、転生者だけで集まっていたのなら、互いの身を守る目的なのかなって考える所だけど、この世界でもかなりの強国を味方に付けてまで集まる理由ってなんだ?って勘ぐっちゃうよな。


「そうだな。本当は、その話を最初にする予定だったんだが、あんたが予想外の質問をしてきたからな」


 たぶん、転生が行われている理由について、俺が質問したことを言ってるんだろうなあ。


「それはすみません、でも聞かずにはいられなかったもので」


「いや、責めているわけじゃないさ。おかげで色々と突っ込んだ話も出来た」


 という事は、俺があの質問をしなかったら、ここまで内情は明かしてくれなかったって事か?

 良かったあ、聞いといて。


「俺達が集まっている理由、それは幻想神を倒すことだ」


「は?」


 いやいや、思わず間抜けな返答をしてしまった。

 でも、神を倒すって、そんな事できるわけ?


「当初の予定ではな」


「は?」


「最初はそのつもりだったんだが、倒す方法が結局わからなかったんだ」


「それは、神様ですからねえ。簡単には倒せないでしょうね」


「冷静に考えるとな。けど、あの時はみんな興奮してたからなあ」


「あの時ってのは、幻想神のやっている事を知った時ですか?」


「そうそう。あまりの幻想神のひどさに、怒りがピークに達してた時だ」


 まあ、あの内容を聞いたら、俺みたいにショックでへこむか、幻想神のやりかたに義憤を覚えるかのどっちかだろうなあ。


「私もその話を聞いた時は、思わず「正気でしたの!?」って澤田に聞き返したものですわ」


「そういうなよ。冷静になって考えたら、ちょっと無理なのはすぐわかったんだし」


 再び応接室が賑やかになってきた。

 まあ、俺も急にあんな事を話されたら、そりゃあ怒りのあまり「神を倒す!」とか、TVアニメかゲームで出てくるちょっとあれなセリフを口走ってたかもしれない。


 あれ?ちょっと待て!

 これまでの澤田の話を、何の疑いもなくずっと黙って聞いてたけどさ、澤田はこの事を「誰から聞いた」んだ?

 ええ!いやだって、澤田ばかりか、人類さえ誕生していない時の話とかされたんだよ?こいつはどうやって今の話を知ることが出来たんだよ?


 あーでも、考えてみれば、俺は神と名乗る奴と会話する事が出来ていた。

 だとすると、澤田も神と会話して仕入れた話の可能性もあるのか。

 いや、今はとりあえず彼らの目的を聞こう。その後情報源を聞けばいい。


「盛り上がってるところすみません」


 俺は、俺をほったらかして、いまだに「熱い怒りを爆発させる」澤チンについて盛り上がっていた3人に話しかけた。


「あー、すまん!ついこいつら相手にムキになっちまった」


「いえいえ」


 外野からミュリエルとユリアーナの抗議が聞こえていたが、澤田と俺はそれを無視して話を始めた。


「それでは、皆さんが集まっている本当の目的について教えて頂けますか?」


 さっき澤田が真面目に答えていればこんなに脱線する事も無かったんだろうけど、そのおかげで、誰から聞いた話なのかって疑問が浮かんだからノープロブレムだ。


「それについては、それほど難しい目的じゃないんだ。要は、幻想神の邪魔を徹底的に行う。それだけだ」


「邪魔ですか?」


「そうだ。幻想神は文明の進化などを嫌っているという話はしたよな」


「はい」


 そもそも、そういう風にこの世界の人類を創っていると聞いた。


「だから俺達は、逆にこの世界には無い文化や文明を持ち込んでいるのさ。それが奴の一番嫌う所だからな」


「嫌がらせ・・・ですか?」


「まあ、そんなもんだ。人間が神に抗うって言っても、大したことは出来んよ」


 なんか、思ってたのよりも随分としょぼい目的だったので、若干拍子抜けしてしまった。だってねえ、アニメとかマンガだったらさ、幻想神に対する反撃の手段とかを彼らは持ってて、それを幻想神に行使する機会を伺ってるとかありそうじゃん。


 なので、オブラートに包みながらその旨を伝えてみた。


「そんなうまい話はねーよ」


 澤田から苦笑いをされてしまったぜ・・・。


「でも・・・」


「?」


「俺達もただ単に嫌がらせをやってるわけじゃないんだぜ」


「どういう事ですか?」


 どう考えても、幻想神の気分を害するくらいしか、効果のほどは無さそうなんだが・・・。


「これは俺達がリバーランドと手を組んでいる事と関係があるんだが・・・」


 リバーランドと手を組んでいる事が関係している?

 一体どういう事だろう?


「テレジア・ロンネフェルトは知っているよな」


「もちろんです。リバーランド王国の大公閣下です」


「そのテレジア・・・っつーか、ロンネフェルト家だがな、彼女らは過去に存在した転生者の末裔だよ」


「・・・・・・・」


 はああああああああああああああああああああああ!?

 あの国王一家って、地球人の血が混じってるって事?

 いやでも、確かにテレジアの能力は常人のそれじゃないって話は、バリーから散々聞かされたな。

 実際にテレジアと接した俺も、それは理解できた。

 それに、転生者の子孫の中には、とてつもない能力を持った者も生まれてくるって話も、さっき澤田から聞いたばかりだ。


「まあ、何が言いたいかというとだな・・・」


 俺が驚きのあまり黙っているしか出来ないでいると、澤田はさらに話を続けた。


「ようするにテレジア・ロンネフェルトは、文明や文化の進化については、俺達に近い感覚を持っているわけだ。そして彼女は王国の実権を握っている。これが意味する事がわかるか?」


 こんなヒント出されたら、誰だってわかるに決まってる。


「国家ぐるみで、文化や文明の進化を促していくって事ですか?」


「その通り」


 期待通りの答えが返ってきたからか、澤田は上機嫌で俺に答える。

 確かに、国家レベルでそれを行っていたら、嫌がらせレベルでは済まないだろう。

 考えてみれば、ハイランドがリバーウォールの混乱に乗じて攻め込んできたのも、幻想神の必死さを表しているとも言える。


「そういう意味じゃ、あんたが提案した著作権だか特許だかのあのプランは、非常に良い文明促進の種だったよ。テレジアが食いつきそうな話だったしな」


「しかし僕は、彼女から信用されていなかったようですけどね」


 俺の案がそんなに気に入ってたのなら、あんな仕打ちをすることなんて無かったじゃないか。なんで、これまでの関係性をぶち壊してまで、俺を疑うような姿勢を見せていたのか、全く理解できんよ。


「それは仕方ない。彼女らも、適格者からは散々煮え湯を飲まされてきたらしいしな」


「煮え湯ですか?」


「ああ。かなり騙されてきたらしいぜ。基本人が良いからなあいつらも」


 つまりあれか?俺が来るまでの、それまでの適格者の行動のおかげで、俺にまでとばっちりが来た感じですか?


 ふざけんなよマジで!

 俺はいまだにバリーやベアトリクスの、それまでの親しみを込めたものじゃなく、完全に疑いの目でみていた表情を忘れられないんだよ!


 はあ、何か疲れたな。

 俺は座っていたソファーに、それまでよりも深く腰を落としてため息をついた。

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