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独身リーマン異世界へ!  作者: 黒斬行弘
第四章 炭鉱都市ロックストーン
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衣食住の環境改善を求めたいと思います

 ロックストーン鉱山で、晴れて奴隷(どれい)長に昇進(鉱山内限定)した俺は、さっそく奴隷の振り分けを開始した。


 まず、日勤(にっきん)組と夜勤組に人数を振り分ける。ホントだったら、昼夜も交代する所なんだろうけど、どうせ昼も夜も関係なく今まで働いて来てるからそこは無視していいだろう。


 なので、昼の責任者と夜の責任者を選出して、それから奴隷たちの希望を一応聞いて、それを参考に組み分けをしていく。


 とりあえず俺は夜間の責任者となった。昼の責任者は1級奴隷のハンジだ。責任者って言っても、とりあえず何かあったらバリーやササに報告したり、奴隷間のもめ事を解決したりくらいのもんで、何か権限があったりするわけじゃない。


 まずはこんな感じで様子を見てみたいと思う。これで逆に生産効率落ちたりしたら、また17時間労働に逆戻りだ。それだけは阻止せねば!


 そして1カ月か過ぎた。


 結果から言えば大成功だ。労働時間が大幅に短縮したので、睡眠時間も十分とることが出来るようになり、疲労の回復も可能になって生産効率が大幅に上昇した。


 それに加え1時間に1回、10分の休憩を挟めるようにしてみたんだ。そしたら作業への集中度も増して、怪我や事故も大幅減となり、その結果、新たな奴隷の補充もせずに済み、人件費の大幅削減も実現した。


 そして、24時間フルに稼働しているため生産量も大幅にアップ。なんと、週に1日の休みが取れるほどになったんだ。


 こうなってくると、衣食住も充実させたくなるのが人の性質だろう。これまでの汚らしい小屋ではなく、山から切ってきた木材を使って新しく長屋を建設したんだ。そして、体を洗うための川までの坂道も整備した。


 するとさらに生産効率はアップ。一日12時間だった労働時間は、いまや10時間と、大幅に短縮されていた。


 もちろん全部バリーのおっさんの許可は取ってある。え?奴隷ならもっと働けって言われないのかって?そりゃあ、ゾルタン・ロンネフェルトなら言うかもしれないな。死ぬまで働けって。


 けどバリーのおっさんは、そもそもゾルタンの事が大嫌いだ。なので、あいつが課して来たノルマ以上の事をやる気は一切ないらしい。ただでさえ、人件費はかなり削減されていて、これでまた採掘量まで上がったら、ゾルタンの株を大幅に上げてしまうことになりかねない上に、ノルマの上限を上げてくる可能性もあるとの事だ。


 あと、勝手に建築物を建てても良いのかって思うかもわからんけど、ゾルタンがこの鉱山に来ることなんて、年に1度あるか無いかくらいらしい。なので、建物のことなんか覚えてねーだろとの事だ。


 なので、ノルマ以上の採掘量にならないよう、労働時間を減らしに減らして、現在のような時間になっているんだ。そして後は休みで調節する。


「コレナガシン!」


 俺が今後の労働計画を自室で考えていると、思わず飛び上がってしまいそうになるようなでっかい声が聞こえて来た。


 部屋を出ると、バリーが建物の外で腕を組んで待ち構えていた。慣れないうちは、怖い顔で腕を組んで立っているので「俺何かしたっけ?」と、戦々恐々となったものだが、このおっさんはいつでもこんな感じなので最近では慣れて来た。


「どうしたんですか?」


「うむ。実はな、ロックストーンからこんな物が送られてきてな」


 そう言って、バリーは箱の中から板のようなものを取り出して来た。


「これは・・・」


 なんかどっかで見たことがあるぞ?なんだったっけ?


「なんでも、このプレートにライトの魔法が入っていて、プレートを押すだけで明るくなるそうだ」


 ああ!これ、リバーウォールで、アリーナ・ローゼンベルグが俺に見せてくれた「スタンドプレート」だよ!バカ高くて実用的ではないとか言ってた。実用化の目途が立ったのか、それとも在庫処分か・・・。


「なんでも、ランプの代わりにこれを設置することで、経費削減しろとのお達しだ」


 なるほどねえ。いやちょっと待てよ!これ使うには問題点があるんだけど・・・。


「あの、このライトの魔法プレートを使うには、魔力を注入しないといけないんですけど・・・」


「ああ、そう書いてあるな。お前、後でやっとけよ?」


 嘘だろ・・・。だってこれ、200枚くらいあるんだぜ?全部やってたら俺の魔力が枯渇(こかつ)しちゃうよ!


