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独身リーマン異世界へ!  作者: 黒斬行弘
第九章 第三都市アルターラ
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合コンという名のお仕事

「それじゃあ、俺達の出会いにー・・・」


「「「かんぱーい!」」」


 アルターラの街の一角にある繁華街、その中心部にある居酒屋で、俺はリア充よろしく合コンに参加していた。しかしこれは決して遊びでは無い。クエストの一環だ。


 話は数日前、ユリアーナのインタビューが行われた次の日まで遡る。



「いやあ、しかしさすがは大スターユリアーナさん、インタビューに答える姿も神々しいものがありましたな」


「ちょっと、何言いだすのよ!」


 ソフィーの作った朝食を食べながら、俺は昨日のインタビューの事でユリアーナをからかっていた。


 だってさ、ユリアーナをいじれる機会なんてそう滅多にないぜ?大体いつも俺がからかわれて歯ぎしりしているんだから、ちょっとくらいからかっても罰は当たらんだろう。


「はわわわ、ユリアーナさん凄いです!私も見てみたかったなー」


 俺がユリアーナをからかっているとも知らず、ソフィーは素直に尊敬のまなざしをユリアーナに向けている。


「そうでしょうそうでしょう」


「ちょっと!いい加減にしてよね!」


「何故ですか?僕は本当の事しか言ってませんよ?凄いじゃないですか!社内報とは言え、インタビューされる事なんて、僕らのような一般人ではありえないですよ。ソフィーもそう思いませんか?」


「え?え、あ、はい」


 さっきまでキラキラした目でユリアーナを見ていたソフィーも、ユリアーナが明らかに機嫌を悪くしているのを感じ取ったようだ。曖昧な返事になっている。


 確かに、そろそろからかうのはやめた方が良いかもしれないな。これ以上からかうと、大抵俺が割を食ってしまう展開になるのは目に見えている。なので、別の話題に移ろうとしたとき・・・。


「今日シンちゃんとエレオノーレはクエストを受けるのよね?」


 ユリアーナの方から話題を変えて来た。


「え?あ、はい。僕とエレオノーレさんはレベルが1なので、ユリアーナさんが一緒に受けてくれる事で、戦闘系クエストが受けられるって事でしたよね」


 低レベル冒険者は、低レベル冒険者だけでは戦闘系のクエストを受けることが出来ない。パーティーに一人でもそれなりの経験を積んだ冒険者がいる事が必須条件なんだ。


 なので今回、ユリアーナがパーティーに入る事で、俺とエレオノーレさんも戦闘系クエストを受けることが出来る。


「私、シンちゃんとは行かないから。エレオノーレと二人で行くから」


「・・・は?」


 今なんて言ったの?


「えっと、どういう事です?」


 え?えー!だってユリアーナが行かなかったら、俺達戦闘クエスト受けられないじゃん!


「は?言わなきゃわかんないわけ?」


 あれ?なんか想像以上に怒ってらっしゃる・・・?


「私、さっきからずーっとシンちゃんにやめてって言ってたよね?」


「はい、ですが・・・」


「私ずっと嫌がってたよね?」


「えっと・・・」


「私の嫌がる事をずっとしておいて、なんで一緒にクエストに行ってもらえると思うわけ?」


 ぐ、ぐうの音も出ねえ・・・。


「他に言う事は?」


「ありません・・・すみませんでした!」


 こうして俺は、一人でクエストを受けることとなった。もちろんこれまでのようなお使いクエストを探すしか無いだろう。


 ばかばかばかばか俺の馬鹿!大事なスポンサー様を怒らせるなんて!


 いや、それにしてもあいつも気が短すぎるだろ!?大体俺なんか毎回のようにからかわれているというのに、ちょっとは俺の広い心を見習えっての!


