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独身リーマン異世界へ!  作者: 黒斬行弘
第九章 第三都市アルターラ
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適格者の可能性

 朝の食事も終わったので、昨日言っていた通り、今日は4人でアルターラの街を散策する事にした。ただし午前中はエレオノーレさんに相談したい事もあって、二手に分かれて行動する事にした。


 さすがにソフィーの目の前で転生者がどうのこうのなんて話は出来ないからね。そう考えるとやはり事務所のような場所は必要だな。つーか、当の本人達より先に俺達に必要なものに気付くフィオリーナさんが凄いのか、俺達が間抜けなのか・・・。


 さて、エレオノーレさんに相談したい事とは他でもない、ソフィーの兄についてだ。昨日ユリアーナと話した可能性について、エレオノーレさんの意見をまだ聞いてなかったんだ。


 ソフィーの兄が適格者で、俺達と同じように転生させられたとして、その途中で何らかのアクシデントが発生した結果、彼女の兄の自我が希薄になってしまったと言うのは、結構説得力があるように見えたしね。


 なので、自我が希薄な面も含めてエレオノーレさんの意見を聞きたいと思い、たった今それを話していた所だ。


「なるほど、可能性としてはあると思います」


「やっぱり?」


「はい、ユリアーナの言う通り、コレナガさんが現代神と幻想神のせめぎあいの中で、15歳としてでしか転生できなかったのだとしたら・・・という前提での話ですが」


 だよなあ。俺だけ15歳という年齢で転生させられたのが、そもそもおかしいんだよ。大体転生なんて奇跡みたいなことが出来る奴が、年齢が40超えてただけで15歳でしかてんせいできませんでした~なんて事があるわけがない。


「ですが・・・」


「はい?」


「ティルデさんが居れば、その辺りも全てオープンに出来ているはずなんですけどね」


「ああ・・・」


 確かに、ティルデは適格者との関りが深い役職に付いていたはずだ。その事はティルデ本人の口からも確認している。


 当初ティルデは、適格者が何をする者で、どんな扱いを受けるのか知らされていなかったようだ。


 しかし、ハイランドの兵士であったマルセルから適格者が、正確には俺のような非適格者が最終的に殺されてしまうという事実を知り、俺を助けてくれた。


「コレナガさん、ティルデさんから、他の適格者について聞いた事は無かったんですか?」


「うーん、僕が聞いたのは、僕の他にユーディー・ビッケンバーグという女の子が適格者候補だった、という事くらいです」


「そうですか。そうなるとやはり自力でどうにかする以外なさそうですね」


 ティルデが適格者について言及したのは、俺達がハイランドからリベ―ウォール市に亡命しようとした時だ。あの時、領主代理の目の前で適格者についてティルデは説明していた。


 つまり、亡命する為には嘘は付けない状況だったという事だ。それを考えると、俺とユーディー以外の適格者をティルデは知らなかったことになる。



 ・・・あれ?なんかおかしくね?



 ソフィーによれば5年前の事件の時、彼女の兄は15歳だったという。そして彼を誘拐したのはハイランド軍だ。もしソフィーの兄が適格者候補として誘拐されたのなら、ティルデがそれを知らないはずがない。


「エレオノーレさん」


「はい」


「ソフィーの兄は、適格者じゃないかもしれません」


「え?」


「もし彼が適格者、又は候補だったなら、間違いなくティルデは知っていたはずです。彼女はハイランドで適格者をサポートする役職についていましたから」


「はい」


「それに彼は、妹のソフィーが間違えてしまうくらい僕にそっくりだという。しかし僕は、そういった人物の存在をティルデから聞いた事が一度も有りません」


 ハイランドから脱出した後も俺はそんな話を一度も聞いていない。普通、俺にそっくりな奴がいたら話したくなるってもんだろ?それを阻むものも無いしな。しかしそれを匂わせるような発言は一切なかった。


