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独身リーマン異世界へ!  作者: 黒斬行弘
第五章 リバーランド本国
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カモン!マイハウス

テレジアから与えられた褒賞(ほうしょう)は、士爵(ししゃく)の地位と、メイド付きマイハウスでした。


 ついこの間まで3級奴隷だった俺が、いまや最下位とはいえ爵位持ちだぜヒャッハー!当然のことながら、マイハウスの維持費とメイドの生活の面倒は自分がしなきゃいけないっぽい。


 え?維持費とか俺の給料で払えるのか?って思ってたら、爵位持ちの当主には、通常の給料に加え、貴族手当てなるものが支給されるらしい。なので、実質、ハウスの維持費は手当てで相殺されるんじゃと思ってる。ホント貴族様は優遇されてるよな。


 んで、今日は住宅のリフォームも済むということで、いよいよお引越しなんだ。と言っても、荷物なんかほとんど無いので、着の身着のままって感じだ。


 間取り図を見ると、一階がキッチン及びメイド部屋、応接室と食堂。2階が階段を上って左右に寝室と書斎という構造だ。


 テレジアが言うには、手狭になったら家は自由に売り出して良いとの事。メイドも気に食わないなら奴隷市場へ売り飛ばしてOKだそうだ。簡単に人を売り飛ばすって言葉が出てくるのが、ファンタジー世界って怖いね。


 これまで住んでた寮から徒歩で20分ほどの場所にあるマイハウスに辿(たど)り着いた。あまり期待してなかったが、かなり広めの庭ときちんとした門まであって、今現在ちょっとびびってる所だ。


「おかえりなさいませ旦那様」


 俺を見るなりそういってお辞儀をする女の子がいた。恐らくこの子が、メイドなのだろう。てか、ご主人様ではないのか・・・・Orz


「あ、は、はい!ただいま戻りました!」


 戻るっつーか、来たばっかだろう俺・・・。緊張のあまり、どもっちまった。


 と言うかメイドさんて言うから、秋葉原辺りにいるような女の子を想像してたけど、考えてみたらあんなメイドさんが実在するわけが無く、普通にロングスカートの中世ファンタジーのメイドさんだった。


「これから旦那様のお世話をさせて頂きます、アンネローゼと申します。よろしくお願い致します」


 俺の専属メイドさんとなってくれたアンネローゼたんは、見た目はたぶん俺と同じくらいだと思う。なにせ見た目=年齢が通用しない世界なんで、詳細はわからん。ふんわり茶髪の優しい感じのお嬢さんてイメージだ。


「あ、よろしくね、アンネローゼさん」


「旦那様、呼び捨てで結構でございます」


「は、はあ」


 そんなやり取りをしながら、俺はアンネローゼに連れられて、家の中へと入って行った。


 家の中は、外見から見るよりも、遥かに広く感じられた。玄関から入ると目の前に階段があり、左右には扉が付いていた。見取り図通りなら、右が応接室で左がキッチンだろう。2階も階段が左右に分かれていて、そこから寝室と書斎につながってるようだ。


「ふーん、思ってたより結構広いね」


 俺は誰ともなしにつぶやいた。一人で住むには広すぎるくらいだろう。


「このアンネローゼが、屋敷での旦那様のお世話をさせていただく事になりますので、なんなりとお申し付けください」


「あ、うん、よろしくね」


「旦那様のお食事、屋敷の清掃、お風呂の準備、又、お望みならば、夜伽のお相手も可能でございます」


「あ、そうなんd・・・・・えええええええええええええええええええええ!」


 よ、夜伽?まじで?ついに俺の童貞が、今夜奪われてしまうの!?まじかあああああ!テンション上がってきたあああああ!


「いやいやいや、そうじゃなくて!」


「?」


「あの、メイドさんってさ、そんな事まで業務のうちに入ってるわけ?その、よ、夜伽とか・・・」


「はい。奴隷市場にてメイド用奴隷として販売される私たちは、夜伽を含めた様々なメイドとしての教育を受けております」


 奴隷・・・。え?この可愛い女の子のメイドさん奴隷なの?つーか、見た目通りなら俺とそう変わらん女の子が夜伽って、一体どんな奴隷教育をさせられてたんだよ。あんま考えたくねえな。


「えっと君は奴隷なの?」


「はい。ご存知ありませんか?この国で働くメイドのほとんどは奴隷でございます」


 まじかよ・・・。そういえば19世紀イギリスでは、メイドと貴族の恋は、身分の差から厳しかった的な事を聞いたことがあるような。なんか、社交界から冷たい目で見られるらしい。


「ただ、王族に使えるメイドに関しては、安全性などを考慮し、平民から招集するようです」


 そりゃそうだろうなあ。どこの馬の骨ともわからんような奴隷を王宮に入れるわけにはいかんか。


「じゃあアンネローゼ。とりあえず、君の給料の事や、仕事の事について話そうか」


「お給料ですか?」


「うん。何日締めで何日払いとかさ」


「あの旦那様、奴隷には給料などございませんが・・・」


 あ、ああ!そうだった、忘れてた。奴隷には給与とかなかったんだったわあ。俺も鉱山で働いてた時給料とか無かったじゃん。領主から支給される食糧と、山で狩った猪とかを食べてたんだよ。思い出した。


