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独身リーマン異世界へ!  作者: 黒斬行弘
第一章 ようこそ!第二の人生へ
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レベル1の魔法使い

 充実したハンターライフを森の中で送っていたら、助けを求める声が川の方から聞こえてきたので、慌ててそちらへ向かってみた。


 しばらく走ると、川向こうから数人の冒険者らしき格好をした奴らが慌てた様子でこちらへ向かってくる。そしてその後ろ側から、なんと人間の2倍はあろうかと思えるようなモンスターがそいつらを追いかけていた。


「な、なんじゃこりゃあああああ!」

 俺はしばらくぽかーんとその馬鹿でかいモンスターを見ていたんだけど、どんどんその姿が大きくなってくる。つまり、こっちに近づいてきてるんだ!


 これはやばいと思った!とてもじゃないが、俺がどうこう出来る相手じゃないと一瞬で判断出来た。転生してまだ数日なのに、何も達成してないうちに死ぬわけにはいかないんだ!そう思って逃げようとした。


 そしたら、最初に逃げてた奴等の3人のうちの一人がついに捕まってしまった。左手で襟の部分を掴まれた後、そのままポイッと投げ捨てられる。なんつー力だよ・・。


 投げられた奴は背中を打ったらしく、まだ立ち上がることが出来ないでいた。そしてモンスターは、右の手に持っていたこん棒をそのままそいつに振り下ろした。


 ぐちゃ


 そんな音が聞こえた気がした。こん棒で思い切り殴られたそいつは、もう原型がわからないくらいになってぴくりともしない。


「うそだろ・・・・」

 俺は恐怖でそのばに座り込んでしまった。気を抜くと吐いてしまいそうなのを必死で堪えた。だって、だってさ、いきなり人が潰れるように死んじゃったんだぜ。ゲームじゃこんな風になったこと無いよ!


 その時はっきりと自覚した。ここは本当に日本じゃなくて異世界なんだって。いつ自分がああなってもおかしくない世界なんだと。


 さっきまで、将来の計画をルンルンで立ててた時の浮かれた気持ちなんか粉々にされて吹っ飛んじまった・・。体の震えは止まらなかったが、とにかくここを逃げ出さなきゃという思いだけで、俺は恐怖でしゃがみこんでた体を立ち上がらせた。


 ふと見ると、逃げてた残りの二人のうち一人は俺と同じように立ち上がってるが、もうひとりは完全に恐怖で身動きが取れなくなっているようだ。よく見ると股間のとこがぐっしょりと濡れている。完全に腰を抜かしてるようだ。そりゃそうだよな、あんなの見せられたら誰だってビビる。


 そしてモンスターは、その身動きが取れない奴の方へ向かっていく。そしてさっきと同じように襟を掴んで放り投げた。投げられた男は、今度は近くにあった木に思い切り肩からぶつかって、地面に落下した。そして苦しそうにうずくまっている。


「おい!早く立て!そのままじゃやられるぞ!」


 俺はそいつに怒鳴ってみたが、恐怖と痛みで全く身動きが取れないようだ。そしてさっきと同じように、再びモンスターがこん棒を振り上げた。くそっ!どうにもならねえ!



ボンッ!


 突然、モンスターの背後で軽い爆発音が起こった。こん棒を振り下ろそうとしていたモンスターは、背後から爆発の原因を作ったもう一人の方を向いた。


 あいつらの仲間の一人が、あの巨大なモンスターに魔法を放ったようだ。それほど強力な魔法では無かったけど、モンスターの注意を逸らせるには十分だった。モンスターの興味は、明らかにフードの魔法使いに移っていた。


「今です!その場所を離れて!」


 フード姿の魔法使いが、フードを下げながら仲間に向かって叫んでいる。その下からは、芸術とも言えるような美しいエルフの女の子が現れた。


 ああ!この魔法使い、この前の超美人のエルフの女の子だよ!ほら、俺が仲間が見つからないって冒険者ギルドで腐ってたら、俺より後からやって来て、俺と同じレベル1なのにすぐにパーティーに参加できた子!


 でも待てよ?確かこいつらが受注したクエストは、そんなに高難易度のものじゃなかったはずだぞ?俺が盗み見したからそれは間違いない!それがなんであんな化物に追いかけられてるんだ・・・。


 俺がそんな事を考えてる間にも、モンスターは今度はエルフの魔法使いに向かっていた。エルフの子は何度も魔法をそいつにぶつけてはいるが、一発一発の魔法の威力は大した事がないらしく、足止めにすらなっていなかった。そりゃあレベル1だからなあ。


 そうこうしている内にモンスターは魔法使いの所にたどり着いてしまった。くそっ、さっきの男の奴と連携すればなんとかなるか?そう思った俺は、エルフの魔法使いに助けられた男の方を向いた。


 そしたらあの男、脇目もふらず俺達から遠く逃げようと走っていた。いや、もしかしたら、街の兵士を呼びに行ったのかもしれない。そうだと信じたい!


 しかしこの状況、どうすりゃいいんだよ!俺は魔法も使えないし、剣だってまともに振れない。動物用のスリングなんか絶対あいつに効くわけがない。さっき試しに撃って見たけど、かすり傷一つ付いてないように見えたよ・・・。


 (逃げるか・・・?)


 俺の中に、一瞬そんな考えが浮かんだ。

 だってさ?俺が居た所で何の役にも立たないよこれ。それよりも早いとこ街に戻って助けを呼んだほうがいいに決まってる。だって、ここで二人共死んじゃったら、あのモンスター、街に向かってくるかもしれないじゃん!


 俺はそう結論を出して、一気に走りだした。そうだよ!俺が今更あの子に加勢した所で共倒れになるのがオチだ!


「だから俺は間違ってなーーーーーい!」


 そう叫びながら、俺はモンスターの背後から思い切り剣を叩きつけていた。


 俺は一体何をやってるんだよ・・・。

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