 という事は、ティルデはソフィーの兄について何も知らない、つまり適格者では無い可能性が高い。


 もちろんティルデ以外の誰かが担当していた可能性も有るが、彼女以外の担当者の話しなんかされた事も無い。


「ではやはり、手掛かりは無しという状況になってしまいますね」


「まあ仕方ありません。どちらにしても聞き込みは必要ですしね」


 仕方ないとは言えハイランド軍が、なぜ彼を無理やり誘拐したのかは気になるな。適格者でも無い彼を、しかも両親を殺してまでだ。この件に関してはユリアーナ達も把握していないようだし、そうなると少し不安ではあるな・・・。


 まあ、あれこれ考えても解決するわけじゃないし、とりあえず今できることをやっておくか。


 そういうわけで俺とエレオノーレさんは午後まで二人で聞き込みと散策を行い、午後からはユリアーナ達とも合流し、夕方になる前に買い物を済ませてから自宅マンションへと戻った。


◇◆◇◆


「は~い、おかえりなさ~い」


 俺達が玄関前に着くと、そこにはフィオリーナさんが待っていた。


「あ、もしかして待たせてしまいましたか?」


「いえいえ、さっき私も着いた所よ」


「なら良かった。どうぞ上がってください。お茶でも出しますので」


 ちょうどソフィーが玄関まで出迎えてくれたので、俺はフィオリーナさんを自宅へ招待した。


「あー私、仕事抜け出してきちゃってるから、事務所の鍵だけ渡しとくわね」


「え?そうだったんですか?すみません、お忙しいのに」


「ふふっ、あなたのおかげで大忙しよ」


 ああ、そういえば取扱店がいっきに増えたとか言ってたな。


「凄いですね取扱店が5倍に拡大でしたっけ?僕たちもそれなりには売ったと思うんですが、かなり運の要素も強かったんですよ」


 そう、あれはホント運が良かった。シロちゃんの飼い主であるエミリアちゃんのお母さん「クリスティーナ」さんが現れなかったら、ノルマの達成は不可能だっただろう。


「どうせフィリッポの事だから、本社の意向にがんじがらめになった販売方法しかできなかったんでしょ?あいつ頭が固いのよねえ」


 確かにフィリッポさんは苦戦していた。本社から難題を押し付けられてな。


「でも、それはフィオリーナさんも同じなのでは?」


「私?私、本社からの無茶苦茶な条件なんか守った事ないわよ?」


「へ?」


「大体さ、本社だって売り上げという実績を上げてる人間を無視なんかできないの。それでご飯食べてるんだからね。大体あいつらの言ってくる事なんて合理性に欠けるもの」


 おお、これを社員寮で言ってしまうフィオリーナさんカッコいい・・・。


「あんな変な条件を几帳面に順守して、それで売上上がらなかったら全部私達のせいよ?だったらそんなの無視して売り上げ伸ばす方を取るわよ」


 そして最後に「あんなのくそ真面目に守っても良い事なんかないわ。だからフィリッポはダメなのよねえ」と言いながらため息をついていた。


 ふーむ、なんかフィオリーナさん、かなりフィリッポさんの事心配してるんだな。


「おっと話しすぎちゃった。じゃあこれ事務所の鍵ね。部屋は隣。じゃあまた」


 フィオリーナさんはそう言って颯爽と去って行っ・・・たと思ったら引き返してきた。


「そうそう、あしたはユリアーナさんよろしくお願いするわね」


 そうユリアーナに言ってから、今度こそこの場から去って行った。


「ユリアーナさん、明日何かあるんですか?」


「あー・・・すっかり忘れてたわ・・・」


 そう言いながら、ユリアーナは舌をペロッと出して見せた。

「えっと何を忘れてたのでしょうか?」


「ごめん、明日のクエストは私パスね!」


「は?」


 いや、クエストをパスするのは別に良いんだが、一体明日何があるんだ?すげえ気になるんだけど・・・。


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