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独身リーマン異世界へ!  作者: 黒斬行弘
第五章 リバーランド本国
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二度目の正直?

 ベアトリクスから、俺がリバーウォールに提案した計画をダメ出しされて、思わず立ち上がってしまった。あの計画のどこに落ち度があると言うんだ。


 しかし勢いよく立ち上がったまでは良かったものの、元々強気で何かを言えるような性格ではなく、一瞬立ち上がってすぐに座ると言う、わけのわからない行動に出てしまった。(あん)(じょう)、ベアトリクスとバリーは「こいつ何やってんの?」って顔で俺を見ている。


「えっとですね、僕はそもそもリバーウォールの法案をよく知らないんですよね」


 そう、よく考えたら、リバーウォールの法案と俺の計画が全く一緒だとは限らない。あのアルフレートの事だから、俺の提案に、色々自分色を付け加えている可能性がある。それもあって、一瞬立ち上がったのを抑えて座りなおしたんだ。ホントだよ?


「あら?あなたが草案(そうあん)を制作したのではなかったかしら?」


「確かにそうですが、あの後あの法案がどうなったのか、僕が知る機会が無かったものですから」


「つまり、あなたの制作したものとリバーウォールで実施されたものが同じかどうかはわからない・・と?」


「そうですね」


 実際、リバーウォールを出てから2年間ずっと奴隷だったわけで。そんな俺があの法案がどうなったのかなんて知る由もないし、自分の事で必死だったこともあり、すっかり忘れていたのもあった。


「新しい魔法の著作権・・・だったかしら?それをマザープレートを使って管理する法案よね」


 ベアトリクスはしばらく考えるそぶりを見せてから、再び俺に話しかけて来た。


「はい、大体そんな感じです」


「で、それを領主館で登録と管理を行うって事でOK?]


「OKです」


「で、新しく作った魔法の登録申請を有料で行うのよね?」


「そうです」


「魔法の申請費用が3、000、000リバーでOK?」


「はいOKで・・・・はあ!?300万リバー!?ちょっと待ってください!なんですかそのでたらめな価格設定は!」


「あら?あなたが設定したんじゃないの?」


「違いますよ!」


 300万リバーってのは、リバーウォール市の一般市民の年収に相当する金額だ。なんで俺がそんな事知ってるかだって?そりゃ、以前この法案を制定しようとしたときに、一般市民の収入を調べて、申請登録の費用なんかを決めたからだ。


「一体どういう計算をしたら300万とかいう金額に辿(たど)り着いたんですか?」


「うーん、まあ大半は貴族向けで、残りは一部の大手の商人向けの制度って感じかしらね。ちなみにあなたはどのくらいの金額に設定してたの?」


「僕が設定したのは・・・」


 俺はベアトリクスに資料を見せながら説明していった。


 ○登録申請―5,000リバー

 ○本登録

 ・1年 10,000リバー

 ・3年 30,000リバー

 ・5年 45,000リバー

 ・10年 80,000リバー

 ・25年 150,000リバー


 以上が、俺とアリーナ、つまりリバーウォールの魔術師の女の子と二人で考えた価格設定だ。1年とか3年とかあるのは、領主館でその商品があなたのものである事を保障する期間の事だ。これが切れた場合、どこの店でも勝手に販売できる事になる。1年や3年登録なら、それほど裕福ではなくても、払えないような金額ではないと思う。


 もちろん領主館を通さずに個人で取引しても構わないが、第三者が勝手に領主館に登録してしまう可能性も否めないので、それはおすすめしない。


 また、登録期間は最長で25年だ。1年登録等をしている場合でも、最長で25年まで延長は出来る。つまり、1年・3年・3年という風に延長していくことも可能なんだ。みんながみんな25年分の手数料を払えるわけじゃないからな。