「ごめんごめん、そうだった忘れてたよ」


 アンネローゼが不思議ちゃんをみるような目で俺をみてるう。恥ずかしい!この世界の常識は俺の非常識なので、ホント嫌になるわ。


「それでは早速ですが、お荷物をお運びした後、お食事や必要経費等についてご指示を頂きたいと思います」


「あ、ああ。そうだね」


 そういうわけで俺は寝室に案内されていた。室内には、小さな机といす、収納の為のタンス、そしてベッドが設置されている。必要最低限のものは用意されているようだ。


 とりあえず俺は、寮から持って来た服をタンスに掛けていく。下着は収納棚に入れればいいか。


 今度は書斎を覗いてみる。かなり大きな本棚が用意されていて、幾つかの本がすでに棚の中に入っていた。ほとんどが歴史書みたいだ。


 と言うか、この世界ではライトノベルのような本はないんかね?あ、ファンタジー世界だし冒険譚のような本はあるかもなあ。今度探してみよう。


 それにしても、この世界に来てから初めてじゃないか?こんなにリラックス出来る空間を手に入れられたのって。


 ハイランド在住時は、右も左もわからず、祖費を暮らすだけでいっぱいいっぱいだったし、リバーウォールではティルデと一緒とは言え、監視付きで明日の事もわからない、採石場では、死ぬか生きるか、まさにライブオアダイって感じだった。


 日本に居た時は、何も考えずに言われたことだけをハイハイとこなしていく生活だったしな。その結果リストラされたわけだが・・・。


「旦那様」


「ひいいいいいいいいいいいい!」


 いきなり背後から声をかけられてちびりそうになった。振り返るとアンネローゼが、こちらもまた俺の反応に驚いているようだった。


「も、申し訳ありません!一応、お声がけはさせて頂いたのですが、反応が無かったものですから・・・」


 と、消え入りそうな声で謝りながら、深々と頭を下げている。


「あ、ごめんごめん、ちょっと考え事をしていました。えっと、何かありましたか?」


「あの、出来れば今後の生活費や諸経費などについてご指示を頂ければと思いまして・・・」


 ああ、そういやさっき、今後について指示をもらいたいとか言ってたなあ。


 というわけで、アンネローゼと1カ月単位での生活費について話し合った。話し合ったんだが、この人、研修で行った先が、中流貴族の家だったようで、提示された金額を見て、俺は腰が抜けそうになったよ。だって給与の2倍くらいの経費を提示されたんだよ?


 経費で一番金がかかってたのは、馬車の維持費。俺は馬車なんか持ってねーっつーの。それに食事。彼女が提示してきたのが、小麦を使ったパンや、高級な部位を使った羊、牛の肉料理に高級魚料理。それに加え、ティータイム用のお菓子やお茶代、休日には、演劇を観覧するなどの項目まであった。


 俺はどこの高級貴族ですか!?


 なので、パンは安価な全粒粉(ぜんりゅうふん)のパン、たんぱく質は安い羊肉と小魚で補い、メインは野菜料理にすると伝える。俺は紅茶なんか飲まないので、アンネローゼが飲むならお好きにどうぞ。もちろん休日の娯楽も金がかかるものは却下。贅沢は敵です。


「本当にこの内容でよろしいのですか?」


 アンネローゼが目を丸くしながら確認して来る。


「良いも何も、俺は貴族とは名ばかりの平民ですよ。爵位持ちとは言え士爵ですしね」


 なんか、不思議な生き物でもみるような目でアンネローゼが俺を見ているが、俺はこのファンタジー世界では新人も同然なので、お前らの世界の常識は通用しないからな!


「とりあえずこの内容でお願いします。今後生活するうえで支障が出たら、その都度対処していく方向で」


「かしこまりました」


 そういうわけでこの日は、ちょっとだけ良いお肉を使った料理を作ってもらった。もらったんだが、なぜか出てきた料理は一人前。


「えっと、アンネローゼはご飯どうするんですか?」


「私は旦那様がお食事をされた後、別室にて奴隷料理を頂く事になります」


「奴隷料理って何!?」


 そんなもん初めて聞いたよ俺!


 そういうわけでアンネローゼから聞いた奴隷レシピですが、俺が採石場で最初に提供されてた食材と同じでした。つーか、あれって奴隷料理って言うのか。採石場だけのひどい環境だと思ってたよ。


 奴隷が奴隷料理を食べなければならない法的な根拠はないようなんだけど、そこは貴族様社会。奴隷の人権んなんか無いに等しく、完全に消耗品扱い。死んだら買い換えれば位良いや的な発想だ。


 なので俺は、今度から俺と同じ物を食べるよう指示。あんな奴隷料理だけで生きていけるわけねーっつーの。やだよ、ある日帰ってきたら突然メイドさんが死んでいたとか。


 しかしよくよく考えてみると、同じ奴隷でも、俺はかなり恵まれてた気がするわ。バリーやササ達は、結構自由にさせてくれてたからなあ。まあ、ゾルタンへの反感とかが影響してたんだろうけど。


 まあ、アンネローゼの扱いに関しては、家政婦さんを雇った感覚で接していけば良いだろう。現代日本で生活してた俺が、いきなり誰かを奴隷扱いとか無理に決まってるしな。


そんな事を考えながら、俺は書斎の本棚を眺めていた。すっかすかの本棚に、これから俺の好きに本を買って並べられることを考えると、なんかわくわくしてくるね!


 しかし、一つ屋根の下に、同い年の女子が寝てるとか考えると全然眠れる気がしねえぞこれ!しかも夜伽OKなんですよ!?


 俺大丈夫かなあ、これからの生活・・・。

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