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独身リーマン異世界へ!  作者: 黒斬行弘
第十章 バルサナ王国
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ダリオの本音

 ティルデがようやく落ち着いたので、俺はダリオに疑問に思っていたことを聞いてみることにした。


「あの、ダリオさんは何故、今の私の話を聞いて協力する気になっていただけたのでしょう?」


 俺が正直に理由を説明したのは、それ以上の上手い方法が思いつかなかったからだ。けどそれを聞いたダリオは俺に協力してやると言う。飛んで跳ねるほど嬉しいが、さっぱり意味が分からない。


「あの子は・・・女王はな、小さな頃から父親と祖父に連れられてこの街の屋敷によく来ていたんだ」


 あれ?このおっさん、個人的に女王陛下を知ってるって事か?いや、だからこそ陛下はダリオと話せって言ったんだろうけど、まさか子供の頃からの知り合いだとは思わねーよ。


「王族で、俺達とは身分も全く違うってのに、俺達をおじちゃんおじちゃんと慕ってくれてな」


 え?ええええっ!?俺はてっきりダリオ達は反女王なのかと勝手に思っていたけど、もしかして違ってたって事か?


「今の政府はそんなあの子の父親を殺し、あの子を今も窮地に追いやろうとしている。そしてそこに現れたお前達だ。苦しんでいるあの子に対し良からぬことを企んでるんじゃないかと疑っても仕方ないだろう。まあ、お前さんの友人の様子を見る限り、そんな疑念も吹っ飛んだがな」


 そっかなるほど。このおっさんは可愛い可愛いわが子のような女王陛下にまとわりつくゴミじゃないのかと、俺達を疑ってたんだ。そう考えると、馬鹿正直に理由を話したのは正解だったかもな。これを最初からわかっていれば、もっと楽に話し合いを進めることができたのに・・・。


 いや、俺の事だから、そこら辺をダリオに見透かされて、逆に怪しまれてたたき出されていた可能性も否めないな・・・。


「会合は明後日だ。忘れずに参加しろよ」


「会合はどこで行うのですか?」


「ここだ」


 ここか・・・。またあのお姉ちゃんに舌打ちされちゃうのかあ。


「了解です。えっと、私一人で来たほうが良いですか?」


「いや、二人くらいまでなら連れてきてもいいぞ。今日みたいにゾロゾロ連れてきてもどうしようもねーだろ?」


「それはそうですね」


 すみません、ゾロゾロ5人で来てしまいました。


「じゃあそういうこった」


「はい、本日はどうもありがとうございました」


「あーそれから」


 そう挨拶して部屋を出ようとしたら、ダリオに呼び止められてしまった。


「まあ、俺が言えた義理じゃないんだが・・・なんとかオルガの嬢ちゃんを助けてやってくれ」


 すげえ真剣な表情でそう言われてしまった。彼女が置かれている立場と言うのは、俺が想像している以上に危ういのかもしれないな・・・。


「はい、精一杯頑張らせてもらいます」


 そうダリオに約束し、俺達は宿屋「屈強な冒険者の集い亭」を後にしようとしたんだが・・・。


「おい、ちょっと待て」


「はい、なんでしょう?」


 帰ろうとしたらさらにダリオに呼び止められてしまった。やだぞ?やっぱやーめたとか言われるの。


「お前、今度のオーナー会議では、今日話した本当の理由については話すんじゃねーぞ」


「えっと、私たちが友人を探しに・・・という所でしょうか?」


「そうだ」


「わかりましたが・・・」


「お前たちはあくまでビジネスとしてやっている・・・それで通せ」


「はあ、わかりましたけど、何故ですか?


「女王との繋がりはマイナスにしかならねーからだ」


 ああ、なるほど。オーナーの中には女王に対し良くない感情を持ってるやつも・・・と言うか、そっちのほうが多いんだろうなあ。だとすると確かに女王との関係をオープンにするのは得策じゃないかもな。


「わかりました」


 そして今度こそ俺達は屈強な冒険者の集い亭を出たのだった。


 余談だが・・。


 帰りの馬車の中で、ユリアーナがずっと俺の事をからかっていたのは言うまでも無いだろう。


「彼女の為ならこの命を投げ打っても構わないと思っています(きりっ)だって!キャー、シンちゃんカッコいいー!」


 馬車の中でずっとこんな感じだ。実際に俺が言った本当の事だから怒るに怒れず、ティルデはもう耳まで真っ赤にして顔を手で押さえている。そしてエレオノーレさんとアリーナは、その様子を見て苦笑いだ。


 そういうわけで、オルガ陛下に報告するために屋敷についたころには、俺とティルデは疲れ果てていた。ぐったりとしながら馬車から降りてきた俺を見たルーナは「あれ?もしかして交渉失敗したの?」と開口一番に聞いてきたくらいだ。


「いえ、成功しましたよ」


「なんだびっくりしたー。もしダリオが断ったんなら怒りに行かなくちゃと思っちゃったじゃない~」


「え?ルーナさんはダリオさんとお知合いですか?」


「そうだよ。あの子が子供の頃から知ってるよ」


「・・・」


 そうだった。彼女はハーフエルフだった。見かけはどう見ても20代にしか見えないが、この屋敷に勤め始めて100年とか言ってたな・・・。異世界半端ねー。


「そういうわけで、最初の障害はどうにか超える事が出来たようです」


「おおやったじゃんシンシン~」


「はい、私達の思ったことを正直に伝えたらわかってもらえました」


「でしょー?あの子口は悪いけど根は良い子なのよ~」


 見た目20そこそこにしか見えない女の子が、齢50以上だろうと思われるダリオの事を「あの子」とか「良い子」とか話してるのを見ると違和感しか感じねー。


「はい、それで明後日のオーナー会議で説明させて頂けることになりました」


「やったねー」


「話し合いは上手く言ったようですね」


 俺とルーナが話していると、玄関から女王陛下がそう言いながらこちらへ向かってきた。


「陛下、ただいま戻りました。なんとかダリオさんの信頼を少しは得る事が出来たのではと思います」


「そうですか、本当にありがとうございますコレナガさん」


「と言うかですね・・・」


「なんでしょう?」


「陛下とダリオさんがお知り合いだという事を前もって教えてくだされば良かったのにと思いまして」


 少し恨みがこもった口調になってしまったかもしれないが、これは本当にそう思ったから仕方ない。前もってわかっていれば、あんなに緊張せずに済んだのに・・・。


「それは申し訳ないと思っております。ですがダリオは、相手がどれだけ真剣かをみる人間です。私と彼が知り合いだという情報は、かえってコレナガさんの邪魔になるのでは・・・と考えました」


 なるほど・・・。確かに事前にその情報を知っていたら、俺はそこまで一生懸命にならなかった可能性はあるな。そしてそれはダリオに見透かされていたかもしれない。


「女王様、それ正解ですよ。知ってたらシンちゃん絶対余裕ぶっこいて、大事なところで失敗してたはずだもん」


「ちょ!あんた一体何言ってんだ!」


「わー怖い~シンちゃんが怒った~」


 そう言いながらティルデの陰に隠れるユリアーナ。こいつ~、この中で誰に隠れれば良いのかを正確に見抜いてやがる・・・。


「シン、女の子にそんな怒鳴ったらダメよ」


「・・・はい」


 そして最後にはティルデに怒られてしまった。その後ろから「ベー」と舌を出すユリアーナ。くそーいつか見てろよー!


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