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独身リーマン異世界へ!  作者: 黒斬行弘
第十章 バルサナ王国
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女王陛下からの提案

「ところで、この施設を宿として再利用するとのことですが・・・」


「はい。先ほども言いましたが、宿泊施設としての機能は十二分にあります」


 まあ、王族の客を招いたりもてなしたりする目的もあった建物だから、それは当たり前だろうな。


「これだけの施設を貸すとなれば、料金のほうもかなり掛かりますでしょうし、この屋敷にそれだけのお金をかけられる人がいるのでしょうか?」


 俺は陛下のこの質問にちょっとびっくりしていた。王族の金銭感覚からすれば、そんな所に疑問を抱くとは思っていなかったんだ。疑っていたわけではないけど、やはり、給料制の雇われの王だというのは事実なんだろう。金銭感覚が俺たちに近いように思う。


「この屋敷を丸ごと貸すという事になりますと、かなり限られた人達に候補が絞られてしまいます。それだと借り手が見つかるまで膨大な時間が必要になるかもしれないし、最悪借り手が見つからないと言う事態もあり得ると思います」


「では、どうされるのですか?」


 陛下は俺の矛盾だらけの提案にも関わらず、ちゃんと耳を傾けてくれている。なので俺は、皆に説明したように部屋毎にオーナーを募る方法を陛下にお伝えした。部屋代は売り上げから手数料という形で徴収し、宿泊客が来ない限り家賃も発生しないという事だ。


「なるほど・・・」


 俺の説明を受けた女王陛下は、目を瞑り、何かを思案しているようだった。まあ、国家存亡の危機になんとか反撃の狼煙を上げる為の会議だ。じっくり考えてほしいとは思う。


「それで、その「借り手」の方についてはどなたかあてがあるのでしょうか?」


 これが、個人的に頼れる相手が全く居ないんだよなあ。つーかそもそも、昨日思いついて寝るまでに色々考えた案なので、そんなもんがあるわけがない。


「いえ、陛下のご意見もわからないままでしたので、そこまで決めるわけにもいかず現段階では決まっておりません。ただ・・・」


「ただ?」


「ただ、この件についてはバリー商会とサランドラ商会に依頼しようかと考えております」


 両商会とも色んな金持ちや職種の人と付き合いがあるだろうからな。この町に何の伝手もない俺からすれば、商会からのコネだけが頼りと言っても過言じゃない。


「そうですか・・・」


 俺の言葉を聞いた女王陛下は、しばらくの間目を閉じて考えているようだった。そしてどれくらい時間がたったかわからないくらいになった頃、ようやく目を開いた。


「わかりました。私には、これ以上の案を出せる自信がありません。コレナガさん、どうぞよろしくお願いします」


 良かったー!陛下がこの案を承認してくれた。まずは、第一関門クリアだな。


「ただ・・・」


「ただ?」


 俺がほっとしてるのもつかの間、陛下にそう話しかけられた。


 なんか、こういう話し方の時って、あんまり良い感じの内容じゃない時が多くないか?「ただし、条件があります」とか「ただ、私としては~」みたいな。


「ただ、一つだけお願いがあるのです」


 ほら!陛下からのお願いなんて、断るっていう選択肢が初めから除外されているようなもんだ。いや、オルガ女王の性格からして無理難題を俺に課すとは思えんな。いやでも、現在進行形で無理難題を言われているような・・・。


「この屋敷を貸す相手は、この町の人達にしてはもらえないでしょうか?」


「・・・へ?」


 俺は自分が思い浮かべていた陛下からのお願いとは、全く逆方向の話が来たことに大変間抜けで失礼な返事をしてしまった。しかし、それほどに陛下のお願いと言うのは予想外の事だったんだ。


「えーと、それは一体どういう・・・事でしょう?」


 俺はティルデやアリーナをチラ見しながら陛下に尋ねた。彼女達も思い当たるところはないらしい。俺の視線に首を横に振っている。


「それは何か事情がおありでしょうか?」


 俺は特に陛下の提案に反対なわけじゃない。正直ゼロから借り手を探すより、コネでも何でもいいから、貸す人のあてがあるならこっちからお願いしたいくらいだ。


 けどさ?この町の人達の陛下への態度、あれを見たうえで陛下の言葉を聞くと「何言ってんのこの人?」ってなっちゃうのは仕方ないと思うんだよ。要は自分に敵意むき出しの人達を雇ってくれと言っているんだ。


「失礼ですが、この町の住人たちは陛下に対し、とても好意を持っているとは思えません。そんな住人達に部屋を貸す、と言うのは、この計画に携わる者の一人として、かなり不安を覚えるのですが・・・」


 なので俺は正直に自分の気持ちを陛下にぶつけた。失礼かなとは思ったが、おそらくこの人はそんな事で怒ったりはしないだろう。それに皆も同じように思っていたらしく、失礼な質問をした俺ではなく、陛下の答えをじっと待っている。


「コレナガさんが不安に感じるのも無理はないと思います。ですが一度、この町の観光を取りまとめている人物に会って欲しいのです」


 観光を取りまとめている?観光協会の会長みたいな立ち位置の人だろうか?俺は再びティルデの方を確認してみたが、やはり首を横に振られてしまった。彼女もその会長の事は把握していないようだ。


「その人と話せば何かわかるのでしょうか?」


「はい。ここで私が説明するよりも余程」


 ふーむ。陛下がこうおっしゃっている以上、無理に詳細を聞くわけにも行かないか。正直頭の中は「?」マークでいっぱいなんだが。


「では陛下、その方と私たちを会わせていただけるようにお願い出来ますでしょうか?」


「わかりました。ダリオと皆さんがお会いできるよう手配しておきます。会談の日程は決まりましたらお知らせするという事で」


「了解しました」


 観光協会のトップはダリオというのか。まあとにかく、会って話すしかないだろうな。それにしても、自分に敵意を持つ住民を借り手として推してくるとは、いったいどういうつもりなんだろうか陛下は・・・。


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