 そんな不毛な事を考えていると、いつの間にかギルドへと到着していた。良く見れば、周囲の人の視線が痛い。もしかして俺、文句を口に出して言ってたんだろうか?それずげえ変な奴じゃん・・・。


 まあいいや。とりあえず早速クエストを探すことにしよう。俺は気持ちを切り替えて、ギルドの内部を見渡してみた。


 アルターラの街の冒険者ギルドは、グリーンヒルのギルドよりもかなり大きいものだった。玄関をくぐると正面に受付があり、その両サイドに階段があった。


 なので俺はとりあえず受付に行ってみることにした。


「あの、すみません」


「はい、本日はどのようなご用件でしょうか?」


 受付には、3人の女の子が座っていた。一人じゃ捌ききれないんだろう。


 以前ティルデに聞いた話だが、受付の仕事って言うのは、何も冒険者に案内をする事だけじゃないらしい。


 冒険者が受けるためのクエストの受付、そのクエストの依頼主と依頼の危険度の調査依頼、報酬の妥当性を吟味するなど、色んな仕事があるらしい。それに加え、それを調査するスタッフもいるとの事だ。


 俺てっきり、依頼主から受け取ったクエストをそのまま掲示板に張り付けるだけかと思ってたよ。


 冒険者が依頼を受けるときは、掲示板に提示されているクエスト情報に書かれているコードをマザープレートに入力する。そしてそれを受付に提示。クエストの詳細な説明を受付から聞いた後、コードの有効化をしてもらう。


 これでクエスト開始となるんだ。


 ちなみにコードの有効化作業をせずにクエストを達成しても報酬はもらえない。コードの有効化をしないと、依頼の内容は教えてもらえても、依頼場所や依頼主の情報は教えてもらえない。これは不正防止の為なんだってさ。


 ギルドに提示されているクエストの報酬額と言うのは、じつはギルドの取り分が引かれた額となっている。取り分は3割らしいので、提示された報酬額が700Gだった場合、ギルドは300Gの報酬を受け取っている事になる。つまり依頼主が払う費用は1000Gだというわけだ。


 ところが以前、クエスト情報だけをギルドから提供してもらい依頼は受けず、直接依頼主の所へ行く行為が横行したらしい。理由は簡単、依頼主と冒険者、共にメリットがあるからだ。


 依頼主は冒険者への報酬とは別にギルドへ手数料を払わなければいけないが、直接冒険者へ支払えば、ギルドへの手数料よりも少ない額を冒険者へ上乗せするだけで済むからだ。そして冒険者は、ギルドを通すより報酬額を多く払ってもらえる。


 しかしギルドは慈善事業では無い。当然リスクを払って運営されているし費用も掛かっているし、クエスト内容を精査する等の手間もかかっている。なのに、そんな不正行為をされたのではギルドの運営が危機にさらされてしまう。


 そこでコードを有効化しないとクエストの詳細が明かされないというシステムに変更したんだ。


 まあ、一部の冒険者たちが自分で自分の首をしめたようなもんだよな。こんな事をするからルールが厳格化していくんだよ。


 そして俺もユリアーナを怒らせてしまったが故に、今現在一人でも出来るクエスト探しをしている所だ・・・。


「非戦闘系クエストは、左手階段を上った先でございます」


「ありがとうございます」


 俺は受付嬢に案内された通り、左手の階段を上って行った。


 まあ、レベル1の俺に出来るクエストと言えば、探し物とかの類だろうなあ。シロちゃん捜索クエストが懐かしい。二度とあんなクエストはしたくないけどな。


「ん?」


 俺が階段を上がって、しばらくクエスト探しを行っていた時だった。一枚のクエスト用紙に目を奪われてしまった。


「なんだこりゃ?」


 俺が見つけたクエストの詳細に「合コン参加者募集!詳しくは受付まで!」と書かれていたからだ。


 合コン参加?これクエストなのか?いやしかし、依頼主が依頼すればこれがクエストになるのか?うーむ。


 気になる!


 いや、この依頼を受ける気は全くないんだが、どういう内容なのかはすげえ気になる!だって合コンだよ?合コンクエストってなんだよ。女の子をゲットしたら依頼達成とかか?それとも参加する事に意義があるのか?


 俺がこれまでの人生で合コンなんか全く縁が無かった事もあって、俄然興味がわいてきたぜ。会社内で合コンするってときも、声も掛けられたことないからな・・・。


とりあえず俺は、この非常に気になるクエストのコードを入力し、受付へと急いだのだった。


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