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独身リーマン異世界へ!  作者: 黒斬行弘
第九章 第三都市アルターラ
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天と地ほどの差

 ジリアーニ牧場で俺達より前に「オーク討伐クエスト」を受けていた人物、それはティルデとアリーナなのでは?


 その考えを、家に帰ってからその場にいなかったユリアーナとも共有した。


「うん、その可能性は高いと思う。というか、そうとしか思えないよね」


 その結果、ユリアーナからも俺達と同じような意見を聞くことが出来た。


 そもそも、魔導士とローフィル族の二人組なんて稀有なケース、そうそうあるわけが無い。


 と言うのも、余程腕に自信が無い限り、基本的に冒険者のパーティーと言うのは3名以上が基本らしいんだ。剣士・剣士・魔導士とか、剣士・魔導士・弓使いみたいな感じでね。


 しかし今回クエストを受けていたのは二人組だった。ローフィル族のクラスはわからないが、もう一人は明らかに魔導士だったという。そんなレアケースが、しかもグリーンボアを倒せるほどの二人組がそう居るとは思えない。


 しかしあの二人なら可能だろう。俺はティルデの側に居たから知っているが、実力はかなりのものだった。あの魔法でモンスターから助けられた時の事は今でも覚えている。そしてアリーナもかなりの腕前だと聞いている。


 正直、こんなにも早く手がかりが見つかるとは思わなかった。もっと長くかかると思ったから住むところも用意してもらったわけだし。


 いやでもまあ、この情報がティルデとアリーナの物だと断定出来てるわけでもない。いかんな、俺もちょっと興奮しているからか、色々と混乱してるっぽい。


「でも、これからどうします?」


「うーん、ジリアーニさんもそれ以上の事はわからないと言っていたからなあ」


 エレオノーレさんとユリアーナは腕を組んで悩んでいる。


 現在、ローフィル族と魔導士の二人組って事以外の情報が無いに等しい状況だ。


 実は名前だけは夫妻から聞いていたんだけど、ティルデとアリーナでは無かった。でもこれはそれほどたいした問題じゃなかったんだ。


 と言うのが、彼女達はリバーランドから逃亡している身だ。恐らく本名は使っていないだろうと。これはユリアーナの意見だ。そしてエレオノーレさんも同意見だった。


 しかし、クエスト後に何処に行ったのか、何をしているのか等は全く分かっていない。


 つまり、やはりこれまでと同様に、地道な聞き込み調査をやって行かなければいけないという結論に達した。


 でもまあとりあえず今日はもうゆっくり休みたい。慣れない戦闘系クエストに参加した上、あんな強敵を前に相当緊張していたんだろう。体がくたくただよ・・・。


 あ、ちなみにだ。なんで俺が合コンに参加していた事がバレたかと言うと、マリアンナの奴が喋っていたらしい。


 あの女、俺が合コンでどんな風だったのかを事細かに説明してくれたらしい。くそー、一度でもあいつを天使とか思った俺を殴りたい!そもそもあいつがバレた原因じゃねーか!


 俺は布団の中でマリアンナに今度絶対文句を言ってやると固く誓いながら眠りについた。



 次の日、俺達は牧場に繋がる街道近辺の民家や店舗を中心に、聞き込みを開始していた。一応、そういう二人組を見た、という情報はちらほら上がってくるのだが、それ以上の情報は手に入らなかった。


 これに関してはもうちょっと情報が入手できると思っていただけに、ちょっとがっかりだ。


「でも今までと比べたら、天と地ほどの差があるよー。それなりの根拠の元での捜索と何もない手探りでは精神的負担も段違いだしね」


「それは、確かにそうですね」


 俺は夕食を食べながらそう言ってきたユリアーナに完全に同意した。


「今までは何もない大海を手探りで探っていたようなものでしたしね」


 エレオノーレさんもそれに続く。確かに、アルターラに彼女達がいるかどうかもわからない状況と、居た可能性が高いとわかった今の状況では雲泥の差だ。ゴールとはまでは言わないが、中継地点らしき物が見えただけでも心境は全く違うってのは、今現在痛感している。


「まあ、これもシンちゃんが合コンに参加したおかげだよね」


「そうそう、僕が合コンに参加した・・・」


 そこまで言いかけて、俺は額にうっすらと汗が浮かび上がるのを感じた。おい!こんな逃げ場のない夕食の場でその話はずるいだろ!


「いえいえ、合コンと言ってもお仕事でしたからね。打ち合わせもかなり綿密にクライアントと行ってたんですよ」


「えー、でもトイレで女の子達と楽しそうに話してたって、マリアンナが言ってたよ?」


 あのおんなあああああああああああああああああ!


 たぶんそれは、俺がカーラやルーナ達から脅されていた時の事だろ?しかも俺なんか「とりあえずキープ」とか面と向かって言われたんだぞ!完全にATM扱いじゃねーか!


 あれを楽しそうにしゃべってたとか、あいつの目は節穴か!


 しかし、それをユリアーナに正直に言うのは少しばかりためらわれた。だって、なんか俺が惨めすぎるだろ・・・。なので俺は、


「いやいや、そんな事ないですよー」


 等と、いかにも謙遜してます~って言い方で答えるしか無かった。あれだ、今日はもう泣きながら寝るしかねえ。


 コンコン


 俺達がそんなやり取りをしている時だった。玄関をノックする音が聞こえた。


「こんな時間に誰だろ?」


 ユリアーナがそう言うと同時くらいに、エレオノーレさんが玄関へと向かった。


 普段はソフィが対応するんだが、夜間はエレオノーレさんかユリアーナが対応する事になっている。まあ警備員もいるし大丈夫とは思うけど念のためにな。


 え?俺?


 最初は俺が男だから対応しますよって言ったんだが、「シンちゃんより私達の方が安全でしょ」とビシッと言われてしまったのだ。


 ユリアーナの言葉に俺は「ソウデスネ」としか言い返せなかったよ・・・。


「あら、いったいどうされたんですか?」


 俺がそんな事を考えていると、しばらくしてから玄関からエレオノーレさんの声が聞こえて来た。


 最初俺はてっきりフィオリーナさん辺りが来たんだろうと思ってたんだ。あの人ちょくちょく家にやってきてはソフィを可愛がり、俺達と談笑して帰って行くというのを繰り返してたからな。


 だが、寮の警備をしているというおじさんの言葉は意外な物だった。


「あの、レオナルドさんという方がお見えになっていますが?」


「・・・え?」


 俺は一瞬「?」でいっぱいになってしまった。


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