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独身リーマン異世界へ!  作者: 黒斬行弘
第九章 第三都市アルターラ
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安定してるけど不安定?

「皆さんどうぞよろしくお願いします!」


 そう言ってお辞儀をしているのは、サランドラ商会アルターラ支部の受付嬢ブリジッタだ。フィオリーナが言ってた、俺達と一緒に生かせる相手とはブリジッタの事だったらしい。


 フィオリーナによれば、なんと彼女からの自己推薦でこの話が決まったんだと。なんでもこの前企画した合コンがグダグダだった事から、臨機応変に対応する能力をもっと磨きたいと考えたらしい。


 まあ、その決断に至った動機はともかく、何せ面倒臭がって誰も行こうとしなかったのもあり、すんなりブリジッタに決まったようだ。


「と言うかブリジッタさん、本当にいいの?」


「もちろんです!見てくださいこれ!」


 そう言って彼女は自分のプレートを俺達に見せて来た。そこには「冒険者レベル1」と書かれている。


「これでクエストもばっちりです」


 なるほど、冒険者ギルドへ行って冒険者登録も済ませて来たらしい。なんというか、やる気満々だなー。


「私は生まれも育ちもアルターラなので、初めて国外での生活になるかもしれないという事で、ちょっとワクワクしているんです!」


「あーそれわかるわー。俺も初めていせ・・・いや何でもいない」


 あぶねー!初めて異世界に来た時とか言いそうになった!


「いせ・・・なんですか?」


「いやいや、初めて、その、いせいせ、伊勢海老を食べた時の事を思い出しました!」


「はあ?」


 ダメだこの話は危ない!別の話題別の話題。


「シンちゃん時々おかしな話をしだす癖があるから気にしないで良いよー」


「はあ、わかりました」


 ユリアーナが割って入ってくれたおかげで助かった。しかし、なんかブリジッタからの俺への評価が下がった気がしないでも無い気がするのだが・・・。


 まあそれはいいや。


 ともかく、俺達に加えブリジッタも加えたメンバーでバルサナ王国へ出発だ。


 アルターラに来てからそれほど日が経ってない事も幸いして、それほど私物も増えてないので、荷物の整理もそれほど時間は掛からなかった。


 とりあえずレオナルドにだけは街を去る事を話しておいた。あんな強敵に一緒に立ち向かった戦友って意識も芽生えたしな。すげえ良い奴だったし。この街に立ち寄る機会があったら、また一緒に飯でも食いたいな。


 そういやラウロにも挨拶しとこうと思ったんだけど、連絡が取れないんだよなー。クエストは受けているっぽいから、この街にいる事は確かなんだが・・・。まあ、またこの街に来た時にでも声を掛けてみるか


 そういえばマリアンナは、ブリジッタが抜けた後の受付業務を引き継いだらしい。あの女に任せて大丈夫なのか物凄く不安なんだが・・・。もしや、フィリッポからフィオリーナへ向けての刺客か!?


「で、どういうルートでバルサナに向かうの?」


「そうですね・・・」


  そんなあほな事を考えていたら、フィオリーナの問いかけにエレオノーレさんが答えていた。


「まずは、こことグリーンヒルの間にある宿場街へ行き、そこから北上してバルサナに入ろうかと思っています」


 つまり、俺達がアルターラに来るときに寄った宿場町へ一旦向かうという事だ。そこで馬車を乗り換えてバルサナへ向かう。


「そうね・・・。恐らく首都を経由するよりも安全かも」


「首都経由だと危険なんですか?」


「首都とバルサナを結ぶ街道には野盗が多いって聞くわね」


 まじかよこええな。


「あなた達が通るルートは冒険者達も多いから、野盗はほとんどいないわよ」


「なぜです?冒険者狙いの野盗とかいそうですけど?」


 冒険者の財宝狙いの野盗とか、ファンタジー小説なんかじゃたまに見る設定な気がするけど。


「野盗に身を落とす人は、生活苦が原因の人が多いのよ。だから、一攫千金ではなく、確実にお金を狙える行動しかしないわ。それに冒険者相手だと、逆にやられる可能性も高いしね」


「シンちゃんだって、狙うなら強い相手より弱い相手が良いでしょ?」


「それは確かに」


「大丈夫!例え盗賊がシンちゃんを狙ってきたとしても、私が守ってあげるから!」


「何の話ですか何の・・・」


 と言うか、遠回しに俺が弱いって言ってるじゃん!いやまあ弱いんだけどさ。でもまあそういう事なら宿場街ルートでバルサナに向かった方が良さそうだな。そもそもそんなに野盗に狙われる事態なんて発生してたまるか。


「それにしても残念ね。こんなに早くどっか行っちゃうとは思いもしなかったわ」


「ホントすみません」


「こんなに可愛い女の子達がいっぱいなのに・・・」


 ・・・おい。あんたが言うと、なんか冗談に聞こえないんだよ。


「まあ、それはともかく・・・」


 俺のジト目に気付いたのか、フィオリーナは「こほん」と咳払いをしてから俺に話してくる。


「この前も言ったけど、バルサナは治安も良いし安定もしている。けど、不安定でもあるの」


「安定してるけど不安定・・・ですか?」


「そう。表向きは平和で安定した住みやすい場所に思えるだろうけど、実はこの前、女王の暗殺未遂事件もあったばかりよ」


「えぇ・・・それ全然安全じゃないのでは・・・?」


「でも犯罪率はフォレスタとは比較にならないくらい低いわ」


「つまり、政治的に不安定だけど、治安としては安定してるって事ですか?」


「政治も安定してるわよ」


「なんですかそれ!意味が分かりません!」


 じゃあ何が不安定なんだよ!ちゃんとわかるように説明してくれよ!すげえ気になるじゃん!


「んー、説明は難しいわねー。まあ、行ってみればわかる・・・かもしれないわ」


「えー・・・」


 わかるかも・・・って、わからないかもしれないって事?出発前にすげえもやもやしちゃうじゃん。


「シンちゃんそろそろ時間だよ」


「あ、もうそんな時間ですか」


 ユリアーナから言われて時間を確認すると、乗合馬車の出発時間が近づいていた。予約はすでに済ませてあるけど、遅刻したら洒落にならないな。


「では、フィオリーナさん、色々とお世話になりました」


「こちらこそ、情報提供感謝するわ」


 そして俺達はマンションの受付のおっちゃんにも挨拶をし、馬車の乗合場へと向かった。目指すはバルサナ王国だ。


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