「あの、少しづつで構いませんよね・・・?」


「ん?今日中には無理か?」


「無理ですよ!死んじゃいますよ俺!」


「む?お前に死なれると困るな。わかった、出来る範囲でやれ」


 助かったあ。今日中にやれとか言われたら、脱走も辞さないつもりだったよ俺は。とりあえず20枚くらいに魔力を注入して、入り口付近から付け替えていこう。


 そして、昼間の責任者であるハンジを呼んで、プレートを設置しつつ、使い方をレクチャーしていく。


「で、使ってないプレートのスイッチは切って、魔力を無駄遣いしないよう注意してくれ」


「うん、わかった」


 俺はハンジにプレートの使い方と、使ってない部屋などではスイッチを切っておくことの大切さを教えていた。だって魔力補充するの俺だからさ。


「じゃあスイッチを押して、ライトをつけてみてくれ」


「わかった」


 そう言ってハンジはプレートのスイッチを押した。


 暗!何この暗さ!?いや、通路の照明ならこれでいいけど、作業場の証明には絶対に光度(こうど)が足りねーぞこれ。不安になった俺は、全部のプレートを片っ端からオープンして、設定を確認してみる。


設定光度5


 ばっかじゃねーの!?真っ暗な坑道で作業をするには最低でも50光度は必要だ。あれだよ、工事現場とかで使ってるライトあるだろ?すげえ明るい奴。あれが、ライトの魔法における光度50くらいなんだ。


 つまり、設定されている光度はそれの10分の一しかない。そんなんで作業なんかできるかよ!誰だよこんなくそ設定にした奴は!


 仕方ないので、毎日ちょっとづつ設定画面を開いて、光度の部分を変更及び魔力の補充を行っていった。光度5と50じゃ、消費魔力も全然違うからね。


 そんな作業を毎日ちまちまとやっていたら、底の方には普通の魔法プレートまで混じっていた。仕事雑すぎるだろうこれ。普通のプレートは、バリーに言って俺がありがたくもらっておきました。


 さて、労働時間や環境は大幅に改善、住居に関しても宿舎を立て直し、最低限人が住める物になった。坑道内も、まあ設定ミスがあったとは言え、ライトの魔法を使う事で、明るさもある程度こちらで調整がきくようになった。まあ、これは俺の手柄では決してないんだが。


 そして、一番の問題点だった食事。これだけは予算の問題で改善の仕様が無かった。だが忘れてもらっては困る。このコレナガシン、


『森のG級ハンター』(自称)


のライセンスを持つ男だ。見様見真似で作った武器を手に休日は山に入りびたり、獲物を狙う日々を続けていた結果、毎週の休日にはバリーやササ達と肉を食えるようになっていた。モンスター相手には全く動かなかった体も、動物相手には全く問題が無かった。


 あと、出来そうな奴隷仲間には狩りの仕方も教えた。なので、休日は、奴隷たちの間でも肉を食う事が可能になっている。生憎、干し肉などの作り方はわからないので、保存したりは出来んのだけど、まあ肉なんか週一くらいで丁度いいんだよ。ハイランドでも、貧乏生活が続いていた時は肉なんかほとんど食わなかったしな。


 ハイランドか。アルフォンスやアントニウスは元気だろうか?それにヴィルヘルミーナ先生いも。彼女もフォンシュタイン家の息のかかった人間だが、俺は特に彼女に何かされたわけでは無いので、別に嫌ってたりはしてないよ。・・・何もされなかったってのは違うな。四つん這いにならされて、上に座られたりしたな。


 あ、やべー、なんか最後に抱きしめられた時の、あの柔らかい胸の感触とか座られた時のお尻の感じとかを思い出してきちゃった。あの感触については俺の中に永久保存処置をしておこう。うん。


 そしてティルデ。結局話せないままリバーウォールを出てきてしまった。奴隷になった以上、もう会う事は無い気がする。せめて別れの挨拶でもできていればこんなに後悔することは無かったかもな。


 俺は仕事の後の水浴びを、宿舎の下の方に流れる川で行いながら、そんな事を考えていた。


 それから2年の歳月が流れ、俺は18歳となった。

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