表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
はるかかなたのエクソダス2 ~夜明けの翼  作者: 風庭悠
第7章:忘れ物は何ですか?-チームメイト奪還編
9/47

第54話:監獄島にて、という話

アメミット監獄島。

 これまで脱獄者を一度も出したことがない、絶望の監獄。


「当たり前だ。ナイフ一本持てない囚人にとっては絶望そうだろう。」

バラクは本当に大丈夫なのか、と心配するニックに説明してやる。

「だが、航空機を持ち、銃で武装した『軍隊』ならどうかな?相手は所詮、警官だ。」


[星歴996年 3月29日]


音も光もなく飛ぶネーヅクジョイヤはアメミット刑務所上空に滞空する。


「すげえな、尊。嫁さんの実家、すげえな。」

ダタンは生まれて初めての空の旅に子供のように興奮する。


「シモン、頼みましたよ。」

当初は自分も作戦に参加したいと駄々をこねていたシモンであったが、待機任務を任されている。

「シモン、あなたに勇気があることは誰よりも私が良く知っています。しかし、王たる者は、自分を制することを学ばねばなりません。それなくして、家臣たちを制することができるでしょうか?」

尊は地味だが重要な任務をシモンにゆだねた。


「正直、私一人で充分片付く仕事です。しかし、それでは意味がないのです。自由とは彼らが勝ち取ってこそ、その価値が輝くのですから。」

尊の言葉は自分に言い聞かせているようでもあった、


ネーヅクジョイヤから重力リフトで屋上へと音もなく侵入に成功する。尊は、壁面の端子から内部のコンピュータに侵入を図る。


「ベリアル、こちらはお前に任せる。」

「おお、任せておけ。いってらっしゃい。」

ベリアルは、ネットワークから本土への通信を遮断して、偽の情報を流すと同時に、刑務所のすべてのシステムを自分のコントロール下に置いた。それに1秒は必要なかった。

「I have a control !!」


これで、やりたい放題の準備が出来上がった。尊は網膜モニター(ラティーナ)で状況を確認しながら指示を与える。

今回は相手が刑務官、武装はしていても民間人であることを踏まえ、殺害は禁じた。これも、彼らが規律を守れるかの試験に含まれる。

 

 作戦はコナーズ隊が男子房を回ってカレブとラザロを解放し、ボウマン隊が女子房を回ってエリカを解放する、という手順であった。男子房の方が難しいため、エリカを救出次第、ボウマン隊が援護に回るという手筈になっている。


突然、照明が落ちる。すでに消灯時間を回っているため、気づくものは少ない。しかし、エリカは異変を感じた。


「ゼロスが来た。」


エリカは身を起こすと、身支度を整えて救助を待つ。ジョシュアが面会に来たとき、それとなく房の場所、窓から見える景色や、太陽が見える時間と日時を伝えてあるので、わりと特定ははやいだろう。突然の停電に不審に思った刑務官が、ドアの鍵を開けると、男たちが音もなく突入する。あっという間に刑務官たちを打ち倒すと、手際よく麻酔を打ち込み、手錠をかけていった。


そして房の扉が開く。


「動くな!」

武装した黒ずくめの男たちの侵入に女囚たちが固まる。エリカが立ち上がると、一人の男がライトを当てる。

「エリカ・バーグスタインだな?」

「ええ。」

「ついてこい。」

エリカを出すと、再び扉は施錠された。

 

 一方、カレブとラザロを救出したコナーズ隊はてまどっていた。 早々に駆け付けた警備隊と銃撃戦になっていたのだ。そこに駆け付けたのはジョシュアとエリカだった。

「待たせたな。」

ジョシュアが二人に差し入れたのは護衛体技ガード・アーツの制服と護衛傘テクニカル・アンブレラだった。二人は即座に着替えると、4人は久し振りに簡単な打ち合わせをする。


「コナーズさん、ちょっと俺たちにやらせてもらえませんか?」

「手加減」に四苦八苦している。ダタンにカレブが申し入れた。


「『殺さない程度』なら、俺たちの方が馴れてます。ちょっと民間人アマチュア同士にやらせてください。」


ダタンは少し考えてから

「よし、やってみな。援護バックアップは任せておけ。」

と快諾した。


カレブがサインをだす。

「よし,行け」

ダタンが援護射撃を始めるとカレブとエリカ、ジョシュアとラザロが二手に分かれ突進する。傘で弾をよけながら、エリカをジャンプさせる。


月明かりの中での銃撃戦。撃鉄によって起こされる火花が散る中、エリカは警備員の背後につくと、スタンガンをあてる。突進したカレブが木刀ごと次の警備隊員を壁にたたきつける。防弾ベストを着用しているため、クッションがあるにもかかわらず、その衝撃で失神した。


 ジョシュアは傘の柄で銃をたたき落とすと、拾おうとしたその隊員に発射型のスタンガンの電極を撃ち込む。ラザロは手錠で警備隊をてすりのパイプで縫い付けると警棒でしたたかに打つ。攻撃はすべて次のターゲットに対して背中をみせないように行われるので、隙のつきようがなかったのである。


 「鈍ってないじゃん。」

ジョシュアの軽口に

「当たり前だ。3年もかけて『磨い』たんだからな。」

「またお前と一緒に戦うためにな。待ってたぜジョシュア。」

5分もしないうちに制圧が完了した


ダタンが口笛と拍手で迎える。

「やるねえ、伝説の奴隷最強チームは伊達じゃないねえ。」

「コナーズさん。援護ありがとうございました。実は、こいつ(TU)で実弾受けたの初めてなんで、ちょっと心配でした。」

カレブも表情が緩んだ。


「まあ、蝙蝠(傘使いの蔑称)は夜の眷属だからな。」

ラザロが少しいいことをいったのだが、3年ぶりにスルーされてしまった。




明日はお休みです。「星暦元年の残照」第2話をお楽しみに。

次回は21日だよ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