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独身リーマン異世界へ!  作者: 黒斬行弘
第五章 リバーランド本国
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とあるコレナガ家の休日

 俺がマイハウスとマイメイドさんをゲッツしてから1週間が過ぎた。


 最初は、同じ屋根の下にあんな可愛い子がいるとかありえねええって、勝手に緊張やら混乱やらしていたんだけどね。

 よーく考えてみれば、別に向こうが俺の事を好きなわけじゃないし、愛想はよくしてくれるが、自分の人生掛かってるんだから、そりゃ必至だろうな~と、意外と早く冷静になれた。

 俺がイケメンモテまくり男だったら、彼女は俺に気があるに違いないとか考えたのかもしれんが、残念ながら俺はブサメンだ。


 それを差し引いても、やっぱり女の子とご飯食べれるのは楽しいね!

 だって採石場では、屈強な野郎どもとずっと飯食ってたしなあ。

 いや、あれはあれで楽しかったな。


 あ、それとアンネローゼたん、1級奴隷であることを確認。

 10歳の頃に両親を事故で亡くし、親族もおらず、やむを得ず奴隷商に拾われたそうだ。  

 で、その頃からすでに美少女っぷりを発揮していたアンネローゼを、奴隷商は将来の上級貴族様専用メイドとして教育した。


 じゃあなんで俺みたいな末端の貴族の所に来たのか。


 これは俺の推測なんだけど、たぶんテレジアが配下の人間に、奴隷市場からメイドの調達を命令したと思うんだよね。

 それで、命令を受けた人は、テレジア閣下が直接命令されるくらいだから、それなりのメイドを調達しなければならないと判断。

 で、メイド商人に依頼した結果、アンネローゼを購入、そういう流れじゃないかと思うんだよ。


 だってさ、この子、超有能だよ?

 料理洗濯清掃はもちろん、読み書きもOKで、なんと剣の扱いも出来ると言う。

 いざと言う時に、旦那様をお守りする役に回る事も想定して教育を受けていたんだってさ。

 あと、俺がアンネローゼを前にしどろもどろになって、グダグダの説明をしている時も、その中から俺の言いたいことを的確に判定して、行動してくれるという、スーパースキルも持っている。