 さらに、期限が迫ってきたらお知らせを送る事になっている。延長登録期限を過ぎても、半年間は所定の手続きさえ済ませれば、再び登録は可能だ。ただし、期限が過ぎてから再登録するまでに売れた商品に関しては、利益は保障出来ない。


「なるほどね。これだったら、あまり余裕があるとは言えない市民でも、アイデア次第で、ちゃんと稼ぐことが出来るかもしれないわね」


「ありがとうございます」


「あとひとつ聞きたいことがあるのだけど良いかしら?」


「はい」


「これって、既存(きぞん)の魔法、つまり昔からあるファイアーとかヒールの魔法の事ね。これに関してはどう対処するのかしら?」


 実はこの疑問、俺もリバーウォールに居た時にアリーナから指摘されて気付いたんだ。確かに、ファイアーなんて、著作権なんか存在しないようなもんだしな。


「この案では、25年を過ぎた魔法に関しては、著作権フリーとなります。なので、ファイアーなどの魔法もそれに当たりますね」


「ああ、つまり登録期間外扱(あつか)いになるってこと?」


「その通りです」


 そんないつ作られたかわからない魔法まで、いちいちチェック出来るかっつーの。なので、登録期間外のものについてはフリー扱いで、誰でも自由に販売できるようにする。


「なるほど、じゃあ、あなたの提案通りに進めてみる方向でいきましょうか」


「は?」


「あら?何かご不満?」


「い、いえそうじゃないんですが、あまりにも唐突と言いますか、展開が早いな~と思いまして・・・」


 何かこう、順序を全部吹っ飛ばしたかのような、話の進め方だったぞ!


「ん~、一応ね、私たちもずっとリバーウォールが導入を決めた法案の研究は行ってたのよ」


 つまり、リバーウォールで導入された俺の案のパクり法案を研究した結果、色々と改善案が出て、それをずっと検討していたらしい。で、そこにオリジナルを考えた俺が来るって情報がテレジアから来たんで、じゃあ当人に話を聞いてみようじゃないかって事になったんだと。


 なので、今の俺の話を聞いた結果、自分たちの最終的な改善案と差異(さい)がほとんど無い事がわかったので、GOサインを出そうと思ったようだ。


「ただ、(いく)らで(おろ)して幾らで販売するという交渉は、こちらではやらないのよね」


「はい、それは商売の範疇(はんちゅう)に含まれますので。あくまでも「誰の作った魔法なのか」を保障するだけです」


 そこまで行政でやってしまったら、そりゃもう国営企業でも作って販売した方が早い。俺が考えてるのは、あくまでも民間が主体の商業体制だからな。何かを作って販売する奴らの手助けをすることが目的だ。その結果、新たな商売が誕生することだってありうる。


 例えば、登録申請に不慣れな人たちに代わって、登録申請代行を行う業者とかね。登録申請を代行する代わりに、手数料をもらうことでビジネスが成立する。まあ、詐欺(さぎ)とかのトラブルも起こりそうだが、それを見越した法も一緒に作った方が良いかもね。


 まあ、民間に新しい仕組みを作ってやれば、それに乗じた新しい何かが間違いなく生まれるはずだ。だって、儲けるためだったら一生懸命になるのが人間だからな。これを行政でやってたら何も生まれないと思う。


「OK!じゃあその線で話を詰めていきましょう。改めてよろくね、シン・コレナガ」


「はい、こちらこそよろしくお願いしますヴァンデルフェラーさん」


「ベアトリクスでいいわよ、面倒だし」


「わかりましたベアトリクス。よろしくお願いします」


 はあ、こっちの世界にきてから3年。ようやく腰を落ち着ける場所が出来たかな・・・。リバーウォールのティルデの事も気になるけど、まあ正直、俺がティルデの事を心配するのは100年早い気がしないでもない。


 今は自分に出来ることをとにかく一生懸命やるだけだ。今度ティルデに会えた時に、全く成長していない自分だったら恥ずかしいしな。

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