 なんか俺みたいな末端(まったん)の所に来てもらって、申し訳ないくらいの高っスペックでした。

 そしてそれを口にすると、


「とんでもございません。こんなに色々と自由にさせて頂いて、本当に感謝しております」


 と、旦那様ヨイショも忘れない、スーパー出来る子だった。


 アンネローゼのお気に入りは、我が家の書斎だ。

 最近俺が歴史書や冒険譚を、町の本屋で購入して書斎で読んでいると、すげえきらきらと目を輝かせて本を見てるわけですよ。なので、


「あの、空いてる時間に、好きに読んでもらって構いませんよ?」


 つったんだよ。そしたら


「ホントですか!?」


 ってすげえ勢いで食いついてきた。

 あれはかなりの本好きだと思う。


 実際、暇さえあれば本を読んでいるようだ。

 この前は、俺が帰って来たのにも気付かずに、ずーっと本を読んでて、日が暮れるまで気付かなかった事があった。


 なんか邪魔するのも悪いんで、声はかけずに、風呂沸かして料理作ってたら、慌てて書斎から降りてきて、土下座する勢いで謝って来るアンネローゼたんテラカワユス。


 そんなに本が好きなら、気兼ねなく本が読めるよう、毎週日曜日は丸一日休みにしたよ。

 この世界の奴隷さんは、基本、休みが無いみたいなんだけど、あり得ないだろそんなの。

 言っておくが、この世界の常識は俺の非常識だからな。


 最初はすげえ抵抗してた。休みなんか私がもらうわけには参りません!つって。

 でも、一日中本が読めるよ~とかささやいてたら、あえなく落ちましたw


 そんなこんなである日の日曜日。


「よく来てくださいました。どうぞお入りください」


 バリーとベアトリクスが、俺の昇進祝い【?】も兼ねて、お前さんの新居を見てやるよって事で、我が家にお招きしたんだ。


「ちょっと家の中を探索してもいいかしら?」


 ベアトリクスは俺の新居に興味津々らしい。

 断る理由もないので、OKを出すと、寝室やら書斎やら、台所やら食堂やら、本当に家の隅々まで見回っていた。


 バリーの方は家自体にはあまり興味がないらしい。

 さっきからずっとアンネローゼの方ばかりを見ている。

 まあ気持ちはわかるw

 だが、いくら元上司とは言え、おてつきは許さん。


「それにしてもなあ」


 夕食の後、食後の紅茶を飲みながら、バリーが話しかけて来た。


「あのシンが、まさか士爵になるとは思わなかったぜ」

「あらそう?」

「なんだよ、お前さんは驚かなかったのか?」


 全く驚いていない風のベアトリクスにバリーが聞き返す。


「だって、あんなシステムを考案したんだもの。あれがシン・コレナガ名義のプロジェクトだったら、もっと上の地位が与えられてもおかしくなかったわよ」

「そんなにか?」


 バリーの驚きに、肩をすくめて答えるベアトリクス。


 評価されてるな~とは思ってたけど、それほどとは思わなかったよ。

 まあでも、あんまり地位があがっても、厄介事に巻き込まれるだけだろうし、今の地位で十分満足だけどね。


「それにしても、あなたの持って来たプロジェクト、思ってたより大変で、気が滅入りそうよ」

「ははっ、すみませんベアトリクス」


 実際、俺もこんなに大変だとは思わなかった。

 俺は現在、サポートセンターで実際に平民相手にサポートを行う連中に、システムの概要を説明しているんだ。

 だが、この世界の連中にとって、商売ってのはあくまでも「自己責任」でやるって考えなんだな。

 なので、システムの必要性がイマイチぴんとこないらしい。


 でもサポートってさ、システムの根幹を理解して無いと、上辺だけのかる~いサポートしかできないわけよ。突っ込んだ質問をされたら、きょどる姿が目に浮かぶわけ。

 ただでさえ、スタート直後は混乱必死だろうから、せめてサポートだけは万全の状態で臨みたいのよ。


「まあ、ワシにはよくわからんな」


 そう言って酒をぐびっと飲むバリー。


「そういえばバリーさんは、親衛隊所属でしたっけ?」

「おう、テレジア閣下直属の親衛隊に配置された」


 すげえなおっさん。

 てか、この人キレたらめちゃくちゃなんだけど、そこんとこは大丈夫なんだろうか?


「若い親衛隊員からは、鬼のバリーって呼ばれてるらしいわよ」


 俺の不安を読んだのか、ベアトリクスが答えてくれた。

 まあ、「鬼の」くらいで済んでるなら大丈夫なんだろう。

 採石場に居た頃は、ブチ切れて、ササやアルネがしょっちゅうボコボコにされてたからなあ。鬼じゃなくて魔人だったぜあれは。

 その度に俺が回復魔法かけてたのが懐かしい。あの二人元気かなあ。


「そういえば、テレジア大公閣下が、たまには報告に来いって言ってたわよ」

「ああ!そうですね、家を与えてくださった事のお礼もまだですし、近いうちにご挨拶と報告に行かなければいけませんね」

「私の方で面会申請しとくから、日時が決まったら教えてあげるわ」

「お願いします」


 引っ越しやら仕事やらですっかり忘れてた。

 テレジアにはちゃんとお礼しとかなきゃなあ。

 まさかこんな立派な家をもらえるとは思わなかったし、超有能メイドさんまで付いてきたしな。


 その後、お互いの仕事の事や、近況など、軽く雑談してから、食事会はお開きになった。


 外に見送りに出ると、数名の警護の兵士がベアトリクスの周囲を取り囲む。

 そういやこの人、名のある貴族のお嬢様だった。

 話してると毎回忘れそうになるけどw


 そして、ベアトリクスとバリーを乗せた馬車は、街の中心部へと消えて行った。


 家の中に戻り、紅茶でも飲もうかと用意をしていると、アンネローゼがやってきた。


「あ、旦那様、私がご用意しますので、休んでいて下さい」

「いやでも、今日は休日なのを無理言って食事用意してもらってるし、そこまで頼んだら悪いよ」


 今日は日曜なので、アンネローゼは休日だったんだが、俺一人じゃ食事会の準備は絶対無理なので、手伝ってもらったんだ。


「いえ、休日は、あくまでも旦那様のご厚意で頂いているだけでございます。どうぞご遠慮なくお申し付けください」


 そういうと、キッチンへと紅茶を淹れに行ってしまった。

 いやホント、めっちゃ良い子にあたったなあ。


 しばらくするとアンネローゼが紅茶と簡単な菓子を持って戻って来た。

 二人分のティーカップがある所を見ると、彼女も一緒に飲むみたいだ。


「あの旦那様」

「何ですか?」

「旦那様は一体どのような地位の方なのでしょうか?」


 アンネローゼは、紅茶をカップに注ぎながら、そんな事を俺に聞いてきた。


「えっと、僕の貴族としての地位って意味?」

「はい」

「前も言ったかもだけど、士爵だよ。この前までは平民だった」


 たしか、前も説明したと思うし、配属された時に聞いていたと思うんだけど、何故今更そんな事を聞くんだろう?

 そんな俺の疑問が顔に出ていたのか、彼女は慌てて俺に謝って来た。


「あ、申し訳ありません。」

「いや、別に良いんだけど、なんで?」


 俺が質問すると、彼女は前々から不思議に思っていたことを話してくれた。


「私をここに配属されたのは、テレジア閣下のご意向だとお聞きしたんです。なので最初、私は、配属されるのは男爵家か、子爵家へ配属になるものと思っていたのです」

「あー、なるほどね。でも配属された先は士爵で、しかも最近までは平民だったと」

「いえ、そんなつもりでは・・・。申し訳ありません」

「いやいや、怒ってるわけじゃないですよ」


 まあ確かに、その疑問は出るわな。大公閣下の命令で配属された先が、まさか士爵だとは思わんわな普通。


「それで、今日お見えになられたのは、ヴァンデルフェラー家の方と、親衛隊副隊長のバリー様です」


 俺が貴族としては最下位にあたり士爵であるにも関わらず、ヴァンデルフェラー家や親衛隊副隊長までがやってきて、しかもテレジア閣下とも親交があるように見える。

 確かにこれは不思議だわな。


 まあ実際は、大した事じゃないんだけどね。ただ単に、偶然が重なって縁が生まれた。 

 たまたまその相手が、名家の方だったり、親衛隊にひとだったり、王族の方だったりしただけだ。


 ホント、人との縁には恵まれて過ぎていると思うわ